選ばれし聖女は神に苦情が言いたい

もぶぞう

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ゆうりょう聖女

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聖女アーニャは各地を浄化して回っている。
冒険者ギルドを通しての依頼と言う形にしているのは、慈善事業ではないからである。
神も信賞必罰を認めたからには対価の無い浄化は避けるべきと意見の一致を見た。

なのに無理強いをする者が後を絶たない。

「聖女アーニャ、何故我が国の依頼を受けないのだ。」

「いやいや、対価の無いものを冒険者ギルドでは依頼とは呼ばないでしょう。
ギルドだって受け付けてなかったはずですよ?
つまりはそんな依頼はどこにも存在していません。」

ついでに国からのこの使者の存在も消してしまいましょうか。
依頼と言い張る王族と共に。

大体隣の国へ来て偉そうにしてるんじゃありませんよ。
ここは冒険者ギルド、どこの国の干渉も受け付けない所です。
余りここで騒いでいるとそちらの国の冒険者ギルドも撤退する事態になりますよ?

「もう知らん。
貴様の様な者が聖女であるものか。
詐称の罪で神罰を受けるが良い。」

何言ってるんでしょう。
わたしが聖女だから依頼と言う押し付けをしようとしたのですよね?
しかもわたしの真偽は最初の神罰事件ではっきりと片が付いているでしょう。

「あ!冒険者ギルドさんあの国からの撤退を指示した方が良いですよ?
それからそこの神官、教会も撤退を勧めます。
すぐに伝えてくださいな。
民を連れて来ることを忘れずにね。」

神の勘気に触れたようです。

「聖女アーニャ、一体何が起こったのです?」

ギルドの受付嬢さんですね?
わたしも突発的な出来事で驚いているのですけど?

「ええと、そこでへたり込んでいる使者が神の勘気を被ったようです。
或いは国に居る者が何かしようとしたのかも。
とにかく、神罰執行です。
今回はわたしが何もしていないことは皆さんお分かりですよね?
魔力を使っていないのはそこの魔法使いさんが分かりますし、神力を使ってないのも神官さんなら分かるでしょう?
神が直接執行するなんて、何をやらかしたのやら。」

途端にギルド内が慌てふためいた。
隣国に神罰が降るなら、そうもなるか。
取り敢えず、わたしは関係無いので帰りますかね。
神直々の神罰ならわたしがどうこうできるものでもありませんし。

「す、少しお待ちを。
国にも報告を入れたいので詳しく教えて頂けませんか。」

「いや、神直々ですから、わたしだって事情が分かりませんって。
その使者のせいなら、わたしを偽物呼ばわりしたのを神が怒ったとか?
最初の神罰のときがわたしの聖女就任のときなのですから、疑うのは神を冒涜してるとか?
あと、国で王侯貴族が何かしてもわたしには分かりかねます。」

そうは言え、いきなりの神罰執行ですからかなりのことをやらかしてますよね?

「隣国の冒険者ギルドから情報が入りました。
どうやら国の瘴気は聖女様が浄化の対価欲しさに自作自演を狙ったものだと言い触らそうとしたようです。
聖女様が聖女様に就任する前からの瘴気なのに何を言ってるんだか。
ああ、失礼しました。
国民も同じように思ったようで王城の言い分には耳を貸していないそうです。
これが神罰の原因ですかね?」

「そうでしょうね。
只で使えないと見るや、嘘を垂れ流そうとするとは愚かな国ですね。
それが浄化の何の役に立つと思っているんだか。
既に本来の目的も忘れているのですね。

誰でも沢山の神罰の話も聞いているでしょうに。
あれ、ほとんど本当に起きたことですからね?
対価をケチって滅んだ国はこれでいくつ目だったかしら。」

本当に国を救うのに対価をケチるとか意味わかりません。
国の価値が無いと言ってるのと同じじゃないですか。
それとも聖女たる者、只で働けと?

そんな前時代的な考えが今の瘴気だらけの世界を作ったのですよ?
滅私奉公の聖女様方の寿命が短いこと、短いこと。
そりゃあ、転生してもう一度聖女をやれって言われても拒否しますわ。
そのせいでわたしの魂がこちらに運ばれて転生聖女なんてやっているのです。

あら、一番の被害者はわたしなのでは?

わたしも追加で神罰執行しても良いでしょうか。
ちょっと、わたしの力まで執行に使わないでくださいよ。
わたしのやる分を残してくれたって罰は当たらないですよ?
ああ、罰を当てるのも神自身でしたか。
その代行の権限はもらえないのですか?
わたしなら容赦なく神に罰を当てられますよ?

「既に王侯貴族は動けなくなっているようです。
そのまま国民を移動させるか、動けない王侯貴族を討つか選んでくださいね。
この隣国としては難民を受け入れるよりは現地で片付けてもらった方が良いですよね。
今なら神征として出兵しても怒られないんじゃないですか?
神罰を邪魔したとして巻き込まれる場合も有るかもしれませんが。」

「それでは兵は出せないじゃないですか。
難民保護のついでに、うっかり王侯貴族を討っちゃったと言うのは有りですか?」

「えーと、有り?有りなの?
受付嬢さんの案が採用されたようです。
凄いですね、神を動かしましたよ?」

これから受付嬢さんは大変ですよ?
神に願いを届けてもらおうとする者が殺到するでしょう。
わたしが横に居たからと言うのは無視されちゃいますからね?
冒険者ギルドとしても早く対策を考えた方が良いですよ?

神もうかつに意見を取り入れたりしたらダメでしょう。
せめて身を守る術をあげてください。
でも、王侯貴族を討つなら難民の保護は必要なくなりますよね?
そこまでは考えてなかった?

「ああ、受付嬢さんにも小規模ですが、神罰執行の権限が与えられました。
あなたの意志に反することを強要しようとするものには雷を落とせますよ。
これで教会や貴族たちから身を守ってくださいね。
あくまで防御用ですから我儘を叶えようとしても使えませんけどね。」

受付嬢さんが頭を抱えているけど、言っちゃったあなたもうかつだったのですよ?
わたしに言ったことは神も聞いているのですからね?

「では、後はよしなに。」

わたしはとっとと帰ります。
上手く神罰を使って幸せになってくださいね。

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