黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

注意:114. 十一日目(謹慎三日)、浮かんだメッセージと隆の秘密

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 後藤は幾分か緊張感が和らぐと待ち望んだ時刻になった。箱庭の内
側の壁の一箇所がキラキラと輝いているように見えたので室内の照明
を消してみると文字が浮かび上がっている事が分かった。しかも暗い
ところで緑色に光っている。おそらく蓄光ペンで書かれたに違いない。
(確か夜光ペンとも言ったか?)
 大胆な仕掛けだとは思ったが浮かんだ文字の確認を急いだ。
、お前はもう、!」
 思わず声に出してしまったが東病院で伸幸と名乗った覚えはない。
必至に意味を理解しようとするが”助けだして欲しい”や秘密の隠し部
屋へのヒントがあると思っていただけに拒絶する内容だけが反芻して
思考回路が混乱していた。
 そこに車椅子に乗った隆が現れて後藤の側まで近づいて停止すると
両手首に装着されている黒のリストバンドを外して見せた。
「こっこれは一体何の傷だ? まさか……手錠の痕かっ」
 職業柄、凶悪犯や犯罪者に手錠を掛けて同行する事があっただけに
蚯蚓腫みみずばれには見覚えがあった。
「隆君。ここで一体何があったんだ?」
 隆は首を左右に大きく振りながら内容は言えない事を必死に伝える。

 後藤は、それ以上聞き出す事が無理だと判断して、とんでもない事
件に関わっていたんだと気付かされたと同時にリストバンドの秘密が
分かった事とメッセージに伸幸と書かれていた事を受けて別の仮説を
検証する為に隆の前髪を後ろに倒して額を確認してみた。この傷痕に
は見覚えがあった。4針を縫ったと聞かされた私の恩人でもある。
「りゅう兄さん何だね?」
「……」
 言葉が出ない代わりに頷いて正体を明かしたりゅう。たかしだと思って
いた無関係の人物が実は昔、自分がお世話になっていた”りゅう兄さん
だったのだ。衝撃の事実を知った後藤は膝から崩れ落ちて隆を抱きし
めていた。
「何で、もっと早く言ってくれなかったんだい?」
「おっと感動の再会はそこまでだよ」
「東先生、やっぱり居たんですね?」
「僕のテリトリーなんだから主人がいないのはオカシイでしょ?」
 いつもの紳士的な雰囲気とは異なる異質なオーラに危機感を覚えて
後藤が片膝をついて床を見ながら立ち上がろうとする。相対する東は
デッキブラシを背中に隠し持ちながら素早く左背後に回った。デッキ
ブラシの柄を握り込みながら前蹴りで隆の乗った車椅子を遠ざけた後、
一切の躊躇無しに後頭部へとフルスイングする東。
「ビュンッーバスッバキッ」
 空を切る音が部屋中に響き渡った直後、肉体にぶつかる衝撃音と柄
の折れる音が同時に鳴り響いた。後藤は何が起こったかを理解する事
無く前のめりに倒れ込んで薄れいく意識の中で隆の足だけを観ていた。

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