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捜査開始

9. 五日目、万引き捜査

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 翌日の17日、午後二時。西新宿署の近所に在る本屋で私服にて黒沢と万引き
取り締まりの為の巡回が始まる。ここ最近、被害が増えて困っているとの連絡を
受けて捜査に乗り出したのだ。隆の事件で全面協力を受けているので断る訳には
いかない。後藤は外で待機を告げられた。

 十五分もすると周りを頻りに気にしている怪しい男が手荷物に、数冊の新書や
漫画本を入れているのが分かる。そのまま泳がして置くと会計を済ませずに店の
外へ出て行ってしまう。黒沢は、無線で後藤に挟み打ちで捕まえる事を指示して
尾行を開始する。体力に自信がある後藤は先回りをして進路を塞ぐ事に成功する
と警察手帳を見せて相手の出方を窺う。相手は反対側に逃げようとするが黒沢が
拳銃を向けながら威嚇していく。
「君が持っている手荷物の中身を見せてくれないかな?」
 男は、自分の身に何が起こっているのかを理解して反対側に逃げようとするが
黒沢が自動拳銃の安全レバーを外して引き金に手を掛けて叫ぶ。
「これ以上、逃げると拳銃で撃つ事になるぞ。俺は本気だ」
 黒沢の本気度が伝わると流石に勝ち目が無いと判断した男は両手を挙げて降参
の合図をする。
「後藤、手荷物を検査してクロと確認が取れたなら男に手錠を掛けて署まで連行
だ」
「分かりました。警部」
 後藤は中に入っている本がビニールで包まれている事を確認すると腰に提げて
いる手錠で男の右手首に掛けてから、自分の左手首に掛けて逃走不可能にする。
 そこにタイミング良く、西新宿署のパトカーが停まり、中から警察学校時代の
同期の小林巡査が降りてくる。
「捜査、ご苦労様です!」
 事前に呼んでいた事が黒沢の目配せで分かると後部座席に犯人を挟んで乗り込
む二人。結果、万引き常習犯の二十代後半の男を現行犯逮捕で捕獲する事に成功
するが何故か後藤一人の手柄となった。

 黒沢の話では隆の事件が未解決に終わってからは現場を退いていたので手錠を
所持していないのだと言う。自動拳銃を持っていた事の説明は趣味のモデルガン
らしく、弾は一発も入っていないとの事だったが趣味レベルとは思えない精巧な
造りだったので初めて見る人は本物と見分けが付かないだろう。凶悪な事件が多
い世の中で自分の身を守る術だと本人は語ったが正直、共感は持てなかった。

 万引き事件の書類の作成が午後十七時に済むと遅番と交代となって仕事から、
解放される。
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