黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

文字の大きさ
43 / 136
捜査開始

43. 十日目(謹慎二日)、 借金取りからの電話

しおりを挟む
「俺だっ」
 黒沢は相手より先に口を開いた。
「黒沢の旦那。25日の期限が近づいていますが支払いの方は大丈夫ですか?」
「心配するな」
「その台詞は正直、聞き飽きましたよ。流石に組長も痺れを切らしてます」
「迷惑をかけてるのは俺も分かってる。未払いの分も全額払うよ」
「成程、その口ぶりだと当てがありそうですね」
「あぁ、取り零しの無い儲け話だ」
「まぁ、あっしとすればどんな汚い金でも金は金ですから。用意して貰えれば
問題ないです。楽しみにしてますよ。では返済日に」
「分かった。返済日に」
 黒沢の頭の中では、恩田の薄汚い笑みが浮かび上がっていく。直接的な暴力
行使といった手段に出ないのも独自の拘りがあり、間接的に徐々に追い詰めて
いくやり方を好んでいた。中でも電話による話術は際立っており、黙っていた
かと思うと急に罵詈雑言を吐いたり、夜中の寝静まった時や帰宅時間を見計ら
っての無言電話での執拗な攻撃は精神的に応える。電話に出るか、精神疾患へ
と落ちるかの二者択一を迫られる位の高圧的な暴力だった。

 債務者側からは『プレスマン』と通り名が付く程、危険な存在だった。回収
率は、完全一○○パーセント。金を全額返すまでは絶対に逃がしはしない。奴
の口癖はこうだ。
「借りた金は耳を揃えて返す。小学生でも知ってる事ですよ。大人は、子供の
手本とならなければ行けない存在ですから逃げるなんてのは人間の風上にも置
けませんね」

 実際に黒沢も一度、追い込みを掛けられた事があり、延々と説教されたので
ある。この時の惨めな姿をビデオで録画されていたとしたら警察官としてだけ
でなく大人の人間としても生きていく意味を無くしてしまったであろう。しか
し恩田はそこまではしなかった。代わりに自分の組と関わってる賭博場や高級
クラブへの強制捜査(通称=ガサ入れ)が及ぶ際に警察側の情報を事前に流す
事で交渉(支払い延期)は成立した。その功績により、直属の兄貴分を追い越
して出世したのである。最初に顔を合わせた時が三年前で大人しくて目立たな
い存在であったが銀髪の悪魔が事務所に乗り込んで来た事件をキッカケに人が
変わったように目付きが鋭くなり、弱者には敵意を剥き出すようになっていっ
た。今ではナンバー3だ。三年前に銀髪の悪魔と何があったのかは詳しくは、
知らないが揉め事を頻繁に起こしていた構成員が一人抹消されていた事だけは
事実として掴んでいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怪異の忘れ物

木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。 さて、Webコンテンツより出版申請いただいた 「怪異の忘れ物」につきまして、 審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。 ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。 さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、 出版化は難しいという結論に至りました。 私どもはこのような結論となりましたが、 当然、出版社により見解は異なります。 是非、他の出版社などに挑戦され、 「怪異の忘れ物」の出版化を 実現されることをお祈りしております。 以上ご連絡申し上げます。 アルファポリス編集部 というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。 www.youtube.com/@sinzikimata 私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。 いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...