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九頭竜の懺悔(プロローグ)

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九頭竜くずりゅう懺悔ざんげ  
(私の名はジャジャです。)


ヤマタノオロチ・・・ふふふ、
アレはちがう。
ただ単に川の事だ。

知らなくても無理もない 
もう・・ずっと、ずっと、
昔のことだ・・・
あの頃、大雨が降るたびにヒトの
村は水害に苦しんでいたんだ。

村の生活も水浸し。
大事な米蔵こめぐらも 
必死にたがやした
田んぼも畑も・・・

水浸みずびたし・・・

これが意味するのはね・・・
おなかがすいて・
おなかがすいて・・ひもじくて・
ひもじくて・・
動けなくなって・・くやしくて
死んじゃうんだよ。
何が?悔しい?って・・・
フフフ、食べれなかった事が
悔しいのさ。

生き物は喰わねば死ぬ。

君は・・そんな想いをしたこと
が有るかい・・・ふふふ・・
無いだろう。
まぁ・・いいよ。
想像だけでもして見てくれたまえ

そりゃ・・村人からすると頭に
来るだろう・・
ホンモノのドラゴンなんかより・
忌々いまいましい・それが大雨さ。
地面に落ちた雨粒は

それだけで村の田んぼや畑をおそ
なのにやまない雨はやがて地面
の低い場所に集まり やがて 

8本の川になったのさ。

なにしろ・・源流はひとつなのに
 途中から大きく 
8つに別れた大河は大雨のたんび
に善良で真面目で努力家の 
農民や村人たちにキバを剥いた。

村人たちは いつしか
大雨には勝てない ふせぎようが
無いとあきらめ始めた・・・

そんな諦めの頃・・・ある?
高貴な生まれらしいと噂の
「スサノオ」と言う名のモノが
沢山たくさんの村にあらわれた。


その「スサノオ」なるモノが
言うには「大河の流れに沿って 
大きく土を盛り、そこに
美しく咲く桜の木を植えて 
常に祭りを行えば
(ヤマタノオロチ)はしずまる
だろう。」と言うのだ・・・

「そんなアホくさっ!」と
村人達は思ったが高貴な生まれ
らしい「スサノオ」の言う事に
逆らえず・・・

大河の流れに沿って 
大きく土を盛り 桜の木を植え 
花が咲くときも咲かないときも
 頻繁ひんぱんに祭りを行いました。

すると、どうしたことか?
大雨が降っても 川がキバを
く事も減り 

村人たちは飢えてひもじくて死ぬ
事も減った。

まぁ・君には簡単な事だろうけど
・・・そう、今で言う
「河川敷をつくり 水害を少なく
した」だけさ。

でも当時 誰も思いつかなかった
んだから「スサノオ」がした助言
の功績は大きいよね。

結局、

ごほうびに「超美人の嫁さん」と
「あっと驚くほどの領地」を得た
のだから「スサノオ」は
バンバンザイだと思う。

しかも 貰った土地には
「タマスザク」
という良質な(鉄の元)が捕れた
これが
かの有名な三種の神器の一つ、

「クサナギノツルギ」の元に
なった!ともっぱらな噂さ。

だが・・・この件と
「ヤマタノオロチ」は関係ない。

ワシの身体は九頭竜くずりゅうの細胞で
出来ている。
そう・・・歳をとらない・・
いや、おまえ達の言い方では 
劣化をしないのだ。

九頭竜くずりゅうと言うと

よく銅像かなんかで一つの胴体に
九つの首と三本の尻尾のドラゴン
があるが・・・
あれは当時の人間どもを
ビビりあがらせるために

変形したのを見た連中が九頭竜と
名付けたにすぎない。
本当の姿はおまえたちと見た目は
さして変わらん。

と言うか・・・遠い昔・・・
数万年まえ、まだ おまえ達が
猿だった時代に我々、
九頭竜はこの地に降り立った。

それは不幸な事故によるもの
だった 
しかし・・・九頭竜にとって
この地は不思議な星だった。

この星の空気や水があまりにも
身体に会うために死なない・・
・いや死ねないと言った方が
正しいかな。
怪我をしてもすぐに治るし

それは・・・・・・・

地獄だったよ・・・
それは・・・異次元の星に
事故で降り立ったクルーは私を
含めて5人。
何万年たっても話し相手は
その5人だけ。

最初の300年は親友になったり
ケンカしたり そんな時代も
あったが500年も過ぎると
仲間の顔を見てもいつもいっしょ

次に何を話し始めるか?もいつも
いっしょ。

もうアキアキだった・・・

最初はこの星の生き物に干渉する
気はなかった・・・本当に・・・
しかし、この死ぬことのできない
永遠の流刑地るけいちきびしすぎた。

ならいっそ!この星に
文明を育ませ
刺激的な世界にすることにした 
もう誰も反対する者もいなかった

まず、我々に(遺伝子的に近い)
二足歩行の
猿のオスとメスをつかまえて 
精子と卵子のdnaを操作して
我々・・九頭竜に近づける努力
をした。

少しづつ・・・少しづつ・・・
成功と失敗を何万回・・
いや何十万回くりかえしたか・
・・しかし だれもあせらない。

時間はたっぷりとあった。

だが思いもしない事がおきた。
ある日 突然 救助隊が異次元
から来たのだ。

みんなこれには面食らった。
もう遭難してからこちらの
時間で3万年は経っていた。

それどころか故郷の時間では
・・・3倍以上の10万年が
過ぎていた・・・
当然、今ごろ故郷の星に
戻っても家族どころか・・
世界地図自体・・・
変わってしまっている。

それに故郷に戻れば恐らく
すぐに死が待ってる。
すぐと言うのは

3万年生きてきた
我々からすると 故郷では
数十年で死ぬ。それは・・・
あっと言う間に思えたのだ。

私を含め5人は夜を通して悩んだ。

結局・・・3人が帰る事となった。
故郷の土地を踏みたい 
「そして死ぬ事に憧れてた」
と言った。

私とツクヨミを残し 
救助隊は去った。

その際、この地の記録は
救助隊から完全削除してもらった
我々がしてた事・
これから成長する人類の脅威に
なっても悪いしナ。


ツクヨミは計算の天才だった。

ツクヨミいわく
「あと・・・1000年。 
あと1000年ほどで石器時代の
到来よ!」と言ってた。

俺たち二人はその日を楽しみに
過ごした。少しでも早く文明が
始まるように優秀な原人たちには
身振り手振りで教えて行った。

その甲斐もあって200年ほど
早く原人は自ら石器や磨石器を
作り・狩りをし 家族を守る
集落を作り 稲作を思いつき
面白いスピードで九頭竜と
似た進化を始めた。

それからの歴史は君が学校で
習ったモノがほぼあっていると
言っていいだろう。

だが!
思いもしない事態になった。
原人から人間になってわず
3000年程で大気を汚し
始めたのだ。

フロンガスでオゾンホールを
開けたのだ。俺もツクヨミも
一気にヤケドをした。
そして俺たちは暗闇を探して
生きていくことになってしまった

まったく・・・お笑い種おわらいぐさだ。
退屈しのぎに作ってたのが本気になって
救助も断ってヒトの進化を 楽しみに
見ていたら 創造主の俺たちが
大やけどだ。

救助隊との連絡はもはや出来ない。
フフフ・・・
バカ丸出しだ!!
この空間の座標自体・・消してもらったのは
オレ自身が願い出たことだ!

そうそう・・・俺達はみずからに
変身能力をつける事に成功した。

だが一つだけ希望もあった。

それなりの時間を要したが・・・

新たな身体の創造に成功したのだ
・・・この星にいる以上・・・
今までの身体では陽の光を浴びる
事は難しい。
そこで九頭竜とこの星の生き物の
スーパーハイブリッドに成功した。
この星の生き物の要素を
取り入れる事で急激な紫外線の
増大や大気の変化に強い身体を
造った

まずは身体中ヤケドだらけの
ツクヨミ専用ボディーを創った。
この身体にツクヨミの頭脳を移植
すれば永遠に生きていける!

だが・・・満身創痍まんしんそうい
ツクヨミはそれを断り・・死んだ。

なぜなんだ!!ワシは一人に
なってしまった!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・
永遠に一人なのか?マジで・・・
大丈夫なのか???ワシ。

まぁ・・・ツクヨミが最後の時を
日の光の下で迎えたいと言うので
俺は元々、持つドラゴンの姿
になってつきあった。

じょじょにツクヨミはげて
黒い炭になり・・・風がどこかに
運んでいった。

それからは俺自身はずっと一人だ。
おまえ達 人間を観察しつつ、
考えてきた・・・・

おまえ達は
失敗だったんじゃないか?と、

おいおい・・誤解するなよ!
ジェノサイド(大量殺戮)なんて
物騒な事は考えていないさ。

おまえ達はおまえ達で
知恵をしぼり 何年も
かけて悲しい出来事を少なくする
すなわち平和への道筋を作る為に
宗教を初め、色々トライしてきた
こと・・・

しかしおまえ達は
やはり猿の部分を外し切れて
無い。
俺たちがdnaをいじる時に消す
事が出来切れなかった集団性だ

恐らくこの星 特有の感覚だと
思うのだが・・・どうしても
dnaレベルから 外す事が
出来なかった。

せめてだが、おまえ達を雑食性
に出来たのが救い・・かな。

え?それがそんなに問題かって?
そこなんだよ。キモの部分は。

俺たちが、この星の人類を
作らなければ さほど問題では
無かったのかも知れない。

しかし、おまえ達は高度な知能
を持つのに話し合いで
解決できない場合、
戦争で決着をつけてきたのは
ナゼ?だと思う。

それが集団性なんだ。
10匹ぐらいの肉食獣の狼や
ライオンの群れがいても 
この星で生きていくには賢い選択だ。

生き物のヒエラルキー
(訳・ピラミッド型順位)
では頂点が肉食獣だ。

草や木の実を草食獣が喰い
素早い草食獣を喰う為に

集団で肉食獣が襲って喰う。

そんな感じだ。しかしこれを
猿もしていた。
しかも人間にまで進化しても
まだやっている。
これを証明するように、

人類はまず石器という武器を
創った。
そして石器を持った人類が集団
で狩りを始めた。
集団は村と言う単位になった。
やがて・・・賢い人類は
他の動物の集団の単位を超えた・・・ 

数十人、
数百人、
と数は増えていく。
そうなると数百人の

胃袋を

支えるために更なる狩り
がはじまる。
より賢く集団が生きていく
ために他の動物には想いも
つかないワナを作り始めた。

空を飛ぶ鳥や海の中の魚を
大きな網で取る。

危険な肉食獣相手には
弓矢を作り遠くから打つ。

やがて獲物を取りつくすと
他の場所まで遠征する。
その先で自分達のような村を
見つけて 
獲物を巡り争いが始まる。

これが戦争の基本だ。

話し合いでは腹がふくれんから
な。
この論理で行けば人類はすぐに
淘汰されてただろう。
ここで俺たちが組み込んだ
雑食性が効いてくるのさ。

そう稲作さ。村人の数に
あわせた田んぼを作れば
死ぬことはない。
みんなでチカラを合わせて開墾かいこん
してたがやしていけばいいんだ。
それが知恵だ。ところが

知能を付けた猿の中に自分だけが
良い思いをしたいと利己的な考え
を持つ者もあらわれた。

それがサムライを子分にした
お殿様だ。
年貢という方法さ。
これは今で言う「税金」さ。

食物連鎖の角度を90度変えて
同種族の人類で強いものを上に
弱い者を下にした
新しいピラミッドをつくった。

これを社会というんだ。


武力を盾に ここで住むなら払え
と言う事を思いついたんだ。
逆らおうとしても無理なように
武力で押さえつける。
弱い農民は従うのみさ。

今の時代は従わない弱者には極力
武力を使わないが
「法律」で「差押え」と言う 
名目で財産・不動産を
取り上げる方法が一般的だ。

スマン 話しがそれたな。

とにかく、現代になっても
まだ村感覚は存在している。
それが「国家」だ。
多きな村を国と言いかえただけだ

そして石器がいまや「核爆弾」だ
この国で過去 核爆発を見ている
のに更なる「水爆実験」まで
しているからな!

ほんと 救いようは無いかも
しれんのう・・・
集団性というdnaは。
しかし俺にもかなり責任はある
変な知恵をつけたのは
ワシだからな。

なのでおまえには 
超えた知性と強い身体を
与えようと思う。

また・・会えればええのう・・

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