魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います

高井うしお

文字の大きさ
42 / 43

42話 キス

しおりを挟む
「……殿下?」

 青白い顔をした殿下は答えない。意識が無いようだ。

「殿下は体調不良をおして、後方で指示を出していたのです。が、ブライアンさんが倒れたのを見て飛び出して……」

 殿下を運んできた兵士が唇を噛みしめて私に伝えた。

「大丈夫よ」
「真白さん……」
「私に任せて。傷口の治癒……『エキナセア』『セントジョーンズワート』のポーション」

 辞典が輝き、私の手にポーションが現われる。それを振りかけると傷口が塞がっていく。

「フレデリック殿下……」

 私は彼の名を呼びかけた。しかし、彼は動かない。まさか……もう……。私は彼に覆い被さるようにして口元に耳を近づけた。

「息……してる……」
『血を失いすぎたのでは?』

 頭の中にリベリオの声が聞こえた。そうか、腹部からの出血が多くて意識を……。

「では貧血に効く『レモン』『ヤロウ』『ペパーミント』のポーション!」

 取り出したポーションを私は手に取った。いつだって常識外れの私のポーション。これなら体の内側から新しい血液を作り出すくらいの事はやってのける。きっと。

「飲んでください」

 私はフレデリック殿下の口元にポーションを注いだ。……しかし、意識のないフレデリック殿下の口からはポーションがこぼれ落ちてしまう。

「殿下! お願い飲んでください……!」

 ああ、どうしよう。握りしめた殿下の手は冷たい。このまま殿下は死んでしまうの?

「そんなのいやです!」

 私はポーションを自分で口に含んだ。そしてフレデリック殿下の頬を包む。そしてそのまま……私は殿下の口に自分の口を重ねた。閉じられた唇をこじ開けて、ポーションが彼を癒してくれる事を願って。

「……殿下……殿下……」

 私はいつの間にか泣いていた。泣きながら何度も殿下の名前を呼んだ。お願い……目を覚まして。その時だ。殿下がうっすらと目を開けた。

「……真白……?」
「殿下!」
「これは夢かな。それともあの世か……真白がいる……」
「私ですよ! 殿下の側にいたくて飛んできたんです」

 私がそう言うと殿下はまだぼんやりとした顔で呟いた。

「やっぱり夢だ。真白がキスしてくれるはずない」
「え、あの……」

 私はなんとかポーションを飲ませようとして、結果口づけをしてしまったことに気が付いた。

「あの……夢じゃないです」

 私は真っ赤な顔をしてなんとかそう言葉を絞り出した。するとふっとフレデリック殿下は微笑んだ。

「そうか、じゃあもう少し近くで顔を見せてくれ」
「……こうですか?」

 すると思いも寄らぬほど強い力でフレドリック殿下は私を抱き寄せた。そうしてびっくりしている私の唇に……殿下はキスをした。

「ああ。確かに本物の真白だ」
「……フレデリック殿下」
「すまない。心配をかけたね。またあえて良かった」
「はい……!」

 私は殿下の首元に縋り付いた。その体は新しく血が通い、温かかった。殿下が命を取り留めた喜びで、私は涙が止まらなかった



 整列した騎士団。その先頭のフレデリック殿下の馬上に……私も座っている。

「あの……ちょっとこれおかしくないですか?」
「なんにもおかしくない」

 あれから怪我を癒した殿下とブライアンさん、そして瘴気酔いから立ち直った兵士達総掛かりで魔物は討伐された。小山みたいに巨大な熊だった。そして……今、まるで殿下に抱きかかえられるようにして私は馬に乗っている。

「あの、私後ろの馬車に……」
「駄目だ。こうしてないと真白はどこかに行ってしまいそうだから」

 フレデリック殿下はどうしても許してくれそうにない。そのまま騎士団は王都を目指した。

「みなさーん!」
「マーガレット!」

 途中で瘴気酔いではぐれた兵士さんとマーガレットを回収して私達は王城へと凱旋した。もうね、すごかったわ。王都に入った途端の私への視線が。

「それでは、凱旋パーティでまた会おう」
「はい……フレデリック殿下」

 それをなんとか乗り越えて、私は家にたどり着いた。

「真白様!」
「……クラリス」

 家についた途端にクラリスが胸に飛び込んで来た。

「突然いなくならないで下さい! どんなに探したか!」
「ごめんね……」

 後先考えないで私がいなくなって、彼女はとても心配しただろう。

「クラリス、凱旋パーティの準備をお願い」
「……もう! わかりました!」
「今回は大広間のパーティに出るので……華やかに」
「……! お任せ下さい!」

 クラリスが準備に走ったところで、私はようやく部屋にひとりきりになった。

「……ずいぶん長いこと出かけていた気がするわ」

 そして息を吐くとリベリオを呼んだ。

「リベリオ、明日。……明日私は帰るわ」
『わかった、心しておこう』

 ふう、とため息をついて私はベッドの上に転がった。

「……様、真白様」
「ん……」

 どうやら居眠りをしてしまったみたい。揺り動かされて目を覚ますと、クラリスが私を覗き混んでいた。

「お疲れの所申し訳ございません。ドレスのご用意が出来ました」
「うん」

 クラリスの用意したのは青いドレス。騎士団の団服にも似た色のドレスだった。

「こちらを」
「わかったわ」

 青いドレスに身を包み、髪を高く結い上げて私は凱旋パーティに向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...