転生した悪役令嬢は異世界でメイドカフェを開きます。あ、勇者様はスポンサーでお願いします!

高井うしお

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17話 大試食会ですのよ

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 その日の日暮れに入った知らせにリリアンナは飛び上がった。

「ハルト様! 厨房の工事が終わったそうです!」
「そっか……あとは家具を入れるだけだな」

 着々と、メイドカフェの開店は近づいている。

「そろそろアレをするべきじゃありません……?」
「アレか……うむ」

 ハルトはやぶさかではない、という顔で頷いた。

「なぁに? アレって。いやらしい話?」
「うわぁ、ウルスラ!」
「ねぇ、ずっと気になってたんだけど、あんた達の夫婦生活って……」
「ウルスラ! だまれって!」

 ハルトはなおも続けようとするウルスラの口を塞いだ。

「ウルスラさん、私達は試食会の話をしていたのですわ」
「試食会?」
「ええ、メイドカフェの」

 まったくこいつらの頭の中にはメイドカフェしかないのか、とウルスラは呆れた。

「そうそう、ウルスラさんに手伝って貰わないといけないのでしたわ」
「何を?」
「カレーとケチャップを作って欲しいんですの」
「あー、ハルトの好きな茶色いやつね。ケチャップってのは知らないけど」
「ほら、あのトマトを使ったソースですわ」

 なるほど、とウルスラは自分の部屋から錬金釜を持って来た。これこそ、女賢者ウルスラの叡智の賜である。

「それじゃまずはカレーね」

 ウルスラはぽいぽいと材料を入れて錬金釜に魔力の流した。

「ああ、この匂い! 懐かしいですわ」
「カレーの魔力の前に異世界人を跪かせてやろう……」

 蓋を開けるとそこにはコロンとカレーのルーが残されていた。

「それからケチャップね」
「ええ、トマトはこちら。それからスパイスはこれです」

 リリアンナは事前に調べていたシナモンや胡椒やオールスパイスっぽいものをウルスラに手渡した。そして錬金釜が作動する。

「こんなもんかしら」

 ぱかっと蓋を開けたウルスラが出来たソースを一舐めする。

「あら美味しい」
「ちょっと甘みが足りないように思いますわ」
「贅沢ね」

 ウルスラはそこに砂糖を加えてさらに錬金釜を作動させた。

「これでどう?」
「バッチリですわ」

 リリアンナはニコニコしながら革袋のようなものにそのケチャップを詰めた。

「それは?」
「ケチャップ用の容器ですわ。プラスチックがないから特注で作りましたの」
「普通に瓶に入れたらいいじゃない」
「いいえ、これは……まああとで分かりますわ」

 リリアンナは楽しそうにそれを冷蔵庫に締まった。

 そして翌日。厨房に雇われた料理人のリックとサニーが領主館に呼ばれた。

「それでは、あなた達に試食メニューをお願いします」
「はい、かしこまりました!」

 リックとサニーはリリアンナが書いたレシピを元に、調理を開始した。普段、屋敷の厨房には近寄らないリリアンナもハルトもこの時ばかりは別、と厨房に出張ってきていた。

「カレーの具はそうそう、その位の大きさで」
「チキンライスにもケチャップを入れるのですわ。卵で包むのは難しいですけど、頑張ってください」

 厨房係の二人は、リリアンナとハルトからアドバイスを受けながら仕上げていく。

「みなさーん! 今日はメイドカフェのメニューの試食ですよー!」
「はーい」

 メイド候補生達がわらわらと厨房に集まった。

「それでは私からあなた達へ……」

 リリアンナは特製容器でケチャップを絞り出し、イルマにうさぎを、セシルにくまさんを、クリスティーナに名前を、ミッキとフィーには似顔絵を、モモには猫さんを描いた。

「こんな風にご主人様、お嬢様のリクエストに答えて描いてね」
「かわいいですね……」
「あたし達描けるかなー?」
「失敗してもそれもご愛敬ですから、頑張ってくださいましね」

 さて、いよいよ試食の開始である。

「では向かい合わせになってー」
「はい」

 メイド候補生は向かい合わせになってお互いにおいしくなるおまじないをかける。

「おいしくなぁれ、もえもえきゅん!」
「おいしくなぁれ、もえもえきゅん!」
「……」

 リリアンナにおまじないをかけられてしまったハルトはちょっと赤くなった。

「それでは頂きましょう」

 はてさて異世界で食べるオムライス。見た目は注文通りに出来上がっているがどうだろうか。

「あら、卵と鶏の味が濃くて……」
「うまいな、これ!」

 スプーンで一口口にしたリリアンナとハルトは思わず唸った。こちらの世界では卵と鶏はまだ平飼いである。値段も相対的には高いが美味しさはこちらに軍配があがった。

「うん、ちょっと酸味のあるご飯にふんわりとした卵が合いますね」
「モモ、こんな美味しい物はじめてたべたにゃー」

 メイド達にも好評である。そしてお次はカレーライス。辛さは控えめにしてある。

「「ちょっと癖になる味ねだね」」
「モモはちょっと辛いにゃ」

 モモのカレーライスにははちみつが追加された。こっちの人には刺激が強いかもしれないので今後もそんな対応でいいかもしれない。

「さぁ、最後はデザート。パフェよ」
「ぱへ?」

 メイド達はこれまたはじめて聞く食べ物の名に頭を傾げた。しかし、オムライスもカレーも美味しかった。次はどんなのだろうと期待感が高まる。

「そう、『完璧な』っていう意味よ」

 そういってリックとサニーが持って来たのは、メイド候補生達にとってまるで夢をちぎって持って来たような代物だった。木イチゴのソースと生クリームとスポンジを段重ねにしてその上にまたクリームをあしらい、イチゴとアイスを乗せてある。アイスには顔が描いてあり、耳のかわりにクッキーがささっていた。

「うさぎさん……」

 クリスティーナが思わず呟いた。

「うーん、このアイスってやつ口でとろける……」
「「うまぁ……」」
「モモ、これは毎日食べたいにゃー」

 リリアンナもハルトもうっとりしながらパフェを平らげた。試食会は好評のうちに終わり、メイド達の士気も高まったようである。

「さぁ、もうすぐだわ……」

 リリアンナは盛り上がるみんなの姿を見ながら、ひとり呟くのであった。
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