地獄の鬼とウィッチクラフトの話をしよう。

白田ひらり

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残念だと思う反面、異世界は広いから何処かで誰かが継承して発展させているかもしれないと、期待をしている。

箒を片付けて。薔薇の手入れ専用の鋏はあるだろうけど、枝切り鋏を持ちパチン、パチンと小気味良い音を響かせ、異世界召喚のパティシエール、略して異世パティの漫画飯(お菓子)を夢中になって食べていた匠を思い浮かべて主題歌を口ずさむ。

「~♪」

サビの部分では軽快にパチパチと棘を切り落とし袋に入れれば、空腹を感じることもなく時間が過ぎてしまい、気がついたら大量の棘。

「こんなもんかなぁ」と薔薇の手入れを終わらせようとした時、背後に人の気配が。

使用人の誰かが、ユージン・サフィーロ令息が来ると知らせに来たのだろう、と振り返ると、ブロンドの髪の貴公子がいた。

件のユージン・サフィーロ侯爵令息に私はヒュッと息を呑む。

キャロライン、継母はプライドの塊だ。侮られないようお客様の前では隙なく、華やかなドレスや宝石を身につけている。使用人ですら、身だしなみを整えるのが当たり前なのだ。

だから、使用人ですら着ない擦り切れほつれたお仕着せ姿の私がキャロラインの婚約者に見られるなど、継母やキャロラインに何と言われるか想像しただけで恐ろしい。さっさと逃げ出したいが、このまま礼儀作法を無視して逃げ出せば、前世と今世の経験からもっと厄介になると分かる。

こう言う時は本物の使用人に成り切るのが1番良い。さてメイドならどうする?と、ヲタク知識を総動員して、私は冷静に行動を開始することにする。

「お目汚し失礼しました」

…いやお耳汚しだったか?と一瞬思ったが、真面目そうな顔を心がけ一礼してからササッと隅に移動。後はユージン・サフィーロが通り過ぎるのを待つだけで良いはずだ。

が、しかし。何故か笑みを浮かべたユージン・サフィーロは通り過ぎる気配がなくて。

「今の歌、聴いたことがないけど、素敵だったよ。僕の事は知ってると思うけど、はじめまして。キャロラインの婚約者のユージンだ。君、名前は?ここの使用人だよね?」
「ハイ!?」

アニソン歌唱力を褒められ正直なところ恥ずかしいが嬉しい。なんならアニソンを語りたい程に。だが、庭師の真似事をしてるところを見られたのに、平然と自己紹介するユージン・サフィーロに面倒事の予感がするから関わり合いたくない、と言う思いが勝ち声が裏返った。

「名前を教えてくれるかな?」

「…リデアと申します」

関わりたくないが、キラキラとしたエフェクトが舞うようなユージン・サフィーロの微笑みに、思わず名前を言ってしまう。なるほど令嬢達にモテるのも頷けるが、ユージン・サフィーロに対して当然、推しアイドルに話しかけられたファンの心境じゃなく、推しが可愛がっているペット的なキャラを愛でるような心情だ。
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