5 / 9
第五話
しおりを挟む
俺が屋敷に駆け込もうとした時、それを咎める声があった。
「まてっ!」
ポールが俺の前に躍り出て、それを制した。
「なんだ?」
「相手は吸血鬼だろっ、どうやって仕留めるつもりだよ?」
「……」
頭に血が上って、そのことまで考えが働かなかった。
俺は一旦冷静になって、どうすれば相手を仕留められるか考えた。
相手はミスリルの武器でなければ通用しない。
となれば目的を変更し、ここは相手を仕留めることでなく、ミスリルを手に入れるという方向で作戦を練らなければならない。
「お前に諭されるとは思わなかったぜ。ポール、この屋敷を一周して、潜入できる場所があるか探せ」
「了解っ!」
ポールは屋敷の外を旋回し、入っていける場所を探し始めた。
俺は意識を集中し、ミスリルの気配を探った。
強力な魔力が下から染み出している。
恐らく地下だ。
ヒューンとポールが戻って来た。
「ディック!正面は番犬が何匹かいてダメだ。裏口の扉からなら、柵を越えれば入れると思う。オレが屋根裏の窓をたたき割って入る。そしたら裏口の扉の鍵を開けるから、それで中に入るんだ」
「オーケー、頼むぜ」
手筈通り、俺は裏に回り込んで柵を飛び越えた。
案外楽勝で柵はこえられた。
一方、ポールの方は、小石を掴んでガラスにたたき込む。
ガシャアンという音が響き渡った。
(おいおい、聞こえてないだろうな……)
若干の不安を残しつつも、数秒後に扉の鍵の開く音がした。
慎重に扉を開けて、中に入る。
「!?」
扉を開けて玄関をくぐろうとした瞬間、犬が通路の横に座っていた。
俺は人差し指を口に持って行って、静かにしてくれ、と心の中で祈った。
その犬は吠えようとはせず、尻尾をブンブン振り回すだけだ。
「……バカ犬か」
俺はそうつぶやいて、そこを離れた。
ポールも後をついてくる。
背後を見渡し、吸血鬼に遭遇しないよう注意を払う。
そして、下りの階段を発見した。
階段の軋む音をできるだけ立てないよう、ゆっくり進む。
そして、通路脇の一つ目の扉を開けた時、それを発見した。
箱に入ったミスリルだ。
「あとは、こいつを運ぶだけか」
「それはどうかな?」
俺はその声に反応し、後方を振り向いた。
そこにいたのは、見た目は若々しい、銀髪の吸血鬼だった。
吸血鬼の横にはさっきの犬がいる。
吸血鬼はその犬に触れて、こう言った。
「モード・鎌」
すると、犬は大きな鎌に変身し、吸血鬼の手に収まった。
「そういうことか!」
横にいたポールが叫んだ。
「あの鎌でアルをやったんだ」
ポールの証言と照らし合わせて、どうやらこの目の前の吸血鬼こそ、アルを殺した張本人で間違いないようだ。
「モード・剣」
俺はポールを剣に変身させ、相手が不死身ということを無視して突っ込んだ。
一太刀浴びせなければ気が済まない。
相手の武器はでかい鎌だ。
攻撃範囲は広いが、内側に潜り込めば問題ない。
「オオオオオッ」
俺は叫びと共に、相手に斬りかかった。
しかし、
「モード・剣」
相手は再度、手に持っていた武器の形を変えた。
今度は剣だ。
(やばい!)
ザン、と相手は剣を振り下ろした。
俺の振り上げた手首に斬撃が決まる。
とっさに身を引いたが、俺の手首からは血が噴き出した。
「くっ!」
俺は飛びのいて距離を取った。
しかし、この傷はまずい。
剣を握ることができず、その場に落とした。
「お前がミスリルを狙った理由はなんだ?」
そう問いながら、吸血鬼が剣の切っ先を向けた。
「……お前らを殺すためだ」
「雇い主がいるのか?それともお前個人の恨みか?」
「それは言えるかよ。それより、お前が密造酒をやってた張本人か?」
吸血鬼はこの状況でそんなことを知ってどうする?と聞いてきたが、俺はどうせ死ぬんだから教えろ、と答えた。
「ならお前の情報と引き換えだ、それでいいなら答えよう」
「交渉成立だな」
相手は俺に逃げ場はないと思っている。
別に情報を漏らして相手が何もしゃべらなくても、その場で殺して終わりだ。
吸血鬼はしゃべり始めた。
「察しの通り、私は密造酒を作っている。しかし、金儲けが目的ではない。市民権を得るための行為だ。この不況時に雇用を拡大することで、市民を味方につける。加えて禁酒法を逆手にとって、裏で酒を恵む。これも同じ効果が期待できる」
そこまで聞いて大体分かった。
こいつは、選挙に出て政治家になるつもりだ。
(国の人間もこいつの目的を推測していたんだ。だから、ターゲットに選んだ)
「ペラペラとありがとよ、戻れ」
ポールがドラゴンに戻り、吸血鬼は俺を斬るべく、前に出た。
「言うつもりがないなら、死ね!」
その時、ポールは口から火を吐き、相手の目をくらました。
ゴウッと火球が吸血鬼に直撃し、火炎が広がる。
「今の内に逃げろっ!」
「逃げるかよ、俺の腕に巻き付け!」
「腕に!?そういうことかっ」
ポールが俺の腕に巻き付く。
「モード・剣」
その状態で剣に変身させる。
指が動かなくても、これなら剣を振れる。
「キサマッ」
吸血鬼が火を払いのけると同時に、胸に剣を突き立てた。
「まてっ!」
ポールが俺の前に躍り出て、それを制した。
「なんだ?」
「相手は吸血鬼だろっ、どうやって仕留めるつもりだよ?」
「……」
頭に血が上って、そのことまで考えが働かなかった。
俺は一旦冷静になって、どうすれば相手を仕留められるか考えた。
相手はミスリルの武器でなければ通用しない。
となれば目的を変更し、ここは相手を仕留めることでなく、ミスリルを手に入れるという方向で作戦を練らなければならない。
「お前に諭されるとは思わなかったぜ。ポール、この屋敷を一周して、潜入できる場所があるか探せ」
「了解っ!」
ポールは屋敷の外を旋回し、入っていける場所を探し始めた。
俺は意識を集中し、ミスリルの気配を探った。
強力な魔力が下から染み出している。
恐らく地下だ。
ヒューンとポールが戻って来た。
「ディック!正面は番犬が何匹かいてダメだ。裏口の扉からなら、柵を越えれば入れると思う。オレが屋根裏の窓をたたき割って入る。そしたら裏口の扉の鍵を開けるから、それで中に入るんだ」
「オーケー、頼むぜ」
手筈通り、俺は裏に回り込んで柵を飛び越えた。
案外楽勝で柵はこえられた。
一方、ポールの方は、小石を掴んでガラスにたたき込む。
ガシャアンという音が響き渡った。
(おいおい、聞こえてないだろうな……)
若干の不安を残しつつも、数秒後に扉の鍵の開く音がした。
慎重に扉を開けて、中に入る。
「!?」
扉を開けて玄関をくぐろうとした瞬間、犬が通路の横に座っていた。
俺は人差し指を口に持って行って、静かにしてくれ、と心の中で祈った。
その犬は吠えようとはせず、尻尾をブンブン振り回すだけだ。
「……バカ犬か」
俺はそうつぶやいて、そこを離れた。
ポールも後をついてくる。
背後を見渡し、吸血鬼に遭遇しないよう注意を払う。
そして、下りの階段を発見した。
階段の軋む音をできるだけ立てないよう、ゆっくり進む。
そして、通路脇の一つ目の扉を開けた時、それを発見した。
箱に入ったミスリルだ。
「あとは、こいつを運ぶだけか」
「それはどうかな?」
俺はその声に反応し、後方を振り向いた。
そこにいたのは、見た目は若々しい、銀髪の吸血鬼だった。
吸血鬼の横にはさっきの犬がいる。
吸血鬼はその犬に触れて、こう言った。
「モード・鎌」
すると、犬は大きな鎌に変身し、吸血鬼の手に収まった。
「そういうことか!」
横にいたポールが叫んだ。
「あの鎌でアルをやったんだ」
ポールの証言と照らし合わせて、どうやらこの目の前の吸血鬼こそ、アルを殺した張本人で間違いないようだ。
「モード・剣」
俺はポールを剣に変身させ、相手が不死身ということを無視して突っ込んだ。
一太刀浴びせなければ気が済まない。
相手の武器はでかい鎌だ。
攻撃範囲は広いが、内側に潜り込めば問題ない。
「オオオオオッ」
俺は叫びと共に、相手に斬りかかった。
しかし、
「モード・剣」
相手は再度、手に持っていた武器の形を変えた。
今度は剣だ。
(やばい!)
ザン、と相手は剣を振り下ろした。
俺の振り上げた手首に斬撃が決まる。
とっさに身を引いたが、俺の手首からは血が噴き出した。
「くっ!」
俺は飛びのいて距離を取った。
しかし、この傷はまずい。
剣を握ることができず、その場に落とした。
「お前がミスリルを狙った理由はなんだ?」
そう問いながら、吸血鬼が剣の切っ先を向けた。
「……お前らを殺すためだ」
「雇い主がいるのか?それともお前個人の恨みか?」
「それは言えるかよ。それより、お前が密造酒をやってた張本人か?」
吸血鬼はこの状況でそんなことを知ってどうする?と聞いてきたが、俺はどうせ死ぬんだから教えろ、と答えた。
「ならお前の情報と引き換えだ、それでいいなら答えよう」
「交渉成立だな」
相手は俺に逃げ場はないと思っている。
別に情報を漏らして相手が何もしゃべらなくても、その場で殺して終わりだ。
吸血鬼はしゃべり始めた。
「察しの通り、私は密造酒を作っている。しかし、金儲けが目的ではない。市民権を得るための行為だ。この不況時に雇用を拡大することで、市民を味方につける。加えて禁酒法を逆手にとって、裏で酒を恵む。これも同じ効果が期待できる」
そこまで聞いて大体分かった。
こいつは、選挙に出て政治家になるつもりだ。
(国の人間もこいつの目的を推測していたんだ。だから、ターゲットに選んだ)
「ペラペラとありがとよ、戻れ」
ポールがドラゴンに戻り、吸血鬼は俺を斬るべく、前に出た。
「言うつもりがないなら、死ね!」
その時、ポールは口から火を吐き、相手の目をくらました。
ゴウッと火球が吸血鬼に直撃し、火炎が広がる。
「今の内に逃げろっ!」
「逃げるかよ、俺の腕に巻き付け!」
「腕に!?そういうことかっ」
ポールが俺の腕に巻き付く。
「モード・剣」
その状態で剣に変身させる。
指が動かなくても、これなら剣を振れる。
「キサマッ」
吸血鬼が火を払いのけると同時に、胸に剣を突き立てた。
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる