21 / 31
天才作家の孫 2
しおりを挟む
ダザイは作家になることをようやく諦めた。
それからある出来事を得て、コンビニでバイトをするようになっていた。
来る日も来る日も、ひたすらレジを打ち続け、弁当をレンジで温め、フライヤーで冷凍のナゲットを揚げ続ける日々だ。
先輩からは、「ダザイ君はいつになったらまともに仕事覚えてくれるの?もう30だよね?」
と嫌味を言われ、歯を食いしばって仕事をしていた。
作家を諦めたダザイを更に追い詰めた出来事、それは半年前の就活だ。
自分ならそこそこの企業に就職できるだろう。
そんな謎の自信を持って、マイ○ビに乗っている、企業の中途採用枠に応募した。
しかし、10社受けても不採用。
面接官からは決まってこう言われる、
「大学を出てから10年も何をしていたのかね?職歴なしじゃ、うちじゃ使えないなあ。うちは即戦力を求めてるから」
そして3か月の活動も実を結ばず、土砂降りでスーツが水びだしになったのを機に、就活をやめた。
そして流れ着いたのが今のコンビニであった。
その時のダザイの心理状態は、とてもここでは書くことができないほどに、荒んでいた。
毎日働き、ののしられ、帰宅しすぐ眠る。
そんな日々だった。
ある時、突然むなしくなった。
腐った先輩に対する、頭の中にこだまするののしりの言葉。
「くそったれ、死んじまえ、もうこんなバイトやめてやるよ」
俺の頭の中は、それだけだ。
考えたくないのに、考えてしまう。
「うわああああああああああっ」
ダザイはアパートから身を投げ出そうとし、すんでのところで踏みとどまった。
「う、うぐ……」
涙がとめどなく流れ、地面を濡らした。
その日から、ダザイはストーリーを考えるようになった。
何か適当な題材を見つけて、キャラを考え、ストーリーを考える。
その時だけは、嫌いな職場の人間のことを考えずに済んでいた。
ダザイの考える話には、次第に、主人公の苦難や、試練が盛り込まれることが多くなった。
今までは流行りのストーリーをパクるだけだったが、そこに読者を引きつける「共感」の要素が生まれた。
ある日、ダザイは友人と会う機会があったため、近くの居酒屋で一緒に飲むことになった。
「お前まだ話作ってんの?」
「ああ、気が向いたらな。今はもう作家は諦めたよ」
「見せてくれよ、笑わねえから」
友人にそう言われ、まあいいか、という気持ちで携帯から自分のページにアクセスし、スマホを渡した。
他人の評価なんて今はどうでもいい。
馬鹿にされようが、今度はそれをネタに話を書いてやる、くらいに思っていた。
だが、友人の顔は真剣そのものだった。
「ダザイ、お前の話、読めるわ」
初めてそんな風に言われた。
かつて、「才能ないわ、やめちまえよ」と言って来た親友がだ。
ダザイは気が付いた。
売れる話はなんで売れるのか。
それは、たとえ異世界に行こうが、そこで作者が体験した苦難をそのストーリーにうまく組み込んでいるからだ。
そして、それが読者の共感を呼んでヒットにつながるのだ。
今までのダザイの作品は空っぽだった。
自分が感じることを小説に組み込んでなかったからだ。
帰り道、友人にこう言われた。
「お前、少し大人になったよ。これからも頑張れよ!」
何か、胸の中で熱いものが込み上げてきた。
職場の人間関係や、仕事がうまくいかず、自分自身が許せなくなったり、
そんな辛い日々ばかりだった。
でも今は、どんなにつらいことがあっても、ストーリーを考えれば乗り切れる。
ダザイにとって、作品を作ることは名誉を得るためではなくなった。
人生を乗り切るために、ダザイは今日もストーリーを考える。
終わり
それからある出来事を得て、コンビニでバイトをするようになっていた。
来る日も来る日も、ひたすらレジを打ち続け、弁当をレンジで温め、フライヤーで冷凍のナゲットを揚げ続ける日々だ。
先輩からは、「ダザイ君はいつになったらまともに仕事覚えてくれるの?もう30だよね?」
と嫌味を言われ、歯を食いしばって仕事をしていた。
作家を諦めたダザイを更に追い詰めた出来事、それは半年前の就活だ。
自分ならそこそこの企業に就職できるだろう。
そんな謎の自信を持って、マイ○ビに乗っている、企業の中途採用枠に応募した。
しかし、10社受けても不採用。
面接官からは決まってこう言われる、
「大学を出てから10年も何をしていたのかね?職歴なしじゃ、うちじゃ使えないなあ。うちは即戦力を求めてるから」
そして3か月の活動も実を結ばず、土砂降りでスーツが水びだしになったのを機に、就活をやめた。
そして流れ着いたのが今のコンビニであった。
その時のダザイの心理状態は、とてもここでは書くことができないほどに、荒んでいた。
毎日働き、ののしられ、帰宅しすぐ眠る。
そんな日々だった。
ある時、突然むなしくなった。
腐った先輩に対する、頭の中にこだまするののしりの言葉。
「くそったれ、死んじまえ、もうこんなバイトやめてやるよ」
俺の頭の中は、それだけだ。
考えたくないのに、考えてしまう。
「うわああああああああああっ」
ダザイはアパートから身を投げ出そうとし、すんでのところで踏みとどまった。
「う、うぐ……」
涙がとめどなく流れ、地面を濡らした。
その日から、ダザイはストーリーを考えるようになった。
何か適当な題材を見つけて、キャラを考え、ストーリーを考える。
その時だけは、嫌いな職場の人間のことを考えずに済んでいた。
ダザイの考える話には、次第に、主人公の苦難や、試練が盛り込まれることが多くなった。
今までは流行りのストーリーをパクるだけだったが、そこに読者を引きつける「共感」の要素が生まれた。
ある日、ダザイは友人と会う機会があったため、近くの居酒屋で一緒に飲むことになった。
「お前まだ話作ってんの?」
「ああ、気が向いたらな。今はもう作家は諦めたよ」
「見せてくれよ、笑わねえから」
友人にそう言われ、まあいいか、という気持ちで携帯から自分のページにアクセスし、スマホを渡した。
他人の評価なんて今はどうでもいい。
馬鹿にされようが、今度はそれをネタに話を書いてやる、くらいに思っていた。
だが、友人の顔は真剣そのものだった。
「ダザイ、お前の話、読めるわ」
初めてそんな風に言われた。
かつて、「才能ないわ、やめちまえよ」と言って来た親友がだ。
ダザイは気が付いた。
売れる話はなんで売れるのか。
それは、たとえ異世界に行こうが、そこで作者が体験した苦難をそのストーリーにうまく組み込んでいるからだ。
そして、それが読者の共感を呼んでヒットにつながるのだ。
今までのダザイの作品は空っぽだった。
自分が感じることを小説に組み込んでなかったからだ。
帰り道、友人にこう言われた。
「お前、少し大人になったよ。これからも頑張れよ!」
何か、胸の中で熱いものが込み上げてきた。
職場の人間関係や、仕事がうまくいかず、自分自身が許せなくなったり、
そんな辛い日々ばかりだった。
でも今は、どんなにつらいことがあっても、ストーリーを考えれば乗り切れる。
ダザイにとって、作品を作ることは名誉を得るためではなくなった。
人生を乗り切るために、ダザイは今日もストーリーを考える。
終わり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる