シェフが私のことを好きになる確率

hayama_25

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第18話

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「車に轢かれそうになった子供を助けた時に、足を骨折しちゃってね」

「そんなこと…」

 事故が起きたなら、知らされないはずがない。

「病院の方が何度も連絡してくれたけど、繋がらなかったんだって」

「そういえば…夜何度も電話が来たけど、言い訳なんて聞きたくなかったから取らなかったんだ…。もしも取ってたら、会いに行けたのに」

 後悔が胸を締め付ける。

 もしも電話を取っていたら…。

 一回でも取れば…。

「俺が電話した時にはもう既に使われていなかったから、」

 恭介さんとの思い出を消したくて、だけど消せるはずがなくて。

「ごめん」

 もういっその事手放してしまおうと思ったんだ。

「入院してる時も、ずっと莉乃の事を思ってた」

 言葉が出ない。

 心が揺れ動く。

「誤解さえなければ、俺達は今でも付き合っていたかもしれないね、」

 彼の言葉が胸に刺さる。

「そうとも知らず、私は浮気されたとばかり…」

「ごめんなさい。」

 涙が溢れそうになる。

「いいよ。莉乃がそうした気持ちも分かるしね。浮気だと思わせちゃった俺が悪いよ」

 彼の優しさに、胸が痛む。

「恭介さん…」

「莉乃には彼氏がいるし、諦めようと思ったけど、どうしても誤解を解いておきたくて。これもどうしても受け取って欲しくて。…貰ってくれる?」

 感謝の気持ちが溢れる。

「うん。ありがとう」

 彼の笑顔に、少しだけ心が軽くなる。

「よかった。ところで、…彼氏ってなんの話し?」

 私には彼氏なんていないのに。

「え、彼氏いないの?」

「いないよ?」

 誰と間違えてるんだろう。

「じゃあこの前仕事帰りに一緒に帰ってた人は誰?」

「この前…?」

 私は常に一人で帰ってるけど?

「1ヶ月ぐらい前に、どうしても莉乃と話がしたくて一度お店を出たものの、店の近くで待ってたんだよ。そしたら男の人と出てきて」

 あぁ。

「シェフ…?シェフは彼氏じゃないよ」

 思い出しながら、少し笑って答える。

「そっか、彼氏いなかったんだ」

「彼氏じゃないけど…私の好きな人だよ」

「今度は上手くいくといいね。」
彼の言葉に、少しだけ心が温かくなる。

「うん。ありがとう」

 彼の優しさに、感謝の気持ちが溢れる。

「こんな時間だし送っていくよ」

「一人で帰れるよ」

「俺が送りたいの。少しでも莉乃と一緒にいたくて」

 彼の真剣な表情に、断れない。

 そんな顔されたら…

「じゃあ、お言葉に甘えて、」

 そうして、家まで送ってもらうことになった。

「…俺と別れてから彼氏できた?」
「出来るわけないよ」

 恭介さんと付き合えたのだって奇跡みたいなものなのに。

「ほんとに?莉乃可愛いから、男が逃すはずないのにな~」

 彼の言葉に、少しだけ笑顔が戻る。

 恭介さんはいつも、こうして私のことを愛でてくれていたのに。

「そんな風に思ってくれるのは恭介さんだけだよ。 恭介さんの方こそ彼女の一人や二人ぐらいいたんじゃないの?」

 人懐こくて優しくて、周りには常に人がいて…、




「できないよ。俺には莉乃しかいないから」
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