シェフが私のことを好きになる確率

hayama_25

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第20話

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「おつかれ様でしたー!」
 律が元気よく挨拶をする。

 仕事終わりにあそこまで元気だと逆に心配になる。

「おつかれ」

「お疲れ様でした」
「あぁ、」

 シェフの冷たい返事に、胸が少し痛む。

 律の時と私の時、態度が違う。

 やっぱり私にだけ当たりが強い。

 ただ単に機嫌が悪いわけじゃなかった。
 そう思ったら心が重くなる。

 このまま帰ってしまってほんとにいいのかな。

 …また、話を聞かずに後悔したくない。


「シェフ」
 私は、勇気を出して声をかけた。

「なんだ帰ってなかったのか」
 シェフの冷たい言葉に、心がさらに沈む。

「戻ってきました」
 少し緊張しながら答える。

「は、なんで」

 このまま有耶無耶にしたくなかったから。

「思ってることがあるならはっきり言って下さい」
「何?」

 シェフの冷たい視線に、少し怯える。

「今日一日私にだけ当たりが強かったのはどうしてですか」

 シェフの沈黙に、胸が締め付けられる。

「…気のせいだ」

 気のせい。

 なんかじゃない。

「私もそうだと思いました。だけど、どう考えても気のせいじゃないんです。」

「変なこと言ってないで早く帰れ」

 どうして、なんで急に冷たくなったの。

「理由を教えてください」

「だから気のせ」

 シェフの話を最後まで聞かずに遮った。

「理由話してくれるまでここから動きません」

「はぁ。なに子供みたいなこと言ってんだよ」

 私だって自分が子供みたいなことしてるって分かってる。

 だけど、ずっとこのままなんて嫌。

「シェフ、」

 本当のことを話してよ。

「…お前、元彼と寄り戻したのか」

「へ?」

 どうして今恭介さんの話が、

「この前一緒に歩いてるところを見かけた」

 まさか、昨日恭介さんと一緒にいるところを見られていたなんて。

 誤解されていたのか。

「あれは、よりを戻したというか、」
 どう説明するべきか考えていると、

「抱きしめられてたけど?」
 シェフがさらに問い詰めてきた。

「それはっ、」

 ちょっと待って、

 って事はこれが理由?

 元彼に抱きしめられてたから私に冷たくしたの?

 もしかして嫉…

「…悪い。忘れろ。」
「え?」

 忘れるなんて、出来るわけない。

「困らせて悪かった。」
「どうして急に…」

 シェフは何も言おうとしない。

「…忘れません」

 私の誤解だったとしても、シェフが嫉妬してくれたんだって考えたら…

「なんでだよ」
 シェフが呆れたそうに言う。

「忘れたくないからです」
「また訳の分からないこと言って…」

 訳の分からないこと言ってるのはどっち。

 言いかけてたのに途中で辞めるって、何を言いたかったのか気になって仕方がない。

「それって嫉妬ってことじゃないんですか?」
 つい口走ってしまった。

 気づいた時には手遅れで、

 シェフの沈黙に、心がざわつく。

「シェフ?」

「お前、俺に何言わせたいの」

 全て見透かされいるみたいだった。

「私はただ…」

 嫉妬だったらどれほど嬉しいだろうと思って…

「てか言ってもいいの」

「え?何をですか」

 何、何を言われるの。

 もしかして私の事、本当は嫌いとか…





「莉乃を好きってこと」


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