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ここは僕らの秘密結社
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雷鳴が轟く。
この世界に似つかわしくない無機質で機械的な建物が、轟く音よりも先に曇天の空の下刹那に映し出された。
ゴロゴロと後から追いつく轟音さえも反射してしまいそうなメタリックな建物。
その人の温かみも感じられない隔絶した建物からも雷鳴に負けじと怒鳴り声が轟く。
「コラアアアア! まぁああたお前かあああああああ!」
後から追いついて来た雷鳴にも負けじと、周辺を震わすその声の持ち主は……
「何度同じことをすればいいんだ! お前は猫か!? 犬か!? それ以下か?! 人の話を理解出来ないペット畜生でも怒られると学習し、こう何度も怒られることを繰り返さない! それに比べてお前は!」
「だってだって聞いてくれよ博士! ユービスのやつが!!」
「言い訳無用! ヒタキ! このバカを懲罰房へぶち込んで最低でも1週間甘い顔を見せるな! 同じことを繰り返さぬように徹底的に分からせろ!」
ヒタキと呼ばれた瞬間、前髪で目を隠した生気の無い、青い顔をした線の細い男の子がどこからか現れた。
コクリと頷くと命令を執行しようと行動に移す。
「ちょちょ待って待って博士! ヒタキも落ち着け! まずな? 俺が悪いんじゃなくてユービスが! あ、おい引きづるなヒタキ! 俺は悪くないんだ! 待って引きずるなヒタキ、ユービスがあ! 待って懲罰房はもう懲り懲りだ。動けないし毎日ネズミに齧られるし! あんな齧られたら青くなっちゃうよ! ならないけど! その上ご飯は美味しく無いし、って待って待って待て待て待ってえええヒタキイイイイ! 友達だろ? 止めてズルズルしないで服が破れる! 助けて博士えええええ!」
「しばらくそいつの顔も見たくない、ガンガン引きずってやれヒタキ。そいつの服をボロ切れにしてやるのだ。ボロ切れを雑巾にすれば今より少しは役に立つだろう。ふっ」
上手いこと言ったと思ったのか、ドヤ顔でニヤリと笑う博士と呼ばれる男。
泣きながら引きずられる十代半ばと見られるヤンチャそうな男の子。
その男の子をズルズルする顔色の青い前髪目隠し男の子。
頑丈そうな金属で出来た、間違いなく大人一人じゃ開けられないだろうと思わせる頑強で重厚な扉。
そんな扉をギイと…そんな音も立てずにすんなりと開いた。どうやら建て付けはいい様だ。
開いた扉は「懲罰房ノオオオオオ」という悲鳴に、蓋をする様に閉じた。
「ハア…」
「...どうなされたのですか?マスター」
今までは誰も居なかったはずの空間に不意に声が聞こえる。ため息でさえ今は大きく聞こえる無音に響く抑揚の無い他者の声。
そんな驚愕の状況にさえ、博士と呼ばれる者は冷静に、だが怒りに震わせた声を返す。
「あのバカ、俺が一年以上かけて基礎理論を構築した作品をぶち壊しやがった。それも! それもだぞ? 俺が見た時、アイツは壊してる最中だったのだが、どんな顔してたと思う?」
その瞬間を思い出したのだろう、急に天を見上げて両手を広げる。がに股で地面を踏みしめ、まるで神に文句を言うように吠える。
「ニコニコと、笑顔で楽しそうに! 楽しそうに壊してやがった! 俺の作品を! 神め! アイツはお前の差し金かああ!」
段々と語尾が強くなっていく。喉を枯らさんばかりの怒鳴り声に白衣がはためき、掛けている眼鏡がパリンと欠ける。「うおおおおお!」と髪をかきあげるその様は最早発狂寸前だ。
欠けた眼鏡から見える目に、狂気さえ宿って見える。
「はぁ、なるほど。ですがあのバk……ゴホン。ジルドの坊やはマスターの最高傑作、だからこそ怒りの矛先を愛する作品に向けづらいという訳ですね?」
髪を掻きむしっていたマスター。メイデイ・アーリーは手をピタリと止め、くるりと振り返り、如何にも秘書っぽい言葉使いをするその《粘性種(スライム)》に話しかける。
「ああそうだ。アイツこそ、未完成でありながら俺の最高傑作だ。ひと塩気にかけてはいる。成長の余地はかなりあるだろう……が」
秘書スライムの前で四つん這いになり頭をガックシと落としたメイデイは言葉を続ける。
「どうしてジルはこう育った…」
「ご愁傷様です、マスター」
「イタズラ好きでわがまま、創造主たる俺の言うことも話半分で遊び呆けて、アイツ生まれた目的さえ覚えてないんじゃないか…」
「マスター、ガンバです」
言ってるうちにまた悲しくなってきたのか、更に地面に頭を近付け項垂れるメイデイ。
その様子に。全く表情筋を動かさず淡々と応援を送るスライム
ここは悪の秘密結社。
勇者を打倒すべく日々研鑽を重ねる科学者メイデイ・アーリーと、作られた怪人達が日々研鑽を重ねる悪のアジトである。
この世界に似つかわしくない無機質で機械的な建物が、轟く音よりも先に曇天の空の下刹那に映し出された。
ゴロゴロと後から追いつく轟音さえも反射してしまいそうなメタリックな建物。
その人の温かみも感じられない隔絶した建物からも雷鳴に負けじと怒鳴り声が轟く。
「コラアアアア! まぁああたお前かあああああああ!」
後から追いついて来た雷鳴にも負けじと、周辺を震わすその声の持ち主は……
「何度同じことをすればいいんだ! お前は猫か!? 犬か!? それ以下か?! 人の話を理解出来ないペット畜生でも怒られると学習し、こう何度も怒られることを繰り返さない! それに比べてお前は!」
「だってだって聞いてくれよ博士! ユービスのやつが!!」
「言い訳無用! ヒタキ! このバカを懲罰房へぶち込んで最低でも1週間甘い顔を見せるな! 同じことを繰り返さぬように徹底的に分からせろ!」
ヒタキと呼ばれた瞬間、前髪で目を隠した生気の無い、青い顔をした線の細い男の子がどこからか現れた。
コクリと頷くと命令を執行しようと行動に移す。
「ちょちょ待って待って博士! ヒタキも落ち着け! まずな? 俺が悪いんじゃなくてユービスが! あ、おい引きづるなヒタキ! 俺は悪くないんだ! 待って引きずるなヒタキ、ユービスがあ! 待って懲罰房はもう懲り懲りだ。動けないし毎日ネズミに齧られるし! あんな齧られたら青くなっちゃうよ! ならないけど! その上ご飯は美味しく無いし、って待って待って待て待て待ってえええヒタキイイイイ! 友達だろ? 止めてズルズルしないで服が破れる! 助けて博士えええええ!」
「しばらくそいつの顔も見たくない、ガンガン引きずってやれヒタキ。そいつの服をボロ切れにしてやるのだ。ボロ切れを雑巾にすれば今より少しは役に立つだろう。ふっ」
上手いこと言ったと思ったのか、ドヤ顔でニヤリと笑う博士と呼ばれる男。
泣きながら引きずられる十代半ばと見られるヤンチャそうな男の子。
その男の子をズルズルする顔色の青い前髪目隠し男の子。
頑丈そうな金属で出来た、間違いなく大人一人じゃ開けられないだろうと思わせる頑強で重厚な扉。
そんな扉をギイと…そんな音も立てずにすんなりと開いた。どうやら建て付けはいい様だ。
開いた扉は「懲罰房ノオオオオオ」という悲鳴に、蓋をする様に閉じた。
「ハア…」
「...どうなされたのですか?マスター」
今までは誰も居なかったはずの空間に不意に声が聞こえる。ため息でさえ今は大きく聞こえる無音に響く抑揚の無い他者の声。
そんな驚愕の状況にさえ、博士と呼ばれる者は冷静に、だが怒りに震わせた声を返す。
「あのバカ、俺が一年以上かけて基礎理論を構築した作品をぶち壊しやがった。それも! それもだぞ? 俺が見た時、アイツは壊してる最中だったのだが、どんな顔してたと思う?」
その瞬間を思い出したのだろう、急に天を見上げて両手を広げる。がに股で地面を踏みしめ、まるで神に文句を言うように吠える。
「ニコニコと、笑顔で楽しそうに! 楽しそうに壊してやがった! 俺の作品を! 神め! アイツはお前の差し金かああ!」
段々と語尾が強くなっていく。喉を枯らさんばかりの怒鳴り声に白衣がはためき、掛けている眼鏡がパリンと欠ける。「うおおおおお!」と髪をかきあげるその様は最早発狂寸前だ。
欠けた眼鏡から見える目に、狂気さえ宿って見える。
「はぁ、なるほど。ですがあのバk……ゴホン。ジルドの坊やはマスターの最高傑作、だからこそ怒りの矛先を愛する作品に向けづらいという訳ですね?」
髪を掻きむしっていたマスター。メイデイ・アーリーは手をピタリと止め、くるりと振り返り、如何にも秘書っぽい言葉使いをするその《粘性種(スライム)》に話しかける。
「ああそうだ。アイツこそ、未完成でありながら俺の最高傑作だ。ひと塩気にかけてはいる。成長の余地はかなりあるだろう……が」
秘書スライムの前で四つん這いになり頭をガックシと落としたメイデイは言葉を続ける。
「どうしてジルはこう育った…」
「ご愁傷様です、マスター」
「イタズラ好きでわがまま、創造主たる俺の言うことも話半分で遊び呆けて、アイツ生まれた目的さえ覚えてないんじゃないか…」
「マスター、ガンバです」
言ってるうちにまた悲しくなってきたのか、更に地面に頭を近付け項垂れるメイデイ。
その様子に。全く表情筋を動かさず淡々と応援を送るスライム
ここは悪の秘密結社。
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