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16話 お花畑
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16話 お花畑
~剣士の幕間~
婚約パーティーが終わって2カ月経ち、少しずつ結婚のことが決まった。結婚式を挙げるのは4ヶ月後の秋で、それまでに準備を終える、と。兄や姉と比べると規模は劣るけど、侯爵家のプライドにかけて貧相にはしないらしい。よくわからないこだわりだけど、お金や招待客のことは執事長が全部決めた。俺がやることといえば、衣装の採寸と試着くらい。父やストローマ侯爵と違って特別なこだわりはないから、そんなに時間はかからない。
2ヶ月間、ブレイカとは何のやり取りもしなかった。手紙を書くこともなければ、電話もしない。会わない。使用人からも一切話を聞かない。噂話含めて。俺の生活範囲が狭すぎるせいかと思ったけど、両親に確認しても返事はなかった。明らかな拒絶を感じつつ、かといって俺に何か言う権利も気力もなくてやめた。所詮は政略結婚、愛だなんて限定的で幻も同然。結婚したから、愛されるものだと思い上がってはいけない。そして、愛してくれない人に愛を誓う必要もない。要は、変化を起こすことは何もしないということだ。本来の目的さえ果たせれば、何の問題もないはず。……本来の目的? ブレイカとの間に子を授かること? 病弱な俺が生殖できるかわからないし、もしできたとて何らかのハンディを背負わされて苦しむだろう。自分だけではなく、血を分けた子供にまで迷惑をかけるのか。……いや、本来の目的は政治的な駆け引きによって他家へ圧力を与え、子孫繁栄をして家門を守ること。だけど俺は……。なんだこれは。負の循環じゃないか。解決方法もない、最悪な循環……。
「はぁ……」
俺には、断るという選択肢は用意されていない。両親の言うことは絶対で、俺の世界の神に等しい。返事は「はい」だ。それを死ぬまでやり続けて、少しでも家の役に立たなければいけない。でなければ俺は死ぬ。そう決まった筋書きだ。如何なる人であっても変えられないのだろう。結婚は絶対で、両親の言うことも絶対で――。
(何もなかったら、自由だったら、俺は何をしたいのかな)
そんなことを考える日もあった。実験の途中、材料を間違えたのか、幻覚症状に見舞われる。酒を飲んだことはないけど、酔っぱらいのような景色が見えた。胸、お腹、頭が痛く、ぽわぽわ浮かんでいる。心臓の鼓動が速くて、胸に手を当てると、奥へ沈んでいく重低音が響く。立っていると腹痛で歩けなくなり、仕方なく寝転んで綺麗な星空を眺める。……夜の星ではなくて、きらきらなお花畑を目の前にして。
~剣士の幕間~
婚約パーティーが終わって2カ月経ち、少しずつ結婚のことが決まった。結婚式を挙げるのは4ヶ月後の秋で、それまでに準備を終える、と。兄や姉と比べると規模は劣るけど、侯爵家のプライドにかけて貧相にはしないらしい。よくわからないこだわりだけど、お金や招待客のことは執事長が全部決めた。俺がやることといえば、衣装の採寸と試着くらい。父やストローマ侯爵と違って特別なこだわりはないから、そんなに時間はかからない。
2ヶ月間、ブレイカとは何のやり取りもしなかった。手紙を書くこともなければ、電話もしない。会わない。使用人からも一切話を聞かない。噂話含めて。俺の生活範囲が狭すぎるせいかと思ったけど、両親に確認しても返事はなかった。明らかな拒絶を感じつつ、かといって俺に何か言う権利も気力もなくてやめた。所詮は政略結婚、愛だなんて限定的で幻も同然。結婚したから、愛されるものだと思い上がってはいけない。そして、愛してくれない人に愛を誓う必要もない。要は、変化を起こすことは何もしないということだ。本来の目的さえ果たせれば、何の問題もないはず。……本来の目的? ブレイカとの間に子を授かること? 病弱な俺が生殖できるかわからないし、もしできたとて何らかのハンディを背負わされて苦しむだろう。自分だけではなく、血を分けた子供にまで迷惑をかけるのか。……いや、本来の目的は政治的な駆け引きによって他家へ圧力を与え、子孫繁栄をして家門を守ること。だけど俺は……。なんだこれは。負の循環じゃないか。解決方法もない、最悪な循環……。
「はぁ……」
俺には、断るという選択肢は用意されていない。両親の言うことは絶対で、俺の世界の神に等しい。返事は「はい」だ。それを死ぬまでやり続けて、少しでも家の役に立たなければいけない。でなければ俺は死ぬ。そう決まった筋書きだ。如何なる人であっても変えられないのだろう。結婚は絶対で、両親の言うことも絶対で――。
(何もなかったら、自由だったら、俺は何をしたいのかな)
そんなことを考える日もあった。実験の途中、材料を間違えたのか、幻覚症状に見舞われる。酒を飲んだことはないけど、酔っぱらいのような景色が見えた。胸、お腹、頭が痛く、ぽわぽわ浮かんでいる。心臓の鼓動が速くて、胸に手を当てると、奥へ沈んでいく重低音が響く。立っていると腹痛で歩けなくなり、仕方なく寝転んで綺麗な星空を眺める。……夜の星ではなくて、きらきらなお花畑を目の前にして。
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