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28話 ピクニック
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28話 ピクニック
また熱を出して、ベッドで横になっていた。悪夢を見てうなされ、背中に汗が張り付いて気持ち悪かった。嫌なことも同時に思い出され、目を開けないよう にした。そうすれば、大好きなおもちゃも、秘密基地も、何も見えなくなるから。
今回は、マリアンヌの必死な看病と医者の診断により、ようやく峠を越した。医者は無事に目覚めると判断して早々に仕事を切り上げる。熱が下がってきて落ち着いたころ、周りのことが見える。少しぼやけて、ふらついた足で部屋をうろつく。いつもは遊んでくれるマリアンヌも、最低限近づかないようにしている。今はひとり。くまのぬいぐるみを抱きしめ、外から聞こえる声に耳を澄ませる。俺のいる静かな部屋と違って、何人もの人のにぎやかな声が聞こえる。閉め切った重い空気を入れ替えようと、カーテンを開ける。……庭で家族がピクニックしている。赤と白のレジャーシートを原っぱに敷き、幼い兄ふたりと姉3人が仲良く円を囲む。使用人がバスケットを運び、中から様々な種類のサンドウィッチを取り出した。キャベツ卵、トマトチキン、たっぷりチーズ、生クリームシフォン、などなど。シェフお手製のオードブルも並ぶ。ドリンクが配られ、兄姉はちょっとした非日常を喜んだ。両親も笑顔で、家族との
「たのしそう……」
このとき、俺は病気だから一緒にいられないのだと思っていた。病気を持っているから、うつらないために別にして扱っていたのだと。だけど違った。家族は俺を意図的に分けて、遠くに追いやり、孤立させた。心配でも必要な警戒でもなく、悪意があった。罵り、嘲り、存在否定。俺だってこんな弱い身体で生まれたくなかったし、なんなら、俺を見下す人たちのもとに生まれるなんて、場所を間違えた。でも全部どうしようもないことだ。両親だって、俺が「こんな」出来損ないだということに失望し、兄弟は「こんな」やつがいることを恥じている。だから、この家に生まれたことが間違いだったんだ。俺がいなければ、家族は家門を守り、兄弟は継いでいこうと確固たる意思を持って行動したに違いない。
やっと歩き始めた妹を抱いた使用人が門をくぐり、大事そうに母親に渡した。俺とは違い健康的で愛らしい妹は、たちまち家族の虜になった。そんな母のお腹には、また別の命が宿っていた。
「ロベルト、今日の授業はどうだったの?」
「そうですね……」
「来週試験があると聞いたぞ。練習に付き合ってやる」
「体調には気をつけてくれよ」
「ええ。必ず元気で健康な子を産みますわ」
また熱を出して、ベッドで横になっていた。悪夢を見てうなされ、背中に汗が張り付いて気持ち悪かった。嫌なことも同時に思い出され、目を開けないよう にした。そうすれば、大好きなおもちゃも、秘密基地も、何も見えなくなるから。
今回は、マリアンヌの必死な看病と医者の診断により、ようやく峠を越した。医者は無事に目覚めると判断して早々に仕事を切り上げる。熱が下がってきて落ち着いたころ、周りのことが見える。少しぼやけて、ふらついた足で部屋をうろつく。いつもは遊んでくれるマリアンヌも、最低限近づかないようにしている。今はひとり。くまのぬいぐるみを抱きしめ、外から聞こえる声に耳を澄ませる。俺のいる静かな部屋と違って、何人もの人のにぎやかな声が聞こえる。閉め切った重い空気を入れ替えようと、カーテンを開ける。……庭で家族がピクニックしている。赤と白のレジャーシートを原っぱに敷き、幼い兄ふたりと姉3人が仲良く円を囲む。使用人がバスケットを運び、中から様々な種類のサンドウィッチを取り出した。キャベツ卵、トマトチキン、たっぷりチーズ、生クリームシフォン、などなど。シェフお手製のオードブルも並ぶ。ドリンクが配られ、兄姉はちょっとした非日常を喜んだ。両親も笑顔で、家族との
「たのしそう……」
このとき、俺は病気だから一緒にいられないのだと思っていた。病気を持っているから、うつらないために別にして扱っていたのだと。だけど違った。家族は俺を意図的に分けて、遠くに追いやり、孤立させた。心配でも必要な警戒でもなく、悪意があった。罵り、嘲り、存在否定。俺だってこんな弱い身体で生まれたくなかったし、なんなら、俺を見下す人たちのもとに生まれるなんて、場所を間違えた。でも全部どうしようもないことだ。両親だって、俺が「こんな」出来損ないだということに失望し、兄弟は「こんな」やつがいることを恥じている。だから、この家に生まれたことが間違いだったんだ。俺がいなければ、家族は家門を守り、兄弟は継いでいこうと確固たる意思を持って行動したに違いない。
やっと歩き始めた妹を抱いた使用人が門をくぐり、大事そうに母親に渡した。俺とは違い健康的で愛らしい妹は、たちまち家族の虜になった。そんな母のお腹には、また別の命が宿っていた。
「ロベルト、今日の授業はどうだったの?」
「そうですね……」
「来週試験があると聞いたぞ。練習に付き合ってやる」
「体調には気をつけてくれよ」
「ええ。必ず元気で健康な子を産みますわ」
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