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1章 いびつなこころ
16話 提案
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16話 提案
使用人が部屋を出ていき、一気に部屋の空気が冷える。ノナはうつむき、アンブラは首を傾げて私の足に抱きつく。見たことない人、久しぶりに会った人。懐かしさや喜びといったものは感じられなかった。こんなに冷たかっただろうか。こんなにも、ポジティブな感情が表情に出ないものか。色々聞きたいことはあるが、初めに口を開いたのは息子のアンブラだった。
「パパ、このひとがママなの?」
「……」
息子を目の前にして、ノナは微動だにしない。驚きの喜び――そんなものがあればいいと思ったが、なかった。ノナは本当に――。
「そうだよ。ノナはアンブラのママなんだ」
アンブラはぱあっと笑顔になり、私の足から離れ、ノナのもとへと向かった。対するノナは、見ることも抱きしめることもなく、瞬きも止める。
「ママ? ママなんだね?」
アンブラはママなのか確かめ、ノナの足にしがみつく。そこでようやく、ノナはアンブラと目を合わせる。しかし、口が半分開き、見下ろしているようにも思える。アンブラはめげずに、母への思いを口にした。
「ぼくのことおぼえてる? ぼくはね、ずっとママにあいたかった。あえてよかった……」
「……」
アンブラは目に涙をためて、泣きわめいた。それは、息子ができる最大の愛を伝える方法だった。だが、ノナは変わらず、冷たい瞳で下を見るだけ。
「アンブラに何かあったら困ると思い、会わせなかったのは私です。申し訳なく思っています。アンブラではなく、私を恨んでください」
「……」
アンブラの言葉は声にならず、抱きつくだけで精一杯。ようやく私の準備もできて、話せた。しかし、ノナだけが変わらないままで、少しずつ時間が過ぎていく。
「……」
「アンブラ、ママが動けないからこっちにおいで」
「はあい」
アンブラを呼ぶと、とことこと歩いて、今度は私の足にしがみつく。泣きじゃくったその頬は真っ赤で、目に大量の涙がたまっている。私は頭を撫で、俯いているノナを見る。
「ノナの『心の面影』を治すには、アンブラの存在が重要だと思っています」
「……」
「今日は一緒に眠ってみませんか?」
微動だにしないことが気になる――。息子に対してのリアクションも薄い。もしかしたら、ふたりきりになったときに本音をさらけ出すかもしれないが――。私の見ていないところで、手を上げられても困る。
「パパ……?」
アンブラが察して離れ、私はノナに一歩ずつ近づいた。やっと至近距離で向き合うと、左手を取ってベッドに連れて行く。その後ろについてくるアンブラ。ベッドに腰掛け、手を離した。
「アンブラが面白い本を紹介してくれました。今夜はそれを読んで寝ましょう」
使用人が部屋を出ていき、一気に部屋の空気が冷える。ノナはうつむき、アンブラは首を傾げて私の足に抱きつく。見たことない人、久しぶりに会った人。懐かしさや喜びといったものは感じられなかった。こんなに冷たかっただろうか。こんなにも、ポジティブな感情が表情に出ないものか。色々聞きたいことはあるが、初めに口を開いたのは息子のアンブラだった。
「パパ、このひとがママなの?」
「……」
息子を目の前にして、ノナは微動だにしない。驚きの喜び――そんなものがあればいいと思ったが、なかった。ノナは本当に――。
「そうだよ。ノナはアンブラのママなんだ」
アンブラはぱあっと笑顔になり、私の足から離れ、ノナのもとへと向かった。対するノナは、見ることも抱きしめることもなく、瞬きも止める。
「ママ? ママなんだね?」
アンブラはママなのか確かめ、ノナの足にしがみつく。そこでようやく、ノナはアンブラと目を合わせる。しかし、口が半分開き、見下ろしているようにも思える。アンブラはめげずに、母への思いを口にした。
「ぼくのことおぼえてる? ぼくはね、ずっとママにあいたかった。あえてよかった……」
「……」
アンブラは目に涙をためて、泣きわめいた。それは、息子ができる最大の愛を伝える方法だった。だが、ノナは変わらず、冷たい瞳で下を見るだけ。
「アンブラに何かあったら困ると思い、会わせなかったのは私です。申し訳なく思っています。アンブラではなく、私を恨んでください」
「……」
アンブラの言葉は声にならず、抱きつくだけで精一杯。ようやく私の準備もできて、話せた。しかし、ノナだけが変わらないままで、少しずつ時間が過ぎていく。
「……」
「アンブラ、ママが動けないからこっちにおいで」
「はあい」
アンブラを呼ぶと、とことこと歩いて、今度は私の足にしがみつく。泣きじゃくったその頬は真っ赤で、目に大量の涙がたまっている。私は頭を撫で、俯いているノナを見る。
「ノナの『心の面影』を治すには、アンブラの存在が重要だと思っています」
「……」
「今日は一緒に眠ってみませんか?」
微動だにしないことが気になる――。息子に対してのリアクションも薄い。もしかしたら、ふたりきりになったときに本音をさらけ出すかもしれないが――。私の見ていないところで、手を上げられても困る。
「パパ……?」
アンブラが察して離れ、私はノナに一歩ずつ近づいた。やっと至近距離で向き合うと、左手を取ってベッドに連れて行く。その後ろについてくるアンブラ。ベッドに腰掛け、手を離した。
「アンブラが面白い本を紹介してくれました。今夜はそれを読んで寝ましょう」
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