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1章 壊れた心
10話 腫れぼったい頬
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あれこれしている間に、30分も時間を使ってしまった。普段使うバス停とは違うところから、コンビニの近くまで着くものがある。むしろ悩んでよかった。適当に見繕って失望させてしまうなら、時間をかけても満足してくれるのなら、構わなかったから。
「どけよー! 邪魔! どけどけ!」
貴重品やミニメイクポーチを入れたバッグを肩にかけ、リビングに顔を出した。髪や身体を洗い終わった妹の声が耳に響く。すっかりハイになって、テレビ画面の対戦ゲームに夢中だ。なんでも、妹は2年前から、リアリティーのある人を倒すゲームが好きらしい。撃って当たった瞬間が快感だとか。ネットワークを用いてマルチプレイ可。このゲームに出会ってから、毎日時間さえあればプレイしている。やり込み度の高さ、報酬の多さ、ランキングの掲示により妹は盛り上がる。ただし、それは絶好調のみを指す。反対……つまり絶不調であれば、平気で暴言を吐くし、コントローラーを投げたりテレビを叩いたりする。あまりの凶暴性に私は頭を抱えているけど、ゲームしなければ妹はスマホばかり見て、もう手が付けられないらしい。両親は、特に何も言わない。
「私が通ってんだから退けよ! 空気読め!」
母がバスルームにいて、父は娘の暴言や大音量戦闘シーンに動じず、新聞を読んでいる。さすがとしかいいようがない。煩わしさをまとわない父と目が合い、私は笑顔で返した。
「行ってきます」
「どこに行くんだ?」
「彼に会いに行くよ」
「そうか。気をつけて」
「うん」
短い会話をして終わり。父はすぐに興味をなくし、読みかけの新聞を目で追う。丁寧なことに、指を添えたところから読み始めた。私は玄関で平べったい冬用の靴を履き、なるべく音を立てないよう家から出た。
22時。ようやく、コンビニに着いた。1時間以上待たせてしまったけど、本当にこれで良いのだろうか。あと2時間で今日が終わり、月はさらに空を動いていくだろう。そうとわかっていても、会いたいという気持ちは本物だった。それは、彼も同じはず……。
「遅い」
「……!」
そう信じていたけど、甘い考えは簡単に打ち砕かれた。彼はコンビニから出てきて、私を路地に引きずり、腕を離した。そして、思い切り頬を引っ叩いた。乾いた音がして、少しずつ痛みが増し腫れていくのがわかる。衝撃でよろめきそうになりながらも耐え、両足に力を入れた。
「何してたんだ今まで。俺は、お前がどこにいるかなんてすぐわかる。俺より優先するべきことってなんだ?」
「ごめんなさい……」
「言い訳はやめろ! さっさと謝れよ!」
「どけよー! 邪魔! どけどけ!」
貴重品やミニメイクポーチを入れたバッグを肩にかけ、リビングに顔を出した。髪や身体を洗い終わった妹の声が耳に響く。すっかりハイになって、テレビ画面の対戦ゲームに夢中だ。なんでも、妹は2年前から、リアリティーのある人を倒すゲームが好きらしい。撃って当たった瞬間が快感だとか。ネットワークを用いてマルチプレイ可。このゲームに出会ってから、毎日時間さえあればプレイしている。やり込み度の高さ、報酬の多さ、ランキングの掲示により妹は盛り上がる。ただし、それは絶好調のみを指す。反対……つまり絶不調であれば、平気で暴言を吐くし、コントローラーを投げたりテレビを叩いたりする。あまりの凶暴性に私は頭を抱えているけど、ゲームしなければ妹はスマホばかり見て、もう手が付けられないらしい。両親は、特に何も言わない。
「私が通ってんだから退けよ! 空気読め!」
母がバスルームにいて、父は娘の暴言や大音量戦闘シーンに動じず、新聞を読んでいる。さすがとしかいいようがない。煩わしさをまとわない父と目が合い、私は笑顔で返した。
「行ってきます」
「どこに行くんだ?」
「彼に会いに行くよ」
「そうか。気をつけて」
「うん」
短い会話をして終わり。父はすぐに興味をなくし、読みかけの新聞を目で追う。丁寧なことに、指を添えたところから読み始めた。私は玄関で平べったい冬用の靴を履き、なるべく音を立てないよう家から出た。
22時。ようやく、コンビニに着いた。1時間以上待たせてしまったけど、本当にこれで良いのだろうか。あと2時間で今日が終わり、月はさらに空を動いていくだろう。そうとわかっていても、会いたいという気持ちは本物だった。それは、彼も同じはず……。
「遅い」
「……!」
そう信じていたけど、甘い考えは簡単に打ち砕かれた。彼はコンビニから出てきて、私を路地に引きずり、腕を離した。そして、思い切り頬を引っ叩いた。乾いた音がして、少しずつ痛みが増し腫れていくのがわかる。衝撃でよろめきそうになりながらも耐え、両足に力を入れた。
「何してたんだ今まで。俺は、お前がどこにいるかなんてすぐわかる。俺より優先するべきことってなんだ?」
「ごめんなさい……」
「言い訳はやめろ! さっさと謝れよ!」
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