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1章 壊れた心
21話 冷たい瞳
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「……」
彼の表情が少しだけ軽くなった。ほぼ無で、今は呑気に鼻歌を歌っている。落ち着いた書店から、騒がしいゲームセンターへ移動した。道沿いにクレーンゲーム、奥に行くとゲーム機が設置されている。ゲームセンター付近は特に音が気になるけど、進めば進むほど大きくなっていく。彼はそれが好きみたいだけど、私は……。
「そろそろ欲しいものが入ってる気がするんだけど」
書店や他の店よりも明らかに人が多い。デイケアから帰ってきた幼い子や、ESの子、同年代のティーン、大人。幅広い層の男女が狭い空間に集まっている。
「よっし、これやろ!」
彼は目を輝かせ、次々とメダルゲームのためのお金を機械につぎ込んだ。最初は硬貨5枚だったけど、10枚、お札1枚、3枚、5枚、と次々に増えていく。さっき、私が使ったお金の倍以上が吸い込まれた。さすがに怖くなってきて、自分のことのように冷や汗が垂れる。途中から……彼の目が赤く充血し、狂気にまみれた笑みを浮かべていたことが気がかりだった。
「……ゲーム、好きなんだね」
特にここでやることもなく、彼の隣に座ってゲーム画面を見ていた。彼の意識もここにある。だから、今は……。違う。彼が好きなものだから……私はそれを受け入れないと。
「入れって言ってんだろ! おい! 金返せよ!」
彼は、乱暴にメダル投入口を動かして叫んだ。耳を劈くような声だったけど、周囲のゲーム音がもっと鋭くて、不思議と気にならなかった。
「……楽しいね」
「当たれ! 当たれ! 早くしろ! ……はぁ!? なんでそこにいくんだよ!」
声や手つきがさらに荒くなる。バン、と台を強く叩く音に思わず耳を塞いだ。まるで、自分が「そう」されたようだったから。右頬を触っても痛くない。鏡を取り出したけど違和感なし。
「大丈夫だよ。次はうまくいくよ」
彼から「良くない気」を感じる。あの夜とは違う不気味な怖さ。まるで悪いものに取り憑かれてしまったよう。今は、怒りに振り回されて乱暴な言動をするだけ。ただ、その気持ちを落ち着かせたかっただけなのに。
「はぁ?」
「……」
彼のモスグリーンの瞳が私を捉えた途端、言葉が出なくなって唇をきゅっと結んだ。目を瞑って縮こまる。……息を止めて。首に手を伸ばして……。
「なんでお前が口出しするわけ? やったこともないくせに? 金も出してないのに?」
「……!」
右腕をつかまれて180度以上回される。抵抗という言葉は思いつかず、騒音の中、ボキボキと骨が折れるような音が聞こえた。
「……はぁ、はぁ……」
息が乱れて早くなる。真冬なのに緊張の汗が額から流れ、私たちが座っていた椅子の上に落ちた。
「もういいよ。さっさと腹満たして帰ろ」
「……」
彼の手が離され、ようやく目を開けられる。でも、彼がどんな表情をしているのかなんて、正確に理解できなかった。
彼の表情が少しだけ軽くなった。ほぼ無で、今は呑気に鼻歌を歌っている。落ち着いた書店から、騒がしいゲームセンターへ移動した。道沿いにクレーンゲーム、奥に行くとゲーム機が設置されている。ゲームセンター付近は特に音が気になるけど、進めば進むほど大きくなっていく。彼はそれが好きみたいだけど、私は……。
「そろそろ欲しいものが入ってる気がするんだけど」
書店や他の店よりも明らかに人が多い。デイケアから帰ってきた幼い子や、ESの子、同年代のティーン、大人。幅広い層の男女が狭い空間に集まっている。
「よっし、これやろ!」
彼は目を輝かせ、次々とメダルゲームのためのお金を機械につぎ込んだ。最初は硬貨5枚だったけど、10枚、お札1枚、3枚、5枚、と次々に増えていく。さっき、私が使ったお金の倍以上が吸い込まれた。さすがに怖くなってきて、自分のことのように冷や汗が垂れる。途中から……彼の目が赤く充血し、狂気にまみれた笑みを浮かべていたことが気がかりだった。
「……ゲーム、好きなんだね」
特にここでやることもなく、彼の隣に座ってゲーム画面を見ていた。彼の意識もここにある。だから、今は……。違う。彼が好きなものだから……私はそれを受け入れないと。
「入れって言ってんだろ! おい! 金返せよ!」
彼は、乱暴にメダル投入口を動かして叫んだ。耳を劈くような声だったけど、周囲のゲーム音がもっと鋭くて、不思議と気にならなかった。
「……楽しいね」
「当たれ! 当たれ! 早くしろ! ……はぁ!? なんでそこにいくんだよ!」
声や手つきがさらに荒くなる。バン、と台を強く叩く音に思わず耳を塞いだ。まるで、自分が「そう」されたようだったから。右頬を触っても痛くない。鏡を取り出したけど違和感なし。
「大丈夫だよ。次はうまくいくよ」
彼から「良くない気」を感じる。あの夜とは違う不気味な怖さ。まるで悪いものに取り憑かれてしまったよう。今は、怒りに振り回されて乱暴な言動をするだけ。ただ、その気持ちを落ち着かせたかっただけなのに。
「はぁ?」
「……」
彼のモスグリーンの瞳が私を捉えた途端、言葉が出なくなって唇をきゅっと結んだ。目を瞑って縮こまる。……息を止めて。首に手を伸ばして……。
「なんでお前が口出しするわけ? やったこともないくせに? 金も出してないのに?」
「……!」
右腕をつかまれて180度以上回される。抵抗という言葉は思いつかず、騒音の中、ボキボキと骨が折れるような音が聞こえた。
「……はぁ、はぁ……」
息が乱れて早くなる。真冬なのに緊張の汗が額から流れ、私たちが座っていた椅子の上に落ちた。
「もういいよ。さっさと腹満たして帰ろ」
「……」
彼の手が離され、ようやく目を開けられる。でも、彼がどんな表情をしているのかなんて、正確に理解できなかった。
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