ごめんね、足りなかったよね。

fireworks

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1章 壊れた心

24話 やっと見つけた

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 さっきから、私の後ろにだれかがぴたりとついてきている。それも4、5人。私が歩く速度に合わせて、一定の距離を保っている。けれど、それがいつ破られるかわからない。なるべく人や車通りの多い道を通ろうと意識し、バクバクと動く息を抑えて。
「……」
 地を這うような低い声。……同年代の男性だ。本当は聞きたくなかったけど、耳に入ってしまって複雑な気持ち。止まれば彼らの餌食になりそうで止まれない。どこを目指すわけでもなく、心を無にして、寒さを感じないようにして。
「……おい」
「だれだお前!」
「お前らこんなとこで何してる?」
「どけ!」
 突然の乱闘。だれかが彼らに話しかけたみたい。彼らは私への興味を一時的になくし、だれかとの間にバチバチの火の粉を散らす。ボコ、バキ、と骨が折れるような音がして耳を塞いだ。でも、私は構わず歩き続けた。音や気配が遠ざかり、ふうと息を吐く。ようやく顔を上げられたけど……見慣れない景色が広がって、ここがどこか分からなくなってしまった。地図を開こうと、ポケットからスマホを出して電源を入れようとする。……も、震えた手では画面に触れられず滑り落ちてしまった。
「……あ」
 慌てて雪の上のスマホを拾い、電源を入れる。だけど、パスワードが打てない。最初は手だけの震えが、顎や両足にも広がってまともに立っていられなくなった。どうしよう。もし、彼らが追いかけてきたら……。彼と同じように……。
「どうしたの」
「……!」
 屈んだとき、私の背後に背の高い巨人が立っていた。見下ろされて背筋が冷たくなる。ゆっくりと瞬きをして、情けなく口を開いた。ひとりの男性だ。そして、さっき彼らに声をかけた人と同じ……。暗くてよくわからなかったけど、あの人で間違いなさそうだ。
「……あ。驚かせてごめんね。俺はオーレリアン・ヴェントルだけど……。変な輩が追っかけていたから、俺がボコボコにした。で、ローレンティアを探してたんだ」
「私を?」
「うん。夜中、両手に大量の荷物を抱えて、女の子ひとりで歩くなんて危ないでしょ」
「……そうなの?」
 まさか、こんなところでオーレリアンと出会うなんて。彼はいつも通り。アイシャドウを塗ってアイライナーを引き、奇抜なピアスやネックレスを着けている。コート、マフラー、手袋で防寒バッチリ。
「帰ろうか。送っていくよ。近くまで」
 不思議なことに、身体の震えは徐々におさまっていった。息がしやすくなって、胸に手を当てる。オーレリアンが右手を差し出し、うずくまっていた私は少し迷ったけど握った。
「持つよ」
 彼の目が両手の袋をとらえた。
「……いいえ。大丈夫。助けてくれてありがとう」
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