104 / 107
2章 殺してしまいたい
104話 お願い
しおりを挟む※103話でタヴィアンはアンナに渡された薬を飲みました。タヴィアンは薬物中毒で幻覚や幻聴に悩まされています。ただ、アンナにお熱で気にしていません。ところで、アンナはだれかを狙って苦しめる計画を企てているようです。
「おはよう」
「おはよう……」
あの不気味なふたりのことなんか知らない私は、オーレリアンのことをずっと考えていた。
私は彼にとってどういう存在なのか、私が彼をどう思っているのか。気にしないようにしていた疑問が一気に浮上して、恥ずかしさがこみ上げる。昔抱いていた感情に似ているようで、まったくの別物。不思議なことに、抵抗はなく受け入れてしまいそうで怖い。
友達と言っていたけど、本当にそうかな? それだけなのかな?
「日中は昨日より暖かいんだって。雪だるま作ろうよ!」
「アハハ……ソウダネ」
「え、もしかして嫌?」
「そうじゃないけど、そうだっていうか」
「?」
微妙な噂が流れてから、友達と過ごす時間が減った。その分、オーレリアンといる時間が増える。話すことにも慣れ、隣の席に(オーレリアンが)座ることが多くなった。もともと座席は決まっていなかったから、自由なのだけど。それにしても、1日の大半、話してばっかりだ。授業は聞いているけど、問題を解く時間、休み時間はずっと。
「そうだ。あのね」
オーレリアンが何か言おうとしたら、先にベルが鳴ってしまった。数学演習の先生が前に立ち、威厳ある声で呼びかける。
「今日はプレテストですよ。早く席に着きなさい」
「プレテストだって。集中したいから話しかけないでね」
「うん。わかったよ」
返事だけはいいな……。
ランチは、パン、ほんの少しだけのシチュー、サラダ、スープ。食べる量が増えたし、過度な運動をしない限り戻さなくなった。おかげで喉はすっきり。あんなに苦いもの、毎日毎食繰り返していたと思うと恐ろしい。今は、食事の時間が楽しいと思える。味覚も戻ってきたし。わかりやすいのは辛味や塩っけ、よく感じるのは旨味と甘味。体重は……家に帰ったら測ろう。
「うん。美味しい!」
「本当によく食べるようになったね。それも美味しそうに」
向かいに座るオーレリアンと話しながら食べる。それだけで嬉しかった。
昼休み、本当に校庭に出て雪だるまを作ることになった。寒いからコートを羽織り、そのほか防寒具をつけて雪を丸める。生徒もちらほらいて、雪合戦したり遊んだりと楽しそう。当然、雪だるまを作る人たちもいる。時間が限られているから、なるべく早く制作に取りかかった。
「これでどう?」
「うん。いいね」
「よし、今度は……」
10分くらい経って完成! 仕上げに、頭の上へ帽子をかぶせた。……可愛い顔。よくできた! オーレリアンのおかげで。
「いいじゃん」
「やっとできた!」
「そうだね? あ、ところでお願いがあって」
「お願い?」
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる