9 / 50
9話 視える
しおりを挟む
9話 視える
あれ。確かに力を入れたはずなのに、弾が出ない。カチカチと頼りない音が響くだけだ。
「どういうこと?」
「……弾切れだね」
「……」
仕組まれてた? それにしては出来レースだ。ここまで見越していた? 弾を抜かれた? 銃をすり替えられた? わからないけど、でも……。
「辛かったね。追いかけてごめん」
フィディリスは階段を上って、私の右手を取り、目を閉じる。私は、またしても死ねなかった衝撃で崩れ落ちてしまう。緊張で力が抜ける。倒れる前にフィディリスが支えたから、驚いて顔を上げた。
「あの人に会った?」
「あの人?」
「うん。死神みたいな、真っ黒のやつ」
「会ったよ。よく、わからなかったけど」
フィディリスは左手も握る。
「それならよかった。能力は使った?」
「……まあ、1回だけ」
「説明された?」
「少しだけ」
何言ってるか、わからなかったけど。
「なら話が早いね。ルミナスの能力は、この手が鍵なんだ。そこから情報を得たり、記憶を探ったり、他者に伝えたりできる」
「そう、言われたけど」
「俺が何を思ってるか、わかる?」
フィディリスは手を離し、そのあとすぐに手のひらを合わせる。握られて驚いたけど、ものは試しというからやってみる。目を閉じて、流れてくるものを掴んで――。
何か、視える気がする。目に見えるものではないけど、頭に浮かんでくる。これはフィディリスの感情? 安心、っていう感じがする。安心? なんで?
「視えた?」
「……安心してるの?」
「そうだね、そのとおりだよ」
よく知らない相手に、私の表情はコロコロと変わっている。
「え……そうだったの」
「うん。本当だよ」
「あ、でも……。もう戻らなきゃ。ほら、授業始まるでしょ」
――確実に触れられる距離で、近い。
「じゃあ一緒に行こう」
「ひとりでいいわ」
「ううん。行こう」
「わかった」
無理矢理手を離して階段を降りる。後ろからついてきている気がするけど、もう考えないようにしないと……。
案の定、授業に遅刻した。クラスメートや先生からの冷ややかな視線を浴びて席に着き、ノートを開いた。けど、授業内容の半分がすでに終わっていて、ワークのページも進んでいた。その後の授業はさっぱりわからなくて、諦め、気づいたら終わりの合図のチャイムが鳴った。
さっき、フィディリスの感情が視えたのは、どうしてなんだろう。もしかしたら、自分の感情は自分で理解しろということなのかも。
『人やものに触れると、自分の想いをだれかに伝えたり、想いを受け取ったりできる。目に見えない情報もインプットできるよ』
人でなく、ものも対象なら、もしかしたら――。
半信半疑でホワイトボードを触ってみる。すると、見たことのない情報が画面に出てきた。左上にデジタル時計、中央もホワイトボードがホログラムのように水色に光っている。時計は現在の時間だけど、ここをずらせば、授業開始すぐの情報が見られるかもしれない。……その予想は当たりで、時間を巻き戻していくと数字や文字が本物のようにホワイトボードに表れた。書いたり消したりを繰り返し、時間を合わせると……。
「出てきた」
あとはこれをメモすれば、巻き返せるかも……。
あれ。確かに力を入れたはずなのに、弾が出ない。カチカチと頼りない音が響くだけだ。
「どういうこと?」
「……弾切れだね」
「……」
仕組まれてた? それにしては出来レースだ。ここまで見越していた? 弾を抜かれた? 銃をすり替えられた? わからないけど、でも……。
「辛かったね。追いかけてごめん」
フィディリスは階段を上って、私の右手を取り、目を閉じる。私は、またしても死ねなかった衝撃で崩れ落ちてしまう。緊張で力が抜ける。倒れる前にフィディリスが支えたから、驚いて顔を上げた。
「あの人に会った?」
「あの人?」
「うん。死神みたいな、真っ黒のやつ」
「会ったよ。よく、わからなかったけど」
フィディリスは左手も握る。
「それならよかった。能力は使った?」
「……まあ、1回だけ」
「説明された?」
「少しだけ」
何言ってるか、わからなかったけど。
「なら話が早いね。ルミナスの能力は、この手が鍵なんだ。そこから情報を得たり、記憶を探ったり、他者に伝えたりできる」
「そう、言われたけど」
「俺が何を思ってるか、わかる?」
フィディリスは手を離し、そのあとすぐに手のひらを合わせる。握られて驚いたけど、ものは試しというからやってみる。目を閉じて、流れてくるものを掴んで――。
何か、視える気がする。目に見えるものではないけど、頭に浮かんでくる。これはフィディリスの感情? 安心、っていう感じがする。安心? なんで?
「視えた?」
「……安心してるの?」
「そうだね、そのとおりだよ」
よく知らない相手に、私の表情はコロコロと変わっている。
「え……そうだったの」
「うん。本当だよ」
「あ、でも……。もう戻らなきゃ。ほら、授業始まるでしょ」
――確実に触れられる距離で、近い。
「じゃあ一緒に行こう」
「ひとりでいいわ」
「ううん。行こう」
「わかった」
無理矢理手を離して階段を降りる。後ろからついてきている気がするけど、もう考えないようにしないと……。
案の定、授業に遅刻した。クラスメートや先生からの冷ややかな視線を浴びて席に着き、ノートを開いた。けど、授業内容の半分がすでに終わっていて、ワークのページも進んでいた。その後の授業はさっぱりわからなくて、諦め、気づいたら終わりの合図のチャイムが鳴った。
さっき、フィディリスの感情が視えたのは、どうしてなんだろう。もしかしたら、自分の感情は自分で理解しろということなのかも。
『人やものに触れると、自分の想いをだれかに伝えたり、想いを受け取ったりできる。目に見えない情報もインプットできるよ』
人でなく、ものも対象なら、もしかしたら――。
半信半疑でホワイトボードを触ってみる。すると、見たことのない情報が画面に出てきた。左上にデジタル時計、中央もホワイトボードがホログラムのように水色に光っている。時計は現在の時間だけど、ここをずらせば、授業開始すぐの情報が見られるかもしれない。……その予想は当たりで、時間を巻き戻していくと数字や文字が本物のようにホワイトボードに表れた。書いたり消したりを繰り返し、時間を合わせると……。
「出てきた」
あとはこれをメモすれば、巻き返せるかも……。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!
弥生 真由
恋愛
何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった!
せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!
……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです!
※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる