触れたいのに届かなくて

fireworks

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9話 視える

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9話 視える
 あれ。確かに力を入れたはずなのに、弾が出ない。カチカチと頼りない音が響くだけだ。
「どういうこと?」
「……弾切れだね」
「……」
 仕組まれてた? それにしては出来レースだ。ここまで見越していた? 弾を抜かれた? 銃をすり替えられた? わからないけど、でも……。
「辛かったね。追いかけてごめん」
 フィディリスは階段を上って、私の右手を取り、目を閉じる。私は、またしても死ねなかった衝撃で崩れ落ちてしまう。緊張で力が抜ける。倒れる前にフィディリスが支えたから、驚いて顔を上げた。
「あの人に会った?」
「あの人?」
「うん。死神みたいな、真っ黒のやつ」
「会ったよ。よく、わからなかったけど」
 フィディリスは左手も握る。
「それならよかった。能力は使った?」
「……まあ、1回だけ」
「説明された?」
「少しだけ」
 何言ってるか、わからなかったけど。
「なら話が早いね。ルミナスの能力は、この手が鍵なんだ。そこから情報を得たり、記憶を探ったり、他者に伝えたりできる」
「そう、言われたけど」
「俺が何を思ってるか、わかる?」
 フィディリスは手を離し、そのあとすぐに手のひらを合わせる。握られて驚いたけど、ものは試しというからやってみる。目を閉じて、流れてくるものを掴んで――。
 何か、視える気がする。目に見えるものではないけど、頭に浮かんでくる。これはフィディリスの感情? 安心、っていう感じがする。安心? なんで?
「視えた?」
「……安心してるの?」
「そうだね、そのとおりだよ」
 よく知らない相手に、私の表情はコロコロと変わっている。
「え……そうだったの」
「うん。本当だよ」
「あ、でも……。もう戻らなきゃ。ほら、授業始まるでしょ」
 ――確実に触れられる距離で、近い。
「じゃあ一緒に行こう」
「ひとりでいいわ」
「ううん。行こう」
「わかった」
 無理矢理手を離して階段を降りる。後ろからついてきている気がするけど、もう考えないようにしないと……。

 案の定、授業に遅刻した。クラスメートや先生からの冷ややかな視線を浴びて席に着き、ノートを開いた。けど、授業内容の半分がすでに終わっていて、ワークのページも進んでいた。その後の授業はさっぱりわからなくて、諦め、気づいたら終わりの合図のチャイムが鳴った。
 さっき、フィディリスの感情が視えたのは、どうしてなんだろう。もしかしたら、自分の感情は自分で理解しろということなのかも。

『人やものに触れると、自分の想いをだれかに伝えたり、想いを受け取ったりできる。目に見えない情報もインプットできるよ』

 人でなく、ものも対象なら、もしかしたら――。
 半信半疑でホワイトボードを触ってみる。すると、見たことのない情報が画面に出てきた。左上にデジタル時計、中央もホワイトボードがホログラムのように水色に光っている。時計は現在の時間だけど、ここをずらせば、授業開始すぐの情報が見られるかもしれない。……その予想は当たりで、時間を巻き戻していくと数字や文字が本物のようにホワイトボードに表れた。書いたり消したりを繰り返し、時間を合わせると……。
「出てきた」
 あとはこれをメモすれば、巻き返せるかも……。
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