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15話 鳴りやまない電話
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15話 鳴りやまない電話
22時――アルベール家
家に帰ってもやることは同じ。可能な限り勉強してやり方を覚えないと。後悔することはないし、むしろプラスに考えよう。
簡単にいい成績はとれない。それ相応の努力と時間が必要だ。2週間しかとれなかったけどないよりましなはず。兄の声や弟の笑顔はつらかったけど、ようやくここまで来た。あとは……何をしよう。やるべきことは多くあるのに、今の私じゃ処理しきれない。
試験前ということで、両親の目はより厳しいものになった。規制を敷かれることはないけど、何を言われるかわからず怯えている。また傷口から出血するかもしれないし、下手すれば止まらないかもしれない。いつまで同じことを繰り返すのだろう。何度も、何度も。
両親の帰宅後、ふたりは私に対して小言を吐く。どんな小さなものでも構わない、私をサンドバックだと思っているのだろうか。言い返さない、都合の良い駒になっているのだろうか。
「お前は本当に何もかもやらないな。ひどい有様だ」
「馬鹿を治す薬はないと言うわ。兄を見習ってもできないというのだから、出来損ないね」
「まったく……」
「どうしてこんな子に育ったのでしょう?」
「私たちはできることをしたからな。何もしないお前のせいだろう」
……知ってる。知ってるよ。そして、あなたたちが次に何を言うのか、少しずつわかってきた。
叱責されたあとは、決まって、カッターやナイフを持って刺したり傷つけたりした。気持ちよかった。両親は多分、私が何をしても文句を言うだろうから、ひとりのときくらい、自分がしたいことをしたかった。勉強する手も止まってしまい、気づけば、肌がボロボロになっている。夏は終わったから、服で隠せばいいだけ。最初は1本の真っ直ぐな線の上を歩いていたのに、ねじ曲げられ、鋏で切られ、いつしか歩けなくなってしまった。試験が近づいているというのに、振り出しに戻ってしまったようだ。
今日もまたナイフを持って夢中で刺す。染み込む音、抉れる音、溢れる血。もはや愛おしくてたまらない。少しだけ生きた心地がする。心は、もうずっと死んでいるのに。
暗闇の中、真っ赤に滴る血と、鳴りやまない電話の音。今が何時か忘れたころ、大音量で流れ始めた。不意に、集中の糸が切れてうるさいと感じたころ、ようやく取る気になった。
『はい』
『ルミナス?』
やたらとしつこいクラスメート、フィディリスだ。電話番号を登録したとき、「うるさい人」と名付けた。いつもすぐに切れるのだけど、夜に限ってずっと鳴らしてくるから。
『何』
『今何してるのか気になって』
特別な道具はないから、こちらの様子は知られていないはず。ナイフを持って血だらけでいるなんて、わからない。なら、しらばっくれよう。
『勉強してるの。集中したいからかけないで。おやすみ』
『邪魔してごめんね。じゃあ』
ぷつりと音が切れる。
何がしたいんだろう、この人。
22時――アルベール家
家に帰ってもやることは同じ。可能な限り勉強してやり方を覚えないと。後悔することはないし、むしろプラスに考えよう。
簡単にいい成績はとれない。それ相応の努力と時間が必要だ。2週間しかとれなかったけどないよりましなはず。兄の声や弟の笑顔はつらかったけど、ようやくここまで来た。あとは……何をしよう。やるべきことは多くあるのに、今の私じゃ処理しきれない。
試験前ということで、両親の目はより厳しいものになった。規制を敷かれることはないけど、何を言われるかわからず怯えている。また傷口から出血するかもしれないし、下手すれば止まらないかもしれない。いつまで同じことを繰り返すのだろう。何度も、何度も。
両親の帰宅後、ふたりは私に対して小言を吐く。どんな小さなものでも構わない、私をサンドバックだと思っているのだろうか。言い返さない、都合の良い駒になっているのだろうか。
「お前は本当に何もかもやらないな。ひどい有様だ」
「馬鹿を治す薬はないと言うわ。兄を見習ってもできないというのだから、出来損ないね」
「まったく……」
「どうしてこんな子に育ったのでしょう?」
「私たちはできることをしたからな。何もしないお前のせいだろう」
……知ってる。知ってるよ。そして、あなたたちが次に何を言うのか、少しずつわかってきた。
叱責されたあとは、決まって、カッターやナイフを持って刺したり傷つけたりした。気持ちよかった。両親は多分、私が何をしても文句を言うだろうから、ひとりのときくらい、自分がしたいことをしたかった。勉強する手も止まってしまい、気づけば、肌がボロボロになっている。夏は終わったから、服で隠せばいいだけ。最初は1本の真っ直ぐな線の上を歩いていたのに、ねじ曲げられ、鋏で切られ、いつしか歩けなくなってしまった。試験が近づいているというのに、振り出しに戻ってしまったようだ。
今日もまたナイフを持って夢中で刺す。染み込む音、抉れる音、溢れる血。もはや愛おしくてたまらない。少しだけ生きた心地がする。心は、もうずっと死んでいるのに。
暗闇の中、真っ赤に滴る血と、鳴りやまない電話の音。今が何時か忘れたころ、大音量で流れ始めた。不意に、集中の糸が切れてうるさいと感じたころ、ようやく取る気になった。
『はい』
『ルミナス?』
やたらとしつこいクラスメート、フィディリスだ。電話番号を登録したとき、「うるさい人」と名付けた。いつもすぐに切れるのだけど、夜に限ってずっと鳴らしてくるから。
『何』
『今何してるのか気になって』
特別な道具はないから、こちらの様子は知られていないはず。ナイフを持って血だらけでいるなんて、わからない。なら、しらばっくれよう。
『勉強してるの。集中したいからかけないで。おやすみ』
『邪魔してごめんね。じゃあ』
ぷつりと音が切れる。
何がしたいんだろう、この人。
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