「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

lilgrave

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第281章 撮影開始

第281章 撮影開始

他の四人のゲストは、商陸(しょうりく)の驚きの意味こそ分からなかったが、
自分たちにもその符が使えると聞いて、全員が一気に興奮した。

特に顧京墨(グ・ジンモク)たちは、目を輝かせていた。

彼らはもともとこの番組では「話題性担当」であり、
これまでの回では任務には参加しても、
実際に“悪霊退治”のような実戦は見ているだけだった。

多少の風水・道術の知識は仕入れたものの、
“実戦体験”はゼロ。

だからこそ、今回初めて「使える」と聞き、胸が高鳴っていた。

周察察(チョウ・チャチャ)はとりわけ張り切って、
符を手に取りながら訊ねた。

「栩栩(シュシュ)、この符ってどうやって使うの?
 投げるときは、あなたみたいに指で挟んでこうやって? ね? こうでしょ?」

言いながら、両指で符を挟み“シュッ”と投げるジェスチャーまで再現。

顧京墨や盧有瑜(ルー・ヨウユー)も、
彼女ほど積極的ではないものの、
鏡を見ながら「どの角度で投げたら一番映えるか」をそれぞれ研究していた。

全員が俳優。
特に時代劇や仙侠ドラマの撮影経験がある彼らは、
“術を放つポーズ”を心得ているのだ。

霊真真(リン・シンシン)も符の詳しい効果こそ分からなかったが、
商陸の反応を見れば、それが相当な代物だと察した。

胸の奥で高鳴る興奮を必死に押さえ、
あえて平然を装う。

姜栩栩(ジャン・シュシュ)は、皆がやる気満々で
もはや“大鬼”の話を忘れかけているのを見て、
少し苦笑しながらも真剣に符の使い方を説明した。

そして、符を使う際に唱える短い**口訣(こうけつ/呪文)**を教え、
何度か復唱させた。

ライブ配信の視聴者たちも、コメント欄で一緒に唱え始める。
符が手元になくても、背後で同じ呪文を口にするだけで楽しいのだ。

――ライブとは、“一体感”が命。

中には前回、謝雲里(シエ・ユンリ)から習った**金光呪(きんこうじゅ)**を復習している視聴者もいた。
「もう完璧に覚えた。あとはいつ幽霊が出てくるか待つだけ!」
なんて冗談も流れていた。

一方、休憩室で呪文練習をしている間に、監督の許(シュ)氏がやって来た。

許監督は四十代半ば、いかにも疲れ切った表情の中年男性だった。
劇組で続く怪異騒ぎに振り回され、
肩の力が抜けているのが見て取れる。

「事情は小魚(ルー・ヨウユー)から聞いたと思うが……
 今回は君たちに頼るしかない。本当に助かる。
 もし問題が解決したら、俺から一生の恩を返すよ。」

その言葉は、業界でそれなりの地位を持つ許監督が、
“絶対に約束を守る”という重みを持っていた。

姜栩栩は、これまでの経緯と自分の推測を簡潔に説明した。
彼らがエキストラ(群演)として撮影に参加するのは、
単なる番組演出に見えて、実は“大鬼を誘い出す”には最適な方法だったのだ。

「これまで怪異が起きたのは“虐げられる役”の場面だった。
 だから今回も、その系統のシーンを撮るつもりなんだが……問題ないか?」

許監督の視線は、自然と姜栩栩に向けられた。

コラボを決める前に彼は《霊感》の過去回を見ており、
この番組の“本当の主導者”が、目の前の少女だと知っていた。

軽視しているわけではない。
ただ、もし本当に“大鬼”を呼び出してしまったら、
この子でも制御できるのか――それが心配だった。

何しろこの出演陣は、今や番組の顔であり、
一人でも怪我すれば番組は終わる。

姜栩栩が「大丈夫です」と言おうとした瞬間、
隣の周察察が勢いよく口を挟んだ。

「栩栩がいるなら、心配いりませんって!
 それに、その“問題”ってやつは――」

彼女はわざと間を取り、周囲の三人をチラリと見る。

そして四人が声を揃えた。

「問題ない(モンダイナイ)。」

姜栩栩の決まり文句だった。

台詞を先取りされても、彼女は微笑んでうなずく。
「……うん、そういうこと。」

許監督はその一言で、ようやく胸を撫で下ろした。

「よし、じゃあメイク部、準備を始めて!」

彼は手を叩き、指示を飛ばす。

――“群演”とはいえ、
このメンバーを日給3万円のエキストラ扱いにするなんて、
そんな“暴挙”を許すはずがない。

顧京墨、周察察の知名度は言うまでもなく、
姜栩栩自身も美しいルックスの持ち主。

もし今回の撮影が成功し、ドラマが放送されれば、
それが彼女の“スクリーンデビュー”になる。

だからこそ許監督は、
「どうせなら最高に映える登場にしよう」と、
脚本家を呼び戻し、ひそかに脚本を書き直した。

――“登場わずか5秒で視聴者を虜にする、謎の悪役”。

彼は密かにワクワクしていた。



番組スタッフも視聴者も、“大鬼”騒ぎなど誰も気にしていない。
むしろ、これから始まる“撮影配信”を楽しみにしていた。

本来なら、新作ドラマの衣装や造形を配信で見せるのはタブーだが、
今回はもはやそんなことを気にしている余裕はない。

それでも、監督の陳氏は少し遊び心を出し、
造形完成の直前でカメラを切り替え、
視聴者にはスタッフが準備する映像だけを流した。

――結果、コメント欄は大荒れ。

【ちょっと!うちの推しを隠すな!】
【早く見せて!早く!!】
【誰が一番映えるか賭けようぜ】

そして一時間後、
ついに《盛世芳華》の撮影現場が映し出された。

最初のシーンは、
“公主・察”を演じる周察察と、
その護衛“真”と“商”の登場から始まった。

物語の設定はこうだ――
女主・盧有瑜が宮中に入った際、
婚姻を強制され鬱屈する“わがまま姫”に遭遇する。

姫は不機嫌を紛らわすため、目に入る者すべてに八つ当たり。

そして、周察察らしい“怒りのぶつけ方”が始まる。

「なぜ彼女が花を剪っているの?
 まるで私を“切り捨てられた花”に例えてるみたいじゃない!
 ……もう見たくない! みんな、私をいじめてるのね……」

泣き真似をしたかと思えば、次の瞬間、
冷たく指を伸ばして命じた。

「お前たち二人。あの娘を木にぶつけなさい。」

護衛・真と護衛・商は無表情のまま命令に従い、
泣き叫ぶ小宮女を両脇から抱え上げ、木の幹へ。

ドン――。

一度では気絶しない。

もう一度。
血が額を染めても、まだ意識がある。

ならば、もう一度。

その時、盧有瑜が駆け寄ってきた。

「公主。公主は飛絲(ひし)技法を扱える繍娘を探しているとか。
 臣女(しんじょ)は一人、心当たりがございます。」

そう言っても、護衛の動きは止まらない。

公主察は涙を拭いながら問いかける。
「……本当?」

盧有瑜が答えようとしたその瞬間――

「どうせ嘘でしょう?
 あの娘を助けるために、話を逸らしてるだけ。
 頭はいいけど、そういう誤魔化し、嫌いなの。」

またも涙を流し、悲嘆に暮れるように言葉を続けた。

「まだ嫁ぎもしていないのに、
 臣下の娘にまで馬鹿にされるなんて……私の立場も地に落ちたわね……
 うう……あなたも、私をいじめるのね。」

「公主、臣女にはそんなつもりは――」

「“つもり”なんて聞いてないわ。
 あなたも、木にぶつかりなさい。」

冷たい一言が落ちる。

――“虐げられる役”の幕が上がった。



🩶 注释(小注释)
• 口訣(こうけつ):符術を発動させるための短い呪文。
• 金光呪(きんこうじゅ):邪気を祓う金色の光を呼び出す咒文。
• 群演(ぐんえん):大勢のエキストラのこと。
• 飛絲技法(ひしぎほう):刺繍の高度な技法の一種。
• 臣女(しんじょ):身分の低い女性が、上位の人物に対して自称する言葉。
感想 10

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