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新しい公爵家
クリスナードと、アドリーネの結婚式の中、新郎の席にモナード公爵令嬢の姿を見た。
聞けば、第二王子殿下の婚約者だと言う。
クリスナード殿下のツケを、第二王子殿下が払ったのかとメリーアンは思った。
その割には仲良く見えたのが不思議だった。
結婚式の翌日からクリスナードは、セオリング伯爵家のアドリーネの部屋で暮らすことになった。
彼は大学の二年生。
朝から学校に行き、夕方まで帰ってこない。
アドリーネは妊婦。
いくら寝ても寝足りない様で、昼まで起きてこない。
義母は娘婿に気を使い、その鬱憤が嫁のメリーアンに飛んでくる。
全く気苦労が絶えない。
大学を卒業したら公爵家を構えて、ここを出て行くのだから、今の間だけだと自分に言い聞かせて暮らしていた。
アドリーネとクリスナードが結婚して三ヶ月後、王家から新しい公爵家の名が発表された。
「ルモンド公爵家」
オレボーレ王国、二つ目の公爵家で王位継承権を持つ公爵家の名前だ。
大々的に公示された。
屋敷は城の東側。
川の流れる辺りにあった、昔王族が使用していた屋敷を改装した。
庭の広い、周囲を塀で囲まれた、
立派な屋敷だった。
セオリング伯爵夫妻は、ルモンド公爵家の主人は、クリスナードだと信じて疑わなかった。
アドリーネはそろそろ臨月だ。
子が産まれてから引っ越せば良い。
義母は機嫌が良かった。
それには理由があった。
数日前、こっそりと一人で
ルモンド公爵邸を見に行った。
既に数人の使用人がいて、家の中を忙しそうに走り回っている。
表からだけしか見ていないが、
窓の数を見れば、部屋数も多いし造りも良い。
庭も手入れされ、数人の庭師が花の植え替えを行っていた。
アドリーネが、産まれた子を連れてこの屋敷に帰る頃には、
あの花が、丁度満開に咲きほこっているだろう。
クリスナードの、優しさだと受け取った。
想像すると、クリスナードの株は義母の中でどんどん上がった。
正直なところ、この三ヶ月ほど一緒に暮らしているが、覇気のない甲斐性なしの、顔だけが取り柄の男だと思っていた。
学校には行くが、休みの日は一日中部屋から出てこない。
何をしているのかと思えば、身重のアドリーネとベッドの中だ。
使用人さえ、部屋の中に入ることができないと嘆いていた。
ルモンド公爵家の門の前、邸を覗いている義母の心の中で、クリスナードは甲斐性なしから、出来る男になっていた。
「「アドリーネよりも先に屋敷に入る訳にはいかないわね。」」
一人頷きながら、屋敷の門の前から中を覗いただけで帰ることにした。
丁度その時、イグレットはグレースの手を引き、屋敷の中を案内していた。
「グレース、ここが君の部屋だ」
ドアを開けると、
薄いブルーの壁紙が、目に飛び込んで来た。
調度品はノアが選んだのだろう。
グレースの趣味にぴったりだ。
「明日からでも住めるよ」
変わらずノアは強引だ。
「明日からは無理です」
はっきりとグレースは答える。
ここで曖昧なことを言うと、ノアは自分に都合よく受け取る。
先日は唇を奪われた。
それからは会うたびに唇にキスをする。
この半年で彼の性格は学習した。
結婚式はふた月後。
式が終わったらこの屋敷でノアと暮らす。
ノアの気持ちが変わるかもと思い付き合ってきたが、甘くなる一方だ。
父は諦めて、少し前に親戚から養子を迎えた。
グレースと同学年の大学生だ。
学校で見たことがあったが、親戚だとは知らなかった。
家で顔合わせをして、互いに驚いた。
名前をスチュアートという。
母方の遠い親戚で、子爵家の三男だという。
将来は文官で身を立てようと、アルバイトをしながら大学に通っていた。
苦学生だ。
笑うと白い歯が見える、爽やかな青年だ。
今はアルバイトを辞めて、モナード公爵家に暮らしている。
大学も、グレースと同じ馬車で通う様になった。
父や母から貴族世界の礼儀を習っている。
公爵家の後継としてのマナーは厳しいが、頑張りがいがあると言って、
毎日グレースを相手にお茶の練習もする。
先日、お茶の練習をしているとノアが来た。
いつものことで先ぶれはない。
暫く忙しかったのか、久しぶりの来訪だった。
庭のテーブルに、スチュアートと二人で向かい合って座っているグレースを見て、ノアの足が止まった。
「「誰だ?アレ」」
知らない男が、グレースとお茶をしている?
ノアは危機感を持った。
「グレース!」
声をかけた。
二人が同時に振り向く。
何故か腹が立った。
グレースの側にいて良いのは私だけだ。
「ノア、久しぶり」
グレースが、にっこりと笑った。
彼女の笑顔だ。
近づき、グレースの肩に手を置く。
「お茶か?」
わかっていて聞いた。
「ええ、ノアの分も入れてもらうわ、此処に座って」
グレースは隣の椅子を勧めた。
彼女の前にかがみ込むと、唇を奪う。
サラッと舌をグレースの口の中に押し込み、直ぐに出した。
グレースは何が起こったのかわからなかった様だ。
私はペロリと自分の舌を舐めた。
「甘いな」
呟く。
ハッとした様にグレースの顔が赤くなった。
直ぐに私の胸に顔を埋めた。
手は私の上着をしっかりと掴んでいる。
全く、、、可愛い。
見ていると口元が緩む。
自分が照れている事を、他の者に知られたくない。
彼女のいつもの仕草だ。
チラリと後ろの男を見ると、私を凝視している。
明らかにオスの目だ。
だが、グレースは私のものだ。
誰にも渡さない。
彼女が私のものだと認識させる為に、
わざわざこの男の前でグレースの唇を奪った。
婚約者である私の特権だ。
二ヶ月後に予定されている結婚式の後には、グレースの全てが私のものになる。
後少しの辛抱だ。
準備は全て整った。
絶対に手放さない。
「ノアのお茶を用意して」
立ち直ったのかグレースは顔を上げ、使用人に私のお茶の支度をさせた。
グレースの隣で、テーブルの下で手を繋ぎ、目の前の男を見ながらお茶を一口飲む。
グレースは落ち着かなかったが、
わたしは満足だ。
ただ、このオスが気になるので、
毎日様子を見に来ようと思う。
聞けば、第二王子殿下の婚約者だと言う。
クリスナード殿下のツケを、第二王子殿下が払ったのかとメリーアンは思った。
その割には仲良く見えたのが不思議だった。
結婚式の翌日からクリスナードは、セオリング伯爵家のアドリーネの部屋で暮らすことになった。
彼は大学の二年生。
朝から学校に行き、夕方まで帰ってこない。
アドリーネは妊婦。
いくら寝ても寝足りない様で、昼まで起きてこない。
義母は娘婿に気を使い、その鬱憤が嫁のメリーアンに飛んでくる。
全く気苦労が絶えない。
大学を卒業したら公爵家を構えて、ここを出て行くのだから、今の間だけだと自分に言い聞かせて暮らしていた。
アドリーネとクリスナードが結婚して三ヶ月後、王家から新しい公爵家の名が発表された。
「ルモンド公爵家」
オレボーレ王国、二つ目の公爵家で王位継承権を持つ公爵家の名前だ。
大々的に公示された。
屋敷は城の東側。
川の流れる辺りにあった、昔王族が使用していた屋敷を改装した。
庭の広い、周囲を塀で囲まれた、
立派な屋敷だった。
セオリング伯爵夫妻は、ルモンド公爵家の主人は、クリスナードだと信じて疑わなかった。
アドリーネはそろそろ臨月だ。
子が産まれてから引っ越せば良い。
義母は機嫌が良かった。
それには理由があった。
数日前、こっそりと一人で
ルモンド公爵邸を見に行った。
既に数人の使用人がいて、家の中を忙しそうに走り回っている。
表からだけしか見ていないが、
窓の数を見れば、部屋数も多いし造りも良い。
庭も手入れされ、数人の庭師が花の植え替えを行っていた。
アドリーネが、産まれた子を連れてこの屋敷に帰る頃には、
あの花が、丁度満開に咲きほこっているだろう。
クリスナードの、優しさだと受け取った。
想像すると、クリスナードの株は義母の中でどんどん上がった。
正直なところ、この三ヶ月ほど一緒に暮らしているが、覇気のない甲斐性なしの、顔だけが取り柄の男だと思っていた。
学校には行くが、休みの日は一日中部屋から出てこない。
何をしているのかと思えば、身重のアドリーネとベッドの中だ。
使用人さえ、部屋の中に入ることができないと嘆いていた。
ルモンド公爵家の門の前、邸を覗いている義母の心の中で、クリスナードは甲斐性なしから、出来る男になっていた。
「「アドリーネよりも先に屋敷に入る訳にはいかないわね。」」
一人頷きながら、屋敷の門の前から中を覗いただけで帰ることにした。
丁度その時、イグレットはグレースの手を引き、屋敷の中を案内していた。
「グレース、ここが君の部屋だ」
ドアを開けると、
薄いブルーの壁紙が、目に飛び込んで来た。
調度品はノアが選んだのだろう。
グレースの趣味にぴったりだ。
「明日からでも住めるよ」
変わらずノアは強引だ。
「明日からは無理です」
はっきりとグレースは答える。
ここで曖昧なことを言うと、ノアは自分に都合よく受け取る。
先日は唇を奪われた。
それからは会うたびに唇にキスをする。
この半年で彼の性格は学習した。
結婚式はふた月後。
式が終わったらこの屋敷でノアと暮らす。
ノアの気持ちが変わるかもと思い付き合ってきたが、甘くなる一方だ。
父は諦めて、少し前に親戚から養子を迎えた。
グレースと同学年の大学生だ。
学校で見たことがあったが、親戚だとは知らなかった。
家で顔合わせをして、互いに驚いた。
名前をスチュアートという。
母方の遠い親戚で、子爵家の三男だという。
将来は文官で身を立てようと、アルバイトをしながら大学に通っていた。
苦学生だ。
笑うと白い歯が見える、爽やかな青年だ。
今はアルバイトを辞めて、モナード公爵家に暮らしている。
大学も、グレースと同じ馬車で通う様になった。
父や母から貴族世界の礼儀を習っている。
公爵家の後継としてのマナーは厳しいが、頑張りがいがあると言って、
毎日グレースを相手にお茶の練習もする。
先日、お茶の練習をしているとノアが来た。
いつものことで先ぶれはない。
暫く忙しかったのか、久しぶりの来訪だった。
庭のテーブルに、スチュアートと二人で向かい合って座っているグレースを見て、ノアの足が止まった。
「「誰だ?アレ」」
知らない男が、グレースとお茶をしている?
ノアは危機感を持った。
「グレース!」
声をかけた。
二人が同時に振り向く。
何故か腹が立った。
グレースの側にいて良いのは私だけだ。
「ノア、久しぶり」
グレースが、にっこりと笑った。
彼女の笑顔だ。
近づき、グレースの肩に手を置く。
「お茶か?」
わかっていて聞いた。
「ええ、ノアの分も入れてもらうわ、此処に座って」
グレースは隣の椅子を勧めた。
彼女の前にかがみ込むと、唇を奪う。
サラッと舌をグレースの口の中に押し込み、直ぐに出した。
グレースは何が起こったのかわからなかった様だ。
私はペロリと自分の舌を舐めた。
「甘いな」
呟く。
ハッとした様にグレースの顔が赤くなった。
直ぐに私の胸に顔を埋めた。
手は私の上着をしっかりと掴んでいる。
全く、、、可愛い。
見ていると口元が緩む。
自分が照れている事を、他の者に知られたくない。
彼女のいつもの仕草だ。
チラリと後ろの男を見ると、私を凝視している。
明らかにオスの目だ。
だが、グレースは私のものだ。
誰にも渡さない。
彼女が私のものだと認識させる為に、
わざわざこの男の前でグレースの唇を奪った。
婚約者である私の特権だ。
二ヶ月後に予定されている結婚式の後には、グレースの全てが私のものになる。
後少しの辛抱だ。
準備は全て整った。
絶対に手放さない。
「ノアのお茶を用意して」
立ち直ったのかグレースは顔を上げ、使用人に私のお茶の支度をさせた。
グレースの隣で、テーブルの下で手を繋ぎ、目の前の男を見ながらお茶を一口飲む。
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