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失望
リリアーナ王女が屋敷に突然押しかけて来た。
対面したグレースの動揺が表に出なかったのは、友人のルルからノアとリリアーナ王女のことを聞いていたおかげだ。
ルルに感謝すると同時に、
自分を褒めてやりたいと思った。
「ノアが、、、彼がね自分から貴女に話すと言ったのですけれど、私がどうしてもグレース様にお会いして、お詫びを申し上げたいと言ったら、、、今日、こちらに伺う事を許して貰えましたの。グレース様、私とノアの真実の恋を応援していただけますわよね」
甘ったるい声で話すと、上目遣いに私を見た。
どうやら、私に身を引けと言いに来たようだ。
どう返事をして良いのか、、、困った。
リリアーナ王女は私の事などお構いなしに、一方的に喋りまくる。
「ノアは私の初恋の男性であり、私はノアの初恋の女性なのです。
ご存知ですよね。
私達は、互いに愛し合っておりますのよ。
やっと結婚できる年齢になり、
先日私達は互いに愛を確かめ合いましたの。
うふふっ、、、。
もう離れることなんて出来ませんわ。
貴女も女性ですもの。私の気持ちをわかっていただけますでしょう。」
延々と、ノアとの関係を喋り続ける。
「「愛を確かめ合った、、、!?」」
その言葉は、私にノアとの関係を断ち切らせるのには充分だった。
もうこれ以上は聞きたくない。
考えていた所に、両親が帰ってきた。
玄関まで走ってきた使用人から、リリアーナ王女が来ている事を聞き、驚いた両親は玄関から真っ直ぐに応接室に来た。
青い顔をしたグレース。
嬉々として、ノアと自分の関係を話すリリアーナ王女。
直ぐに事態を察した両親は、丁寧に彼女に挨拶をすると、直ぐにリリアーナ王女に帰ってもらった。
少しして、城からリリアーナ王女の歓迎パーティの案内状が来た。
普通なら早くても一月後の案内だが、日付は一週間後。
三人で頭を悩ました。
グレースの立場はどうなるのか?
ノアから貰ったドレスを着ていくのか?
我が家で用意したドレスにするのか?
悩んでいたら、ノアから手紙が来た。
「リリアーナ王女の歓迎パーティの時のエスコートが出来ない。申し訳ない」
と書いてあった。
グレースの立場は決まった。
ノアの呼び方を今後はイグレット殿下で統一する。
父が決めた。
彼とは一線を引く事にした。
パーティの当日、私は病気欠席と言うことにして、その日のうちに家を出る事にした。
私はノアがリリアーナ王女をエスコートする姿も、二人でダンスを踊る姿も見たく無かった。
王家に逆らうことは出来ないし、
父は公爵家を守らなければいけない。
グレースが家を出た後に、婚約解消の件は王家に話す、とその日に決まった。
夜会の参加は両親のみ。
当日二人は会場に入った。
イグレット殿下と、グレースの関係を知らない貴族はいない。
興味本意にモナード公爵夫妻を見つめる者もいれば、口元を隠してヒソヒソと話す者もいる。
痛まし気に見る目もあった。
モナード公爵夫妻は、全く気にならない風を装い、
「王族に挨拶に行くよ」
小さな声で父が母に言った。
気持ちをしっかり持っていなければ、感情が表に出そうだ。
「国の太陽にご挨拶、、、」
公爵が決まり文句を口に、王族への挨拶を済ませた。
陛下の隣には王妃様、王太子ご夫妻と続き、イグレット殿下が、リリアーナ王女をエスコートして立っていた。
公爵夫妻は和かに王族の前から立ち去った。
グレースが、来なくて良かった。
母はそう思い安堵した。
パーティの最中、モナード公爵の元にイグレット殿下が来た。
公爵は頭を下げて、
「イグレット殿下、お久しぶりです」
挨拶をした。
その言葉に殿下は嫌そうな顔をした。
「「挨拶すら迷惑だったか、、。?」」
公爵は、自分の男を見る目が無かった。
グレースには可哀想な事をしたと思っていた。
今夜の夜会は、王族に挨拶をしたら直ぐに帰るつもりだ。
妻は友人の元に挨拶に行き今は私一人だ。
「グレースは、その、今日は参加できなかったのだろうか?」
殿下の声の感じから、気を遣っているのが感じられる。
「娘は体調がすぐれず、医者からも外出は控えた方が良いと言われまして、今日は欠席とさせていただきました。」
頭を下げたまま、イグレット殿下の顔を見ない様に話す。
腹の中は煮えくりかえっていたが、
顔には出さない。
これでも公爵家を預かっている身だ。
声も、表情も崩さずに対応した。
数ヶ月前、グレースに婚約の話が持ち込まれた。
相手は第二王子ののイグレット殿下。
王太子殿下の紹介だった。
何故?
疑問しかなかったので尋ねると、
「弟の為に。」
と、彼は言った。
グレースが、イグレット殿下の初恋の女性だという。
クリスナード殿下とグレースの婚約が決まった時、イグレット殿下の落ち込み用は、慰めようがないほど酷かったと聞いた。
クリスナード殿下とグレースの婚約破棄の話を聞いて、直ぐにイグレット殿下は、自分の婚約を解消して、グレースとの結婚を望んだ事も、陛下がしばらく待つ様に言った事も、王太子殿下の口から聞いた。
娘をそれほど思ってくださるのならば。と思い、婚約の申し出を受けた。
のに、、、、
考えれば考えるほど、王家に腹が立つ。
王太子殿下の言葉を信じた自分が馬鹿だった。
人の娘を何だと思っている。
なにがグレースが弟の初恋の女性だ。
リリアーナ王女と既に身体の関係を持ち、それをわざわざグレースの耳に入れに、リリアーナ王女を屋敷に来させるなど、、、。
普通の男のする事ではない。
公爵家がなければ、私も家族を連れて国を出たいと思うほどだ。
明日か、明後日かにはイグレット殿下と婚約解消の話しをしなければならない。
今度は、グレースが一生困らないほどの慰謝料をもぎ取る。
決して妥協はしない。
モナード公爵は決めていた。
グレースは今日の昼、領地に向けて出発した。
表向きは体調不良による、領地での静養だが、
事実は隣国、マークスに向かった。
付き添いは侍女のサフラと、護衛のトムソンの二人。
二度と王都に戻ることはない。
モナード公爵家の、数人だけしか知らない事だった。
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