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ノアの裏切り
グレースはノアが好きになっていた。
大好きだ。
これを恋というのなら、グレースはノアに恋をしている。
もっと以前の、ノアと付き合う前のグレースだったら、
「やっぱりそうだったのか、ノアも同じだった、私を裏切るんだ」
そう思って、ノアの裏切りを受け止め、彼との関係を終わらせただろう。
ノアへの恋心に気づいて、
この気持ちは一生変わらないだろうと思い、
彼を信じ、婚約を受け入れて結婚する事に決めた。
「「修道院に行く、、、しかないよね。うん、他には無い、、かな、、帰ったら両親に相談だ」」
「グレース、大丈夫?」
明らかに私の顔色は悪いのだろう。
ララが、私を覗き込んで尋ねた。
私に気遣うララの前で、泣くわけには行かない。
「ん、大丈夫よ、分かっていたから」
ララから聞いた話の内容を知っていたのでは無い。ノアの気持ちを、疑っていた頃の私に戻っただけだ。
心にぽっかり穴が空いた様な気持ちだ。
どん底に落ちた様で、心は重い。
「「又、裏切られた、、、」」
その一言に尽きる。
ララにはノアとリリアーナ王女様の事は、知っていたかの様に取り繕った。
彼女はグレースを心配して話してくれたのだ。
「、、、蒸し返しちゃったね、ごめん。
でも私イグレット殿下のなさり様に腹が立って、、、私がグレースの友達だって皆知らないから世間話みたいに話すんだけれど、、、。
、、、元気出してね、グレースならどんな仕事でもあるよ、結婚だけが人生じゃないって!!」
やるせない様にララは言った。
リリアーナ王女、、、。
そんな愛する女性がいるのなら、イグレット殿下は、グレースに結婚を申し込むべきではなかったと、ララはグレースに同情的だ。
涙が出そうで、
それ以上は聞いていられなかった。
気持ちは勉強どころではない。
笑ってララと別れたが、
なんとも言えない顔をしていただろう。
午後は家に帰り直ぐに両親に話した。
父は既に知っていた。
城で耳にした様だ。
ノアからの話はまだ何も無いと言う。
母は彼からは言いにくいのでは無いか?
此方から申し出るのを待っているのでは無いか?と話す。
元々、王家から来た縁談だ。
確かに向こうからは言いにくいだろう。
縁談を持ちかけておいて、やっぱりあの話はなかった事に、なんて言えば、王家の信用は丸潰れだ。
数日前にノアから、しばらく会えないという手紙が来たのも納得だ。
リリアーナ王女様との時間を大切にしたいのだろう。
二人で過ごす時間の方が大切だ。
私の所に来る時間はない。
心が虚しくなる。
両親と私の三人で話し合い、知恵を振り絞って結論が出た。
王家から、全て言わすな、察せよ、忖度しろ。ということなのだろうという事で話しがまとまった。
我が家は家族一同、他人の感情や思惑を先回りして考える優しさがあった。
言いづらい事を全て話させるのは酷な事だ。
結論は出た。
婚約は解消、モナード公爵家から陛下に申し出るということになった。
問題はその日をいつにするか?という事だが、それは父に任せる事にした。
「私、旅行してきていい?」
沈黙の中、グレースは言った。
このまま国にいるという事は、ノアとリリアーナ王女の仲睦まじい姿を見ることになる。
甘々のノアのことだ。
グレース以上に、リリアーナ王女に甘くなるだろう。
リリアーナ王女はノアの初恋の女性だと聞く。
ノアの念願が叶うのだ。
そんなノアの姿を見たくなかった。
嫉妬しそうな自分が怖かった。
醜いと思った。
ならば見なければ済む。
その場に居なければ良い。
「え?、、、グレース、もう少し様子を見てみたら?」
早急に結論を出した私を母が止めた。
「だって、これから婚約解消の話し合いになるんでしょう、同席したらノアを殴りそうな気がするの、、、不敬罪に問われて公爵家一族もろとも処刑だなんて嫌だもの。二、三年経てば噂も収まるだろうし、、、しばらく留学ということで、、、」
私は泣いていた様だ、母が私を抱きしめた。
途端に涙が頬を伝う。
「19歳で二回目の婚約解消って、笑うよね、全く」
泣き笑いで言ったが、
真っ直ぐに両親の顔が見られなかった。
二人とも痛ましい顔をしていた事だろう。
翌日から私は家を出る準備をし始めた。
大学は卒業式を残すだけ。
卒業式の後、数日後に結婚式の予定だった。
そんな中、私を訪ねて来た者がいた。
両親は出掛けていて留守だ。
使用人は、客は女性で二人連れだと言う。
名前をフオンナ様と言い、もう一人は彼女の侍女だと伝えられた。
「フオンナ様?」
はて、そんな知り合いはいただろうか?と考えるが、いくら考えても思い出さない。
頭の中で、誰だったか考えながら、とにかく待ってもらっているという応接間に急いだ。
ドアを開けると、優雅に座っている女性が目に入った。
華奢で、上品だ。
明らかに貴族だ。
ピンク色のリボンがたくさん付いたドレスは、幼い感じがあるが、品が良い。
良いところのご令嬢の様だが、顔を見ても思い出さない。
挨拶をして椅子に座り、使用人がお茶を出したのを、一口飲んでから、
「ところで、何処かでお会いしましたか?」
尋ねた。
覚えていないのだから、聞くしかない。
私の後ろにいた侍女のサフラの顔は引き攣っている。
家人の知らない女性を、主人のいない家の中に入れたのだ。
ドアの近くに立つ、応接室に案内した使用人は冷や汗をかいている。
「私は、フオンナ、リリアーナ、ククレットと申しますわ。ククレット国の第二王女ですわ、ノア様と、将来を約束しております、ご存じですよねグレース様」
恥じらいながらも優雅に、お茶のカップを持ったまま、グレースを見定めるように話した。
「「リリアーナ王女様が、何用で我が家へ?いや違う、私に会いに来たのだ、どうして彼女が、、、?」」
驚いた私は一瞬息が止まった。
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