瞳の継承

キラ

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ハモンド家の破滅と、未来へ

数日後、レオンからイグナツトがワトソン公爵と事業を始める事になったと聞かされた。

何の事業かと不思議に思っていると、更に数日後、事業は破棄されたと言う。
結局、イグナツトが出してきた事業計画が納得いかずに、ワトソン公爵は首を縦に振らなかった。

上手く行くものだと思っていたイグナツトは、先に業者に手廻しをしていた。

断りきれなかったのか、上手く行くと思ったのか、結局ワトソン公爵から金を借りて、一人で事業を始めた。

彼の始めた事業は上手く行った。
軌道に乗り利益もで始めた。

慣れてくると彼は欲を出し、
原価を抑え、粗悪品を作り始めた。

しばらくの間、誰もその事には気づかなかった。



イグナツトは、ワトソン公爵への資金返済も毎月滞りなく出来ていた。
ターニャも、贅沢ができ、ハモンド侯爵家は飛ぶ鳥を落とす勢いで、怖いもの知らずだ。



ルキアのお腹が大きくなり、臨月が近づいた頃、街でターニャに出会った。
ルキアはレオンと一緒だ。

ターニャはルキアの知らない男性と一緒だった。
家の使用人かと思いルキアは挨拶をした。
瞬間、男は顔を隠した。

「?」

不思議に思い、首を傾ける。

「愛人だ。」

レオンがルキアに耳打ちした。

「「あ、そう言う事」」

男が顔を隠した理由がわかった。
イグナツト公認なのだろうか?と、思う。

貴族の家庭には良くあることだ。
歳の離れた妻を娶った夫は、妻と離婚しない為に、若い情夫を公認する場合がある。

イグナツトはまだ若いけれど、、、。
思いながらターニャの後ろ姿を見送った。

いつも若い格好をしているターニャだが、今日は一層若づくりだった。
一緒にいた男性の為の若づくりなのだろう。
彼はターニャよりずいぶん年下に見えた。

子供を産んだ後なのに、、、、。
子供へのお乳はどうしているのだろう?
ルキアは大きくなった自分のお腹を触る。

ポン!!と蹴られた。
お腹の子は元気だ。

秋の初め、ルキアは玉の様な男児を産んだ。

髪はレオンから貰い黒。
瞳はルキアの紫。
陣痛がはじまってから、レオンとワトソン公爵は二人で、部屋の中をうろうろと動きまわり、使用人から、

「邪魔です!!」

と叱られていた。

半日ほど続いた陣痛は、
赤児が産まれて終わった。

あの痛みは二度と嫌だ。
思ったが、
初産では早い方ですよ。
産婆に言われた。

ルキアは疲れ果てて声も出なかったが。腕に抱いた子供を見たら、疲れも痛みも吹っ飛んだ。

レオンは涙を流して、

「ありがとう、ありがとうルキア、家族を、僕の子を産んでくれてありがとう」

何度も繰り返した。
その一言で、ルキアは幸せだった。

ワトソンは孫を手に、感無量の様子でじっと見つめたまま、固まっていた。

名前はレオンが付けた。

「テイルナード」はどうだろう。

皆から少しずつ名前を貰った。


「テイルナード、マーラシア、、、テイルね良い名前だわ」

嫡男はテイルナードに決まった。

領地にいる義両親も駆けつけて、盛大に祝った。

それから3年後、ルキアは男女の双子を産んだ。

男の方は、ワトソン侯爵がレオナルドと命名し、女の方はレオンがフィーネと名前を付けた。

さらに2年後にルキアは男児を産み、エレクと名付け四人の子持ちになった。


次男のレオナルドは成人前にワトソン公爵家の後継となり、長男テイルナードはレオンに使われて、仕事を覚えている。

男3人の中で育った一人娘のフィーネは、
男まさりで、17歳になると直ぐにトルコン共和国に留学した。

三男のエレクは、騎士団に入り、王都を守っている。

四人とも瞳の色は紫で、髪の色は黒だ。
どこにいてもレオンとルキアの子だとわかる。

ワトソン公爵は、孫が公爵家の色を継承したことを喜んだ。




ルキアが双子を出産する前、
イグナツトが出奔した。

利益を求めすぎて、商品が粗悪品になり訴えられた。
儲かっている時に、ワトソン公爵は資金を回収していたので、損は無かったと話したが、
ターニャが、家の金を持って男と逃げた事が大きかった。

損害賠償を求められても支払えず、ハモンド侯爵家は破産した。

イグナツトは債権者に追われる身となり、行方を眩ませたのだ。


隣町へと向かう森の中に。女性の腐乱死体が見つかった。
高そうなドレスを身に纏っていたが、身体の肉は無く、骨が見えていた。

オーダーメイドのドレスから、身元が判明した。

ターニャ、ハモンド侯爵夫人。
侯爵家は没落して今は無い。
彼女は教会の無縁墓に葬られた。

更にそれから数年後、マーラシア伯爵家を訪ねてきた男がいた。

ルキアはレオンと庭で子供達を遊ばせていた。


破れた服を纏い、髪はボサボサで、身体からは変な匂いがしていた男は、許可も得ず勝手に庭に入ってきた。

レオンは子供達とルキアを庇い、
男の前に出た。

男は凶器を持っている訳でもなく、ルキアと子供達を眺めて立っていた。
しばらく男の様子を見ていたレオンが、


「イグナツトか?」

尋ねた。
ピクリと男の肩が揺れる。

「やはり、イグナツト!」

レオンは彼の名を呼びながら、後ろ手で、ルキアと子供に屋敷に入る様に言う。

イグナツトを刺激しない様に、ルキアは子供達を連れて、そっとその場を離れた。

イグナツトは声を失っていた。
記憶もバラバラの様で、しばらくの間、レオンと向き合っていたが、ふっと屋敷から出ていった。

それが彼と会った最後だった。

気になって、イグナツトの息子の行方を調べた。

家が潰れた時、使用人が教会に預けたが、いつの間にかいなくなっていたとシスターが話した。



















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