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幸いローイはまだ戻ってきていない。
今のうちに布団に入り眠ってしまおう。
そうしてわたしはドキドキする胸を抑えて目を閉じた。
その日、ローイが部屋に戻ってくることはなく私は明け方ようやく眠りについたのだった。
昼前、目が覚めるとローイが朝食を持ってお越しに来てくれた。
屋敷の主人、ローイ自ら届けに来てくれるこんな贅沢はなかなか味わえないだろう。
なんて心の中で思いながら昨夜の事を聞いてみた。
「昨日戻ってこなかったの?」
にこりと微笑みながらも気まず気な顔をする婚約者をじっと見つめる。
「すまない、たまたまだよ。やり残した執務があってね。」
そう言って朝食を食べようとベッド横にある机に2人で向かい合った。
食事をするローイを見ながら夫婦になったら毎日こんなふうに過ごすのかと思うと甘酸っぱい気持ちになる。
それは野菜のソースの味によく似ていて穏やかな幸せに満たされたのだった。
ローイの屋敷にお世話になってだいぶ経ってしまった。
このままでいいものかと、何かできることは無いかとローイに相談しに行こうと彼の元へ行こうとした時だった。
通りかかった玄関ホールで何やら騒がしい音が聞こえてきた。
そこには薄汚れた端切れをきた少年が涙を流しながら執事に懇願していた。
執事は不憫に思ったのか、帰るよう言葉で説得している様だったが、少年は執事の足元に縋りついて離れない。
私は階段を降りて事情を聞くことにした。
「リチア様っ…!…申し訳ありません、お騒がせしてしまいまして…。」
「気にしないで。」
謝る執事にそう返してわたしは少年を見た。
泣きすぎて目が腫れてしまいながらも強い意志を持った子だった。
「あなた名前は?」
「…ブルックです…。」
泣きながらも素直に答えてくれる少年をわたしは立ち上がらせた。
「どうしてここへきたの?」
ブルックにそう問いかけると、彼は必死な思い出話してくれた。
「この近くの村が干ばつで干上がってしまって水も出ないんだ…。このままだと母さんが、もたないんだ‼︎」
母親のためにこの屋敷に入るのには勇気がいったことだろう。
私はブルックと一緒に行く事に決めた。
「その村まで案内してくれる?」
「リチア様っ…!お待ちください…あなた様の身に何かあれば…っ!」
止める執事に、大丈夫だと伝えて私支度をして少年と一緒に馬車に乗り込んだ。
「…お気をつけください。」
「大丈夫よ。ローイにはすぐ帰ると伝えて。」
「かしこまりました。」
心配する執事にローイに伝言を頼んで、彼の両親のいる村まで急いだ。
今のうちに布団に入り眠ってしまおう。
そうしてわたしはドキドキする胸を抑えて目を閉じた。
その日、ローイが部屋に戻ってくることはなく私は明け方ようやく眠りについたのだった。
昼前、目が覚めるとローイが朝食を持ってお越しに来てくれた。
屋敷の主人、ローイ自ら届けに来てくれるこんな贅沢はなかなか味わえないだろう。
なんて心の中で思いながら昨夜の事を聞いてみた。
「昨日戻ってこなかったの?」
にこりと微笑みながらも気まず気な顔をする婚約者をじっと見つめる。
「すまない、たまたまだよ。やり残した執務があってね。」
そう言って朝食を食べようとベッド横にある机に2人で向かい合った。
食事をするローイを見ながら夫婦になったら毎日こんなふうに過ごすのかと思うと甘酸っぱい気持ちになる。
それは野菜のソースの味によく似ていて穏やかな幸せに満たされたのだった。
ローイの屋敷にお世話になってだいぶ経ってしまった。
このままでいいものかと、何かできることは無いかとローイに相談しに行こうと彼の元へ行こうとした時だった。
通りかかった玄関ホールで何やら騒がしい音が聞こえてきた。
そこには薄汚れた端切れをきた少年が涙を流しながら執事に懇願していた。
執事は不憫に思ったのか、帰るよう言葉で説得している様だったが、少年は執事の足元に縋りついて離れない。
私は階段を降りて事情を聞くことにした。
「リチア様っ…!…申し訳ありません、お騒がせしてしまいまして…。」
「気にしないで。」
謝る執事にそう返してわたしは少年を見た。
泣きすぎて目が腫れてしまいながらも強い意志を持った子だった。
「あなた名前は?」
「…ブルックです…。」
泣きながらも素直に答えてくれる少年をわたしは立ち上がらせた。
「どうしてここへきたの?」
ブルックにそう問いかけると、彼は必死な思い出話してくれた。
「この近くの村が干ばつで干上がってしまって水も出ないんだ…。このままだと母さんが、もたないんだ‼︎」
母親のためにこの屋敷に入るのには勇気がいったことだろう。
私はブルックと一緒に行く事に決めた。
「その村まで案内してくれる?」
「リチア様っ…!お待ちください…あなた様の身に何かあれば…っ!」
止める執事に、大丈夫だと伝えて私支度をして少年と一緒に馬車に乗り込んだ。
「…お気をつけください。」
「大丈夫よ。ローイにはすぐ帰ると伝えて。」
「かしこまりました。」
心配する執事にローイに伝言を頼んで、彼の両親のいる村まで急いだ。
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