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ローイと会場に入ると、周りからの白い目線が合わなくてもわかった。
もう媚を売る必要のない娘なのだと、判断しているのだろう。
心配するローイに大丈夫だと目配せをしてわたしは毅然と振る舞う。
しばらくして周りの人達がざわざわと入口に意識を向け始める。
振り返ると、そこにはウィーン公爵家が揃っていた。
父親はわたしを見てもすぐ他に意識を向けているが、母親は私をじっと見つめていた。
2人の兄もこちらを気にしながらも、父と同様に他を見ている。
少し気まずい思い出はあったが、本来の目的を考えるとこちらに意識を向けてくれるのは好機だと捉えた。
「リチア…無理しなくていいよ。」
年を推すように心配するローイにわたしは思わず顔の力が抜けた。
「大丈夫、ローイがいてくれるもの。…それにこれはいい機会よ。」
わたしが頷くとローイも顔を引き締めた。
「君がそういうなら大丈夫だね。…行こうか?」
「ええ…。」
私達は周りの人を掻い潜りながらウィーン家に近づいた。
近づく私たちを嬉しそうに見つめる母親とは対照的に敵意を隠しもしない父親が前に出てきた。
「ウィーン公爵様、お久しぶりでございます。」
ローイが挨拶すると、相手は真顔のまま静かに口を開いた。
「いったい何のつもりだ。…冷やかしに来たのか?」
「……。」
お互い何も言わずに睨み合っていると、それを止めようと母親が間に入ってきた。
「せっかく会えたのだからこんな無粋なことを言うのはやめて!」
母親に言われて父親は渋々と黙った。
これ以上は何を言っても険悪な雰囲気になってしまうと、わたしはローイの裾を引っ張り首を横に振った。
ローイも頷くと私達は短い挨拶を済ませてその場を後にしたのだった。
「リチア!」
振り返るとわたしの名前を呼んで何か言おうとしている母の姿があった。
しかしこれ以上は周りの見せ物になってしまうとわたしはお辞儀をしてその場を去った。
「困ったわ…。」
来賓用の休憩室でローイと話した。
「そうだね…母君は君と会いたそうにしていたが、父君がいれば無理だろうね。」
「…そうね…。」
どうしたものかと考えていると、ローイはわたしの手を握った。
「リチア、もう諦めよう…君が無理してするのは見たくないよ…。」
「そんなこと…。」
私達が途方に暮れた時だった。
今まで姿を表さなかったチアが、突然姿を現した。
「ご主人様、突然申し訳ありません。」
「チア!突然出てきてどうしたの?」
驚いてチアを見つめると、彼は笑って口を開いた。
もう媚を売る必要のない娘なのだと、判断しているのだろう。
心配するローイに大丈夫だと目配せをしてわたしは毅然と振る舞う。
しばらくして周りの人達がざわざわと入口に意識を向け始める。
振り返ると、そこにはウィーン公爵家が揃っていた。
父親はわたしを見てもすぐ他に意識を向けているが、母親は私をじっと見つめていた。
2人の兄もこちらを気にしながらも、父と同様に他を見ている。
少し気まずい思い出はあったが、本来の目的を考えるとこちらに意識を向けてくれるのは好機だと捉えた。
「リチア…無理しなくていいよ。」
年を推すように心配するローイにわたしは思わず顔の力が抜けた。
「大丈夫、ローイがいてくれるもの。…それにこれはいい機会よ。」
わたしが頷くとローイも顔を引き締めた。
「君がそういうなら大丈夫だね。…行こうか?」
「ええ…。」
私達は周りの人を掻い潜りながらウィーン家に近づいた。
近づく私たちを嬉しそうに見つめる母親とは対照的に敵意を隠しもしない父親が前に出てきた。
「ウィーン公爵様、お久しぶりでございます。」
ローイが挨拶すると、相手は真顔のまま静かに口を開いた。
「いったい何のつもりだ。…冷やかしに来たのか?」
「……。」
お互い何も言わずに睨み合っていると、それを止めようと母親が間に入ってきた。
「せっかく会えたのだからこんな無粋なことを言うのはやめて!」
母親に言われて父親は渋々と黙った。
これ以上は何を言っても険悪な雰囲気になってしまうと、わたしはローイの裾を引っ張り首を横に振った。
ローイも頷くと私達は短い挨拶を済ませてその場を後にしたのだった。
「リチア!」
振り返るとわたしの名前を呼んで何か言おうとしている母の姿があった。
しかしこれ以上は周りの見せ物になってしまうとわたしはお辞儀をしてその場を去った。
「困ったわ…。」
来賓用の休憩室でローイと話した。
「そうだね…母君は君と会いたそうにしていたが、父君がいれば無理だろうね。」
「…そうね…。」
どうしたものかと考えていると、ローイはわたしの手を握った。
「リチア、もう諦めよう…君が無理してするのは見たくないよ…。」
「そんなこと…。」
私達が途方に暮れた時だった。
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「ご主人様、突然申し訳ありません。」
「チア!突然出てきてどうしたの?」
驚いてチアを見つめると、彼は笑って口を開いた。
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