梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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 ツーリーはそんなわたしの姿を見て、男の胸ぐらに掴み掛かった。

 男は戸惑いながらも何やら言っていたが、いつの間にか護衛騎士に連れられて姿を消した。

「ナナ…すまなかった…君を放っておくべきではなかった。」

 ツーリーが思い詰めた顔を見せた。

「あっ…。」

 ツーリーのせいじゃないと言いたかったが、声が詰まってしまい言葉が出てこない。

「ナナ…。」

 ツーリーは、そんなわたしに何も言わずに抱きしめてきた。

 彼の温もりに縋るように、胸におでこを預けた。

「もうこのままではダメだ。…ナナ…結婚しよう。」

「っ…!」

 突然の事にまたもや言葉が出てこない。

 ツーリーはわたしを見つめたままもう決心が着いたと言うような表情を浮かべている。

「曖昧な関係が他者を入れてしまうんであれば、僕は我慢することはできない。ナナ、受けて欲しい。」

「ツーリー…とても嬉しいけど…そんな急には…。」

 すぐにでも承諾したい気持ちはありつつも何とも言えなくなってしまう。

「…嫌なのか?」

 少し低い声で問いかける彼を尻目に、わたしは自分の気持ちを打ち明けた。

「いえ…とても嬉しいわ。でも今は、やるべき事があるはずよ。あなたは今大切な任務をしているのに、ここで答えを出すのは違う気がするの…。」

 そういうと、ツーリーは焦ったい表情を浮かべる。

「ならいつがいいと言うんだ。今みたいに君が他の男のての中にいるのを黙って見ているしかないのかっ!」

 怒る彼をわたしは宥めるように頬を撫でた。

「答えを待って欲しい…。今の任務が終われば必ず返事をするから…。」

 やはり焦ったい表情を浮かべつつもツーリーは頷いてくれた。

「わかった…。今日はこんなこともあったんだ。馬車を呼ぶから先に帰っててくれ。」

「でも、そんな失礼な事はできないわ。」

「今は僕の言うことを聞いてくれ…。」

 切実に訴えてくる彼にわたしは何も言えずに、彼の用意した馬車で屋敷に向かったのだった。

 屋敷に戻ってくると疲れていたのか、身体の力が抜ける。

 楽しむはずだったのに、台無しになってしまった。

 わたしを見送るツーリーは、酷い顔をしており心配になってしまう。

 明日皇女様が隣国に帰る。

 そんな時期にこんな問題が起きてしまい、何とも言えなくなってしまう。

 それよりも彼が焦ってプロポーズしてくれた事が嬉しくも、どう捉えていいのかわからなかった。

 その日、ツーリーを待とうと思いながらも身体の疲労には逆らえず、わたしはいつの間にか眠りについてしまったのだった。

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