実は正体を隠していました。

はなおくら

文字の大きさ
1 / 52

1

しおりを挟む
 自分の体とは違う性に見せるのには、苦労がある。

 私は、女性として生まれたが今の今までに男性でいる事を強いられてきた。

 これには訳があった。

 わたしの家は、代々伯爵家を支える執事の家系であった。

 その家の息子が代々引き継ぐのだが、わたしが生まれた時、母は流行病にかかってしまい、子供を産める体ではなくなった。

 大変な愛妻家であった父は、悩んだ末にわたしを男の子として育てる事となったのだった。

 その頃、伯爵家にも同じ歳のご子息が誕生したため余計に父は頑なになっていた。

 私はずっと男の子である事を自覚しろと言わんばかりに作法も厳しくされていた。

「イゼア、お前は男の子だ。誰にも悟られない様にしなさい。」

 これが父の口癖だった。

 わたしが女である事を知っているのは、伯爵夫妻とわたしの家族だけだった。

 わたしは男の子として、父に執事の在り方を学びながら、伯爵家の子息アロン様の遊び相手として日々過ごしていた。

 アロン様は私に分け隔てなく接してくださった。

 感謝しつつ、支える執事として彼を尊敬している。

 そんな日々が変わったのは、わたしが16歳になった時だった。

 父の跡を継いでも大丈夫だろうと皆に言われていた矢先だった。

 母が妊娠して生まれたのは男の子だった。

 両親はもちろん私も大いに喜んだ。

 というのも期待されるのは嬉しかったが、正直なところ私は家を出て外の世界が見たくてたまらなかったからだ。 

 それに何より、女性としての気持ちがあった為自分らしくいられる事が嬉しくて仕方なかった。

 父にこの事を話すと、謝罪してきた。

 全く恨んでもいない、父もやむおえなかったのだろう。

 家族で話し合いを重ねて、伯爵夫妻と相談した結果、わたしは18歳の年齢を迎えたら、女性として公表して、後は好きな人生を過ごす事を許された。

 それまではいつもと変わらない日々を送らなければならない。

 アロン様には、その時が来るまで黙っておこうということになった。

 晴れやかな気持ちで早く年を重ねたいと仕事をしていると、アロン様が歩いてきた。

「イゼア、今日はご機嫌だね。何かいい事あったのか?」

 緑の髪に金色の瞳で、端正な顔立ちのアロン様は、今では淑女の話題の的になっている。

「はい、態度に出てしまいましたか…これはお恥ずかしい…。」

 わたしの言葉にアロン様はにこりと笑った。

「気にしなくていい、そうだ会議が王都であるから君も参加してくれ。」

「かしこまりました。」

 アロン様は、そういうと颯爽と去っていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

「愛想がなく可愛くない」と捨てられた私、最強の竜騎士に拾われる。「その美しさに僕だけが狂わされたい」と、愛の重さでベッドから下ろしてくれない

唯崎りいち
恋愛
夜会の最中、王子に「愛想がなくて可愛くない」と婚約破棄された無表情令嬢。 だが彼女の美しさに一目惚れした隣国最強の竜騎士に連れ去られ、 「君はもう僕のものだ」 と毎晩愛の重さでベッドから下ろしてくれない生活が始まる——。

処理中です...