実は正体を隠していました。

はなおくら

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 翌日、アロン様の様子を見にお茶を淹れて執務室に入った。

 アロン様は懸命に書類の山を片付けている。

「どうぞ。」

 お茶を差し出すと、こちらをみることもなくまたペンを走らせていた。

 邪魔してはと思い、静かに部屋を出たのだった。

 何だか悪いことをしてしまった気がして、どうしようもないがわたしはまた仕事に戻ったのだった。

 それから数日後、アロン様の婚約者を見つけるため旦那様や奥様がお見合いの写真など用意していた。

 私もお手伝いのため、写真の仕分けを任されている。

 目の前では、旦那様、奥様、そしてアロン様がいいとはいえない雰囲気の中写真を見ていた。

 写真を見てみると、どのご令嬢も家柄、容姿と優秀な方ばかりである。

 アロン様はどんな人を選ぶんだろう…。

 アロン様の様子を見ても、彼は見ては閉じてを繰り返していた。

 そんな様子に痺れを切らした奥様は口を開いた。

「いい加減にしなさい!気に入った子はいないの⁉︎」

 奥様の奮闘にも意にも返さない表情でアロン様は見上げている。

 どうなってしまうかとオロオロしながら見ていると、アロン様はニコニコと私の方を見ながら言った。

「僕はイデアと結婚します。」

「えぇ‼︎」

 私も驚いたが、旦那様も奥様も目を見開いていた。

 旦那様は目を覆うと、アロン様に言った。

「イデアは男じゃないか…何を言ってるんだ…。」

 呆れた様子の旦那様の横で、あれだけ怒っていた奥様が何も言わない。

 わたしは奥様の方を見たが、何か考えているのか奥様はアロン様を見ていた。

「冗談はよして、早く決めてください…。」

 私が口を開くと、アロン様は冗談めかした様に言う。

「イデア!少しはかくまってくれよ!」

 そう言って絡んでくるので、わたしは理由をつけて部屋を出た。

 部屋の外からでも言い争っている声を無視しながら、私は長い廊下を進み出した。

 もうすぐで、私の誕生日がくる。

 そうなったら、ようやく女性として生きていける。

 そうなったら、今まで働いたお金で小さな家を借りてどこかにお勤めに出て、たくさんおしゃれをして楽しい日々を送ろう。

 想像するだけで楽しみで、私の足取りは軽かった。

 アロン様には、出る前に女性だったと伝えよう。

 子供の頃から一緒で仕えてきたし、きょうだいのように育ったのだ。

 きっと私の門出を祝ってくれる。

 わたしはその時が来るのを指折り数えたのだった。

 それから、アロン様のお見合いは催し物の様に始まった。

 なかなか決めないアロン様には、旦那様は我慢できなくなったのだ。

 こうして一日、一人令嬢とお茶の時間を利用してお見合いをする事になったのだった。
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