実は正体を隠していました。

はなおくら

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 窓際に案内されて、彼と向かい合って座った。

 それぞれにケーキを楽しんだ。

 アロン様を見ていると、ケーキ一つでも食べ方に優雅さが見えた。

 本当ならテーブルを一緒につくことも許されない関係だが、アロン様は寛大だ。

 わたしの視線に気づいたのか、微笑む旦那様が絵で見た大天使様のように感じる。

 素敵だな…。

 彼の行動一つ一つに自分が魅入られている気がする。

「一つ食べてみるか?」

 主人の問いかけにわたしは首を振った。

「滅相もないです。わたしの分はありますから頂いてください。」

「いいから。」

 アロン様は自分のケーキを掬ってわたしの口元に持って来た。

「…いただきます…。」

 チョコの味が口に広がって、つい顔が綻んだ。

「美味しい…。」

「それは何よりだ…。」

 わたしは改めて自分のケーキを口に頬張った。

 アロン様の方を見ると、彼はわたしのケーキに目をやった。

「きになりますか?新しいのを持って来させます。」

 手を上げてウェイターを呼ぼうとしたが、止められた。

「いや…そこまでじゃない。」

 何かいいたげな主人に気になってしまいわたしは自分の分を掬った。

「もしお嫌でなければどうぞ…。」

 彼の方にフォークを差し出すと、彼は目を見開いた後、嬉しそうに食べた。

 その姿がどこか艶めかしくて、つい触れ合っている時のことを思い出してしまった。

「どうした?」

「いえ…。」

 その事を忘れようとわたしは勢いよくケーキを平らげた。

 そんなわたしの姿を頬杖をついて微笑むアロン様により照れてしまった。

 アロン様は、私の用事に付き合ってくれた。

 外で食べ歩くスイーツにも抵抗なく美味しそうに食べてくれる。

 私はアロン様と過ごすこんな時間がいつまでも続いてほしいと切に願った。

 外も暗くなり、私達は屋敷に戻る事にした。

 馬車を呼び止めようとしたが、アロン様と歩いて帰る事になった。

「こうやってゆっくり過ごすのはどれくらいぶりだろうな…。」

「そうですね…。」

 その時、アロン様は何か思い出したように笑った。

「どうしたんですか?」

「いや…覚えてるか?小さい頃、イゼアがビー玉を無くしたと大泣きしたこと。」

 そう言われて思い出した。

 あれは、アロン様の遊び相手として勤めていた時、親戚からピンク色の大きなビー玉をもらった。

 それがあまりにも可愛くて大切にしていたのだ。

「あの時、庭園で泣いてるイゼアを見て驚いたな。」

「そうですか?」

「あぁ、普段落ち着いてるのにあんな大きな声で泣くのがあまりに珍しくて…。理由を聞いたらピンクのビー玉を無くしたって…。」

 そう言われてはわたしは余計に照れてしまった。
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