実は正体を隠していました。

はなおくら

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 旦那様の背中を呆然と見つめている時だった。

 すごい勢いでアロン様に抱きしめられた。

「イゼアっ!」

 私はアロン様の背中に手を回した。

 もう離れなくていいのだと思うと、涙が出てきた。

「よかった…。アロン…。」

 アロンの顔を見て再び私は抱きしめた。

 ふと気づけば部屋には私たちだけが取り残されていた。

「アロン…心配したのよ?こんな無茶して…。」

 彼の手の傷を見て胸が痛い。

「君と一緒にいられないなんて嫌だからね。イゼアこそ、どれほど心配したと思ってるんだ…。」

 お互いの顔を見合って笑った。

 それからはあっという間に時が過ぎている。

 伯爵家では、長年の主従関係の契約がなかったことになった。

 父さんと母さんは弟を連れて出て行こうとしたが、旦那様と奥様から引き止められて今も働いている。

 旦那様も奥様の事を大切にしているようで、今ではアロンに引き継ぎを済ませて領地に引退することになった。

 あれから旦那様がわたしの部屋を訪れて今までの事を詫びてきたのだ。

 わたし自身もう攻める気持ちにもなれず和解できたのだった。

 アロンは伯爵当主となるように努力をしている。

 彼は頻繁に私に会いにきて、幸せな時を迎えていた。

 私はというと、子爵家の両親の元に身を寄せている。

 父さんのところへ戻ってもいいのだが、子爵家のお二人のもとにいたいと思いそこに身を寄せている。

 お父様とお母様とは、仲良く家族の話をして幸せな日々を送っている。

 今日は、アロンと会う約束をしていた。

「アロン。」

 彼の名前を呼べば、優しくわたしを見てくれる。

 この瞳がすきだ。

「どうしての?イゼア…?」

 わたしはゆっくりと彼の前に立ち、彼の首に手を回した。

「大好き…。」

 アロンは目を見開き驚く顔に、わたしはいたずら心が出た。

 彼の唇に触れる傷を落とすと、アロンはわたしの頭を手繰り寄せて舌を絡ませてきた。

 流石にアロンの書斎では気恥ずかしく思い、胸を押した。

「ここではダメ…。」

「なら移動しよう。」

「えっ…‼︎」

 気づけば、アロンの腕に持ち上げられる。

「待って!アロン。」

 おろしてもらおうと声をかけるが、アロンは何も言わずにずんずんと廊下を歩いていく。

 この後のことを想像できないわけではないが、はじめでもないが恥ずかしかった。

 気づけばアロンの寝室にいた。

 わたしを寝室に下ろすとアロンは耳元で囁いた。

「今日は泊まるように子爵家に伝えてあるから…。」

「いつのまに…っ!」

 わたしはいつのまにと思ったが、彼はわたしの上に重なってきた。
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