愛しい貴方へ

はなおくら

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 スサリアはホッとした。
 これでスルトもタタラも守れる。そう思ったのは束の間だった。最後の文にはこう書かれていた。

“ただしこれにはかなりのリスクがございます。説明すると、王妃様方に命の危険が及べばこのりんごが吸い込む様に中に入れ安全な所へと運んでくれます。…ですが…安全な所へ無体のままたどり着けるの心の綺麗な透き通った人間だけ…王子様はまだ幼く問題はありませんが…失礼ながら王妃様がその時、嫉妬、恨み…妬みを抱えてしまえば…命の保証はできません…。申し訳ありません…わたしの魔法ではこれが限界でございます…。”

 最後まで手紙を読み上げしばらく呆然とした。
 だが二人の命を助けたいと思うのに自分の命を張れないので有れば何も叶える事は難しいだろう。

 そう考えると恐れが少しおさまった気がした。

「ありがとう…タタラ。近々タミラに感謝状を出すわね。」

「ありがとうございます。お役に立てて光栄です。」

 スサリアのすぐさまスルトの部屋へ向かった。

 スルトの部屋の扉の前で息子の無邪気な笑い声が聞こえてきた。
 もしやと思いそっと顔を覗かせると、スルトが天井に手を伸ばして笑っている。

 目を凝らして見てみるとピクシーの風の訪問だと分かった。

「…後でまた寄りましょう…。」

 タタラも感づいており首を一つ縦に振った。
 スサリアは邪魔してはいけないとタタラと共にそっと部屋を離れた。

 それからスサリアは、スルトの枕の横に自ら作った焼き立てのクッキーをさりげなく起き、風の訪問を歓迎したのだった。

 この事は密かに息子スルトに会いに来ていたタケトルの目にも止まった。

「これは誰がなんだ?」

 王の問いに皆物おじげに戸惑っていた。
 そこへ侍女のタタラが部屋に入ってきた。

「国王陛下、ご挨拶申し上げます。」

 そういうタタラをタケトルは眉を顰めて口を開いた。

「タタラ、これはどういう事だ?我が息子の横に食べ物をおくとは…。」

 タタラはスッと背筋を伸ばして口を開いた。

「はい、国王陛下。こちらは王妃様が王子様の健康に成長される事を願って自らお作りになられているのです。」

 もちろんこの話はアドリブである。タタラの内心は心臓が跳ね上がり、冷や汗が止まらない。
 だが迷えば見透かされてしまう。

「…そうか。すまぬな、返って皆を驚かせてしまったな。それならば良い、しかし妃が直々に作った菓子とは…。少し興味がある…。」

 王はそういうとスルトの頭を優しく撫で部屋を出ていった。

 王が部屋を出てからタタラは全身の体の力がバサッと抜けた。
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