婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 ……アレクサンダー様……。

 目の前には泣きそうな顔でこちらを見ている彼の姿があった。

 どうして泣きそうな顔をしているのですか?

 その瞬間、真っ暗になり何もかもわからなくなった。

 目を覚ました時には、暖炉の火鉢が弾ける音が聞こえる。フカフカの暖かい布団に入っているからかとても居心地が良い。

 横を見ると彼が見つめたまま何も言わない。

 あぁ…夢でも良い…あなたが側にいてくれるなら私は強くいられる。

「アレクサンダー様…大好きです…。」

 すごく眠たいもう目が重たくて開けられずまた深い眠りに落ちていった。

 ここはどこだろうか、何故か目の前には幼い私とアレクサンダー様がいた。

 この記憶は、彼と何回目かの顔合わせの記憶だと思う。

 彼がキラキラした目で私に生き物の話をしている。

 幼い私は、彼に恋焦がれているが貴族の使命のように澄ました顔をしてお茶を飲み、どこか彼の話に興味がなさそうにしている。

 この光景を見て気が付いた。この時私は彼の気持ちをわかってあげられていなかったのだ。

 幼い彼がどこか諦めたような笑いを浮かべている。

 この時から彼との心の距離が少しずつ離れていたのだと自覚した。幼い彼は私の無自覚な行動にどれほど傷ついただろう。

 彼だけが悪かったのではなく、私も悪かったのだ。

 振られて当たり前だ。相手の心を知ろうとしなければ、相手も心を閉ざす。

 私は目の前の幼い彼にそっとつぶやいた。

「…ごめんなさい…ごめんなさい……めんなさい………さい……。」

 そこで目が覚めた。ベッドの天井が目の前に見えた。目には濡れた後、上半身を起こした時、私は驚いた。

 私の足元にベッドで突っ伏して寝ている彼がいた。

 夢ではないのか…。震える手で彼の頭を撫でた。

 気持ちよさそうにねむる彼の頭を撫でると愛おしさが募る。

 その時、彼が目を覚ます仕草を見せた。私は慌てて手を引きその姿を見守った。

「んっ…。……目が…覚めたか?」

 彼は起き上がると私の顔を覗き込むように近づいてきた。はじめての事で頬が赤くなる。

「…はい!…っ!」

 私はハッとした。慌てて起き上がり部屋を出て行こうとした時、手をグッと掴まれた。

「何してる?」

「私がここにいるわけにはいきません!」

 彼のそばにいるために、彼の母親にまでお願いしている。ここにいれば迷惑をかけてしまう。

 そう言って彼の手から逃れるように動いたが、びくともしない。

「お話ください!今の私はあなたともお話しできない身分の者です!」

「そんなこと気にしなくて良い。今はここで安静にしろ!医者からは、疲労と体を冷やし過ぎて安静にする様に言われている。」

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