婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

文字の大きさ
33 / 44

33

しおりを挟む
 少し落ち着きを取り戻して、ドレッサーの前に腰をかけた時、アドリアが訪れたと伝えがきた。

 彼を待たせまいと急ぎ向かうと、ネイビーの服を着こなした彼がわたしに気づき近づいてくる。

「お待たせしてごめんなさい。」

「いえ、そんなに待っていませんよ。今日のあなたは一段と綺麗ですね。」

 アドリアのスマートな褒め言葉に笑みで返しながら思った。

 (アレク様も私のこの姿を見てくれたら…。)

 ここにいない人間のことを思いながら胸がギュッと締め付けられる様だった。

「…いきましょうか。」

 アドリアが優しく私をエスコートしてくれた。それから会場につき、入り口のドアの前でわたしは深呼吸を二つほどしていた。

「心配いりません。あなたには彼や…そして私もいるんですから。」

「ありがとうございます。」

 アドリアがいてくれて助かったと思いつつ、お腹に力を入れて開くドアに一歩足を踏み出した。

 会場では賑やかな話し声がしていたが、私の姿を見た瞬間、そこにいた人々が静まり返った。

 (あぁ……。)

 人々の避難の視線が耐えきれず、つい立ち止まってしまった。

 身体が硬直して、どうにか震えを出さないようにと力を入れる。

「…大丈夫…。あなたには私がいます。」

 気づけば、私の腰に力強く手を回して、耳元にそっと耳打ちしてくれるアドリアの言葉で、落ち着きを取り戻せた。

「はぁ…ふぅ…。」

 小さく息を吸って吐き、体の力が少し抜けた頃、笑みを浮かべる事もできた。

 そんな私の様子に安心した。アドリアが、自分の知り合いの前へと連れ出してくれた。

 アドリアは初めは、気の柔らかい人に挨拶を交わして、私を友人だと紹介して私が負担にならないようにしてくれている。

 アドリアに感謝しつつも、彼に恥をかかさないようにと私も笑みを浮かべて応対していった。

 そんな様子を先に来ていたアレク様が鋭い視線で見ている事にも気づかなかった。

 アドリアと挨拶をして周り、少し休憩をとっていた時、目の前に会いたくなかった家族が前を歩いてきた。

 気弱な母以外、父をはじめ、兄や姉やその家族は軽蔑した眼差しをわたしに向けてきた。

 何か言われるのかと、身構えたが何も言わずに通り過ぎようとしたその時油断した。

 すれ違う瞬間…、

「…この面汚しがっ……‼︎」

 実の父からの罵倒を浴びた。別に期待していたわけではない。だが弱っていたこの時に避難の声を聞いてしまい、目から涙が流れてくる。

 アドリアもいると必死に手で止めようとするが止まらずに流れてくる。

 心配させまいと笑って誤魔化そうとした瞬間、体を強く優しく抱きしめられていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される

あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた…… けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。 目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。 「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」 茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。 執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。 一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。 「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」 正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。 平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。 最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。

処理中です...