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夫41歳、妻22歳、娘6歳(10)
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その日は、朝から太陽の光が眩しかった。澄み切る青空は、海のように青く、雲一つ見当たらない。
上等な浅紫色のドレスに身を包むオネルヴァは、キシュアス王国の紋章の入った豪華絢爛な馬車に乗せられた。一国の王女が輿入れするだけあり、この馬車を引く馬は四頭いる。
彼女の輿入れについてくるのは従者が二人、侍女が一人。それから、荷物番や護衛に当たる者。だが、それも国境までだと聞いている。
国境の関所にゼセール王国の関係者が迎えにきているとのこと。そこでオネルヴァはキシュアス王国の馬車からゼセール王国の馬車に乗り換えるらしい。
オネルヴァにとって馬車に乗るもの初めてで、王宮の敷地から出るのも初めてである。
馬車に乗る際に義父であり叔父でもあるキシュアス王が「すまない」と口にしたのが印象的だった。アルヴィドは口元に微笑みをたずさえていたが、何か言いたそうに唇を震わせていた。
「お世話になりました」
オネルヴァは二人にそう告げて、深々と頭を下げる。彼らは、父や兄よりも、父と兄のような存在の二人だったのだ。
従者に手を引かれて馬車に乗る。
内装もきらびやかで細かい細工が施してあり、とにかく広い。オネルヴァの隣に侍女が座り、向かい側には従者の二人が座る。
さらにもう一台、荷物と護衛を乗せた馬車が、後ろからついてくる。
カタカタと馬車に揺られながら、オネルヴァはぼんやりとしていた。
何事もなければ、今日中に国境の関所に着くはずだ。
車内は静かだった。オネルヴァについてきた侍女も、オネルヴァが王宮で暮らすようになってからつけられた侍女で、必要最小限の会話しかない。従者にいたっては、腕が立つ者としか聞いていないから、軍の人間なのだろう。
「オネルヴァ様。お疲れではありませんか?」
きっちりと決められた間隔で侍女は尋ねてくる。そこでオネルヴァが少しだけと答えると、馬車が止まる。
オネルヴァが疲れていないと答えても、一定の時間が経過すれば、やはり馬車は止まる。定期的に休憩をとるのが、馬車移動での常識のようだ。
日が暮れる前に関所に着いたのは幸いだった。
朝の早いうちにテシェバを出たせいだろう。オネルヴァは、ここでゼセール王国関係者へと引き渡される。
だが、今日はここに泊る。宿泊用のテントもゼセール王国の者によって準備されていた。
「お預かりします」
そう言って、オネルヴァの手を取った人物が、夫となる人物ではないということだけは理解した。目の前の彼は若い。
「オネルヴァ・イドリアーナ・クレルー・キシュアスです。お世話になります」
「私は、閣下の側近を務めておりますミラーン・パシェクと申します。このたびは、おめでとうございます」
深々と頭を下げた後、彼はオネルヴァの身の回りの世話をする侍女を紹介した。
侍女はヘニーと名乗った。
「キシュアスのものをゼセールに持ち込むことはできません。ドレスも、こちらで準備したものを着ていただく必要があります」
早速ヘニーによって、テントへと連れていかれたオネルヴァは身に着けているものを脱ぐようにと指示された。
上等な浅紫色のドレスに身を包むオネルヴァは、キシュアス王国の紋章の入った豪華絢爛な馬車に乗せられた。一国の王女が輿入れするだけあり、この馬車を引く馬は四頭いる。
彼女の輿入れについてくるのは従者が二人、侍女が一人。それから、荷物番や護衛に当たる者。だが、それも国境までだと聞いている。
国境の関所にゼセール王国の関係者が迎えにきているとのこと。そこでオネルヴァはキシュアス王国の馬車からゼセール王国の馬車に乗り換えるらしい。
オネルヴァにとって馬車に乗るもの初めてで、王宮の敷地から出るのも初めてである。
馬車に乗る際に義父であり叔父でもあるキシュアス王が「すまない」と口にしたのが印象的だった。アルヴィドは口元に微笑みをたずさえていたが、何か言いたそうに唇を震わせていた。
「お世話になりました」
オネルヴァは二人にそう告げて、深々と頭を下げる。彼らは、父や兄よりも、父と兄のような存在の二人だったのだ。
従者に手を引かれて馬車に乗る。
内装もきらびやかで細かい細工が施してあり、とにかく広い。オネルヴァの隣に侍女が座り、向かい側には従者の二人が座る。
さらにもう一台、荷物と護衛を乗せた馬車が、後ろからついてくる。
カタカタと馬車に揺られながら、オネルヴァはぼんやりとしていた。
何事もなければ、今日中に国境の関所に着くはずだ。
車内は静かだった。オネルヴァについてきた侍女も、オネルヴァが王宮で暮らすようになってからつけられた侍女で、必要最小限の会話しかない。従者にいたっては、腕が立つ者としか聞いていないから、軍の人間なのだろう。
「オネルヴァ様。お疲れではありませんか?」
きっちりと決められた間隔で侍女は尋ねてくる。そこでオネルヴァが少しだけと答えると、馬車が止まる。
オネルヴァが疲れていないと答えても、一定の時間が経過すれば、やはり馬車は止まる。定期的に休憩をとるのが、馬車移動での常識のようだ。
日が暮れる前に関所に着いたのは幸いだった。
朝の早いうちにテシェバを出たせいだろう。オネルヴァは、ここでゼセール王国関係者へと引き渡される。
だが、今日はここに泊る。宿泊用のテントもゼセール王国の者によって準備されていた。
「お預かりします」
そう言って、オネルヴァの手を取った人物が、夫となる人物ではないということだけは理解した。目の前の彼は若い。
「オネルヴァ・イドリアーナ・クレルー・キシュアスです。お世話になります」
「私は、閣下の側近を務めておりますミラーン・パシェクと申します。このたびは、おめでとうございます」
深々と頭を下げた後、彼はオネルヴァの身の回りの世話をする侍女を紹介した。
侍女はヘニーと名乗った。
「キシュアスのものをゼセールに持ち込むことはできません。ドレスも、こちらで準備したものを着ていただく必要があります」
早速ヘニーによって、テントへと連れていかれたオネルヴァは身に着けているものを脱ぐようにと指示された。
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