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妻子が可愛い夫と夫がよくわからない妻(9)
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◇◆◇◆ ◇◆◇◆
「お父さま、お母さま」
夕食の時間。エルシーが両親を呼んだ。
「今日、本当に一緒に寝てくれるのですか?」
瞳は嬉しそうに輝いているが、その奥からは『約束を守ってくれますよね』と強い意志を感じられた。
「ああ、もちろんだ。先ほどもその話をオネルヴァとしていたところだ。俺の休暇も明日までだし。今夜なら、ちょうどいいだろう」
「お父さま、ありがとうございます」
「エルシー、あまり興奮しては、眠れなくなりますよ」
オネルヴァは気の高まっているエルシーを落ち着かせようと、声をかけた。
エルシーはにかっと笑うと、あれほど苦手であった付け合わせの人参をパクリと食べた。
「なんだ。もう、人参は平気なんだな」
「お父さまとお母さまのおかげです。楽しみです。どこで、みんなで寝るのですか?」
やはりエルシーもそう思うのだろう。
「エルシーの部屋がいいだろう。慣れたところで眠ったほうが、気持ちも少しは落ち着くだろう?」
イグナーツがそう言うのも仕方のないことだ。先ほどからエルシーは、食事中であるにもかかわらずそわそわとしている。
「準備ができたら、エルシーのお部屋にいきますね」
オネルヴァが声をかけると、エルシーは恥ずかしそうにもじもじし始めた。そんな彼女が、愛らしいと感じた。
食事を終え、オネルヴァは自室へと戻る。
いくらエルシーがいるとはいっても、イグナーツと共寝をすることになってしまった。
一体、どのような格好で寝たらいいのだろうか。いつもと同じナイトドレスでいいのだろうか。
悩んだオネルヴァは、結局ヘニーを頼ることにした。
「まあまあ」
顔中に笑みを浮かべているヘニーだが、いつもと同じナイトドレスとガウンを手渡された。
「エルシーお嬢様もご一緒ですから、いつもと同じでいいのですよ」
その言葉に、ほっと胸を撫でおろす。
「ご案内します」
ヘニーに連れられてエルシーの部屋へと向かう。彼女の部屋は、オネルヴァの部屋の隣の隣であり、間に空き部屋がある。
「エルシー、オネルヴァです」
扉を叩いて扉越しに名乗ると、部屋の中からパタパタと足音が聞こえてきた。
勢いよく扉が開き、きらきらとした笑みで輝いているエルシーが、ばっとオネルヴァに抱き着いた。
「お母さま、本当に来てくださったのですね」
「約束ですから。すぐに旦那様も来ると思います」
オネルヴァが目配せをすると、ヘニーは一礼してその場を去った。オネルヴァはエルシーに引っ張られるようにして部屋の中へと連れていかれる。
そこは珊瑚色の壁紙に淡い花の柄が描かれ、見るからに子ども部屋といった色調である。部屋の奥に、天蓋つきの寝台がある。
「まぁ」
オネルヴァがつい声を漏らしたのは、エルシーの寝台にはたくさんのうさぎのぬいぐるみが並べられていたからだ。ぬいぐるみは赤ん坊ほどの大きさであり、オネルヴァでも両手で抱きかかえる必要がある。
「かわいいうさぎさんですね」
「お父さまから、毎年お誕生日にもらいます」
エルシーは、毎日うさぎのぬいぐるみたちと寝ていたようだ。ぬいぐるみは六体。それはエルシーが六歳だからだろう。
「今日はお父さまとお母さまが一緒なので、うさちゃんはこちらで寝ます」
エルシーは寝台の上のぬいぐるみを、ソファの上にと移動させる。うさぎがいなくなると、大人二人は余裕で眠れる広さができた。
「お母さま。お父さまが来るまで、ご本を読んでください」
一冊の絵本を手にしたエルシーが、寝台によじ登った。
「そうですね。ご本を読みながら、旦那様を待ちましょう」
枕を背もたれ代わりにして、二人で並んで寝台の上に足を伸ばして座る。
オネルヴァはエルシーから絵本を預かり、読み始めた。
「お父さま、お母さま」
夕食の時間。エルシーが両親を呼んだ。
「今日、本当に一緒に寝てくれるのですか?」
瞳は嬉しそうに輝いているが、その奥からは『約束を守ってくれますよね』と強い意志を感じられた。
「ああ、もちろんだ。先ほどもその話をオネルヴァとしていたところだ。俺の休暇も明日までだし。今夜なら、ちょうどいいだろう」
「お父さま、ありがとうございます」
「エルシー、あまり興奮しては、眠れなくなりますよ」
オネルヴァは気の高まっているエルシーを落ち着かせようと、声をかけた。
エルシーはにかっと笑うと、あれほど苦手であった付け合わせの人参をパクリと食べた。
「なんだ。もう、人参は平気なんだな」
「お父さまとお母さまのおかげです。楽しみです。どこで、みんなで寝るのですか?」
やはりエルシーもそう思うのだろう。
「エルシーの部屋がいいだろう。慣れたところで眠ったほうが、気持ちも少しは落ち着くだろう?」
イグナーツがそう言うのも仕方のないことだ。先ほどからエルシーは、食事中であるにもかかわらずそわそわとしている。
「準備ができたら、エルシーのお部屋にいきますね」
オネルヴァが声をかけると、エルシーは恥ずかしそうにもじもじし始めた。そんな彼女が、愛らしいと感じた。
食事を終え、オネルヴァは自室へと戻る。
いくらエルシーがいるとはいっても、イグナーツと共寝をすることになってしまった。
一体、どのような格好で寝たらいいのだろうか。いつもと同じナイトドレスでいいのだろうか。
悩んだオネルヴァは、結局ヘニーを頼ることにした。
「まあまあ」
顔中に笑みを浮かべているヘニーだが、いつもと同じナイトドレスとガウンを手渡された。
「エルシーお嬢様もご一緒ですから、いつもと同じでいいのですよ」
その言葉に、ほっと胸を撫でおろす。
「ご案内します」
ヘニーに連れられてエルシーの部屋へと向かう。彼女の部屋は、オネルヴァの部屋の隣の隣であり、間に空き部屋がある。
「エルシー、オネルヴァです」
扉を叩いて扉越しに名乗ると、部屋の中からパタパタと足音が聞こえてきた。
勢いよく扉が開き、きらきらとした笑みで輝いているエルシーが、ばっとオネルヴァに抱き着いた。
「お母さま、本当に来てくださったのですね」
「約束ですから。すぐに旦那様も来ると思います」
オネルヴァが目配せをすると、ヘニーは一礼してその場を去った。オネルヴァはエルシーに引っ張られるようにして部屋の中へと連れていかれる。
そこは珊瑚色の壁紙に淡い花の柄が描かれ、見るからに子ども部屋といった色調である。部屋の奥に、天蓋つきの寝台がある。
「まぁ」
オネルヴァがつい声を漏らしたのは、エルシーの寝台にはたくさんのうさぎのぬいぐるみが並べられていたからだ。ぬいぐるみは赤ん坊ほどの大きさであり、オネルヴァでも両手で抱きかかえる必要がある。
「かわいいうさぎさんですね」
「お父さまから、毎年お誕生日にもらいます」
エルシーは、毎日うさぎのぬいぐるみたちと寝ていたようだ。ぬいぐるみは六体。それはエルシーが六歳だからだろう。
「今日はお父さまとお母さまが一緒なので、うさちゃんはこちらで寝ます」
エルシーは寝台の上のぬいぐるみを、ソファの上にと移動させる。うさぎがいなくなると、大人二人は余裕で眠れる広さができた。
「お母さま。お父さまが来るまで、ご本を読んでください」
一冊の絵本を手にしたエルシーが、寝台によじ登った。
「そうですね。ご本を読みながら、旦那様を待ちましょう」
枕を背もたれ代わりにして、二人で並んで寝台の上に足を伸ばして座る。
オネルヴァはエルシーから絵本を預かり、読み始めた。
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