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第七章(7)
どこか震える声で懇願されてしまえば、ディアナも「テオさん?」と声をかけ、彼の顔を下から見上げる。目が合った。
「くそっ……」
悔しそうに暴言を吐くテオドールの姿を、ディアナは初めて目にした。
「今になってわかった。あの古文書に書いてあった、あの男がどうしてあんな行動に走ったのか……。ディアナくん、私は今、君に口づけをしたいと思っている。口づけをしてもいいだろうか?」
拒む理由はない。ディアナだってテオドールとキスをしたいし、あわよくばその先までという下心もある。
「はい」
返事をしてみたものの、ディアナもあの件をのぞけば、誰かとキスをするのは初めてである。唇と唇を合わせる軽いものから、舌を絡ませる濃厚なものまであるが、ここは初心者らしく唇を合わせるキスだろう。
ディアナは軽く目をつむり、唇の触れ合いを待った。彼がもぞりと動く気配が伝わってくる。
「……んっ」
不意打ちのようなキスに、ディアナも息を詰めた。唇同士がぴったり重なったが、それ以上の動きはない。身体はきつくテオドールに抱きしめられ、ディアナも彼の背に手をまわしてはみたが、この後、どうするのが正解なのか。
ふと、唇が離れ、テオドールは言葉を紡ぐ。
「ディアナくんは、甘いんだな……」
いったいどこでそんな殺し文句を覚えてきたのか。
「これもあれに書いてあったとおりだ。もっと君を味わってもいいだろうか……」
あの古文書が、テオドールの恋愛指南書として活躍しているようだ。だが、ディアナにもちろん断る理由はない。自制しなければ、自分からがっついていたかもしれないくらい、彼との触れ合いを心待ちにしている。
言葉にするのももどかしく、コクリと頷いたとたんに、彼の顔が近づいてきた。
唇を丸呑みされてしまうくらいの勢いで食まれ、ディアナが驚いて少しだけ口を開けた瞬間に、彼の舌が入り込んできた。
「……んっ……ふぅっ」
ざらりとした感触が舌に触れた瞬間、背筋にもざわりとした感覚が走る。
「はっ……ンっ……」
初めての感覚に、どう反応したらいいかがわからない。ただもどかしさと気持ちよさがじわじわと生まれてきて、ディアナは身をよじる。
静まり返った室内に、唾液の絡まる淫らな水音が響き、まるで悪いことをしているかのような背徳感すら生まれてくる。次第に鼓動も高まり、息も途切れ途切れになりつつあるが、それでもこの甘い時間に溺れたい。
呼吸と共に鼻から抜けるような甘い声は、もはや自分のものとは思えないほど。
「あぁっ……んっ……」
きつく抱きしめられ、食べられてしまうのではないかと思えるほどの激しい口づけ。ディアナもお腹の奥に熱がたまり、全身で彼が欲しいと訴え始めている。と同時に、腹部に当たる硬いものの存在。
彼も興奮しているのだ。
ディアナはテオドールの背にまわしていた両手を解放して、そのまま彼の頬を包み込む。同じようにテオドールもディアナの頬をがっしりと掴んで、逃れられない口づけを交わす。
どのくらい、その行為に夢中になっていたかわからない。どちらともなく距離をとれば、二人を繋いでいた銀糸がつつっと切れた。
「ディアナくん」
吸い込まれそうなほどの瞳が、ディアナを物欲しげに見つめている。
「もっと君に近づきたい。これ以上、望んでは罰が当たるだろうか……」
「いえ……わたしも、もっとテオさんに触れたいです」
硬くなった彼の場所をそっと指でなぞる。
「……くっ」
苦しそうなうめき声が彼の口から漏れた。
「ディアナくんは、私を誘っているのか?」
そんな高等技術をディアナが使えるわけがない。ただ、主張し始めたそこが気になっただけ。
「いや。だが、こんな場所では……」と、テオドールがぶつぶつ言い始める。
「ディアナくん……この後、君の部屋に行くからな!」
「いえ、わたしがテオさんの部屋に行きます!」
売り言葉に買い言葉ではないが、ディアナはなぜかそう答えていた。
「くそっ……」
悔しそうに暴言を吐くテオドールの姿を、ディアナは初めて目にした。
「今になってわかった。あの古文書に書いてあった、あの男がどうしてあんな行動に走ったのか……。ディアナくん、私は今、君に口づけをしたいと思っている。口づけをしてもいいだろうか?」
拒む理由はない。ディアナだってテオドールとキスをしたいし、あわよくばその先までという下心もある。
「はい」
返事をしてみたものの、ディアナもあの件をのぞけば、誰かとキスをするのは初めてである。唇と唇を合わせる軽いものから、舌を絡ませる濃厚なものまであるが、ここは初心者らしく唇を合わせるキスだろう。
ディアナは軽く目をつむり、唇の触れ合いを待った。彼がもぞりと動く気配が伝わってくる。
「……んっ」
不意打ちのようなキスに、ディアナも息を詰めた。唇同士がぴったり重なったが、それ以上の動きはない。身体はきつくテオドールに抱きしめられ、ディアナも彼の背に手をまわしてはみたが、この後、どうするのが正解なのか。
ふと、唇が離れ、テオドールは言葉を紡ぐ。
「ディアナくんは、甘いんだな……」
いったいどこでそんな殺し文句を覚えてきたのか。
「これもあれに書いてあったとおりだ。もっと君を味わってもいいだろうか……」
あの古文書が、テオドールの恋愛指南書として活躍しているようだ。だが、ディアナにもちろん断る理由はない。自制しなければ、自分からがっついていたかもしれないくらい、彼との触れ合いを心待ちにしている。
言葉にするのももどかしく、コクリと頷いたとたんに、彼の顔が近づいてきた。
唇を丸呑みされてしまうくらいの勢いで食まれ、ディアナが驚いて少しだけ口を開けた瞬間に、彼の舌が入り込んできた。
「……んっ……ふぅっ」
ざらりとした感触が舌に触れた瞬間、背筋にもざわりとした感覚が走る。
「はっ……ンっ……」
初めての感覚に、どう反応したらいいかがわからない。ただもどかしさと気持ちよさがじわじわと生まれてきて、ディアナは身をよじる。
静まり返った室内に、唾液の絡まる淫らな水音が響き、まるで悪いことをしているかのような背徳感すら生まれてくる。次第に鼓動も高まり、息も途切れ途切れになりつつあるが、それでもこの甘い時間に溺れたい。
呼吸と共に鼻から抜けるような甘い声は、もはや自分のものとは思えないほど。
「あぁっ……んっ……」
きつく抱きしめられ、食べられてしまうのではないかと思えるほどの激しい口づけ。ディアナもお腹の奥に熱がたまり、全身で彼が欲しいと訴え始めている。と同時に、腹部に当たる硬いものの存在。
彼も興奮しているのだ。
ディアナはテオドールの背にまわしていた両手を解放して、そのまま彼の頬を包み込む。同じようにテオドールもディアナの頬をがっしりと掴んで、逃れられない口づけを交わす。
どのくらい、その行為に夢中になっていたかわからない。どちらともなく距離をとれば、二人を繋いでいた銀糸がつつっと切れた。
「ディアナくん」
吸い込まれそうなほどの瞳が、ディアナを物欲しげに見つめている。
「もっと君に近づきたい。これ以上、望んでは罰が当たるだろうか……」
「いえ……わたしも、もっとテオさんに触れたいです」
硬くなった彼の場所をそっと指でなぞる。
「……くっ」
苦しそうなうめき声が彼の口から漏れた。
「ディアナくんは、私を誘っているのか?」
そんな高等技術をディアナが使えるわけがない。ただ、主張し始めたそこが気になっただけ。
「いや。だが、こんな場所では……」と、テオドールがぶつぶつ言い始める。
「ディアナくん……この後、君の部屋に行くからな!」
「いえ、わたしがテオさんの部屋に行きます!」
売り言葉に買い言葉ではないが、ディアナはなぜかそう答えていた。
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