【R18】旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!

澤谷弥(さわたに わたる)

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3.初顔合わせ(2)

 ラフォン城は、石造りの年代を感じさせる城であった。緑色の蔦が城を守るかのようにして絡みつき、青い尖塔は空に向かって真っ直ぐ伸びていた。天気の良い日はその青が空に溶け込んでしまうだろう。

「古い城だが、その分、造りはしっかりとしているし、中も快適で過ごしやすいはずだ」

 オレリアが案内されたのは、王城の本館と回廊でつながっている離れの館であった。

「ここが、陛下が俺たちのために整えてくれた部屋だ。だが、俺はまだ向こうで寝泊まりをする。やることが多くてな」
「……はい」

 アーネストの顔を見上げて、すぐに視線を逸らす。

 彼は、花嫁がオレリアでがっかりしているのだ。誰だって、がっかりする。何よりもオレリアはまだ子ども。

 彼のような立派な男の花嫁が、たった八歳の子どもなのだ。
 誰がどうみたって、おかしな話である。

「わたしのような者で、申し訳ありません……」

 くしゃりと、頭を大きな手がなでた。

「俺もお前には聞きたいことがたくさんある。だが今は、それを問いただすつもりはない。とにかく、ゆっくり休んでくれ……メーラ殿……」
「は、はい……」
「俺の花嫁を、よろしく頼む。俺は、本館のほうにいる。用があるなら遠慮なく来てもらってかまわない。夕食はダスティン……陛下たちと一緒にとることになるが、それは問題ないか?」
「はい……閣下のお言葉に従います」

 また、アーネストは怪訝そうに眉根を寄せてから、静かに部屋を出ていった。

 扉が閉まるのを見届けてから、オレリアは肩を大きく上下させた。

「……はぁ。緊張したわ……」
「立派でしたよ、オレリア様」

 メーラの言葉で、オレリアの気持ちもふと緩む。

「閣下はお優しい方でしたね」

 それはアーネストが大人だからだ。きっと彼は姉のミレイアが来ると思っていたのだろう。だから、花嫁の年を十八歳と言ってみたり、メーラを花嫁と勘違いしてみたり。
 オレリアが望まれていないことなど、一目瞭然だった。だけど、この結婚をないものにはできない。

「メーラ。そういえば、閣下のお年は、いくつだったかしら?」
「……そうですね。確か、今年で二十八歳になられたかと……」

 オレリアとは二十歳も年の差がある。誰が見てもふざけた結婚だ。そしてこのふざけた結婚を考えたのは、トラゴス国王に間違いないだろう。ずっとそんな思いはしていたのだが、アーネストとのやりとりで、それは確信にかわった。

 そこで、扉が叩かれた。返事をすれば、嫁入りの荷物が次から次へとやってくる。それでも、一国の王女の嫁入りのわりには荷物は少ないかもしれない。普段着る用のドレスが数着とナイトドレス、そして純白のウェディングドレス。

 あの父王のことだから、ウェディングドレスの準備さえ渋るかと思ったが、こうして与えてくれたことには感謝しかない。

『ふん。古くさいこのドレスでも持っていくがいい』

 だけどメーラは気がついたようだ。父王がオレリアに渡したドレスは、オレリアの母親が着たもの。
 もちろん、今のオレリアにサイズが合うわけがない。メーラがせっせと直してくれたから、なんとか着られるようになった。
 そしてオレリアの結婚式には、トラゴス国側の人間は誰も出席しない。

 この結婚が何を意味するのか、そこにいる者は悟るだろう。

「オレリア様、お顔にしわができておりますよ?」

 荷物の片づけを終えたメーラが、いつの間にか戻ってきていた。そして、オレリアにお茶を淹れる。

「この茶葉もこの茶葉も……一級品ばかりですよ……。思っていたよりも、ハバリー国はすごいのかもしれませんね」

 メーラが何を思ってそう言ったのか、オレリアにはさっぱりわからない。

 ただ、メーラが淹れてくれた紅茶が渋くなく、ミルクを入れなくても飲めた。
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