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3.初顔合わせ(2)
ラフォン城は、石造りの年代を感じさせる城であった。緑色の蔦が城を守るかのようにして絡みつき、青い尖塔は空に向かって真っ直ぐ伸びていた。天気の良い日はその青が空に溶け込んでしまうだろう。
「古い城だが、その分、造りはしっかりとしているし、中も快適で過ごしやすいはずだ」
オレリアが案内されたのは、王城の本館と回廊でつながっている離れの館であった。
「ここが、陛下が俺たちのために整えてくれた部屋だ。だが、俺はまだ向こうで寝泊まりをする。やることが多くてな」
「……はい」
アーネストの顔を見上げて、すぐに視線を逸らす。
彼は、花嫁がオレリアでがっかりしているのだ。誰だって、がっかりする。何よりもオレリアはまだ子ども。
彼のような立派な男の花嫁が、たった八歳の子どもなのだ。
誰がどうみたって、おかしな話である。
「わたしのような者で、申し訳ありません……」
くしゃりと、頭を大きな手がなでた。
「俺もお前には聞きたいことがたくさんある。だが今は、それを問いただすつもりはない。とにかく、ゆっくり休んでくれ……メーラ殿……」
「は、はい……」
「俺の花嫁を、よろしく頼む。俺は、本館のほうにいる。用があるなら遠慮なく来てもらってかまわない。夕食はダスティン……陛下たちと一緒にとることになるが、それは問題ないか?」
「はい……閣下のお言葉に従います」
また、アーネストは怪訝そうに眉根を寄せてから、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まるのを見届けてから、オレリアは肩を大きく上下させた。
「……はぁ。緊張したわ……」
「立派でしたよ、オレリア様」
メーラの言葉で、オレリアの気持ちもふと緩む。
「閣下はお優しい方でしたね」
それはアーネストが大人だからだ。きっと彼は姉のミレイアが来ると思っていたのだろう。だから、花嫁の年を十八歳と言ってみたり、メーラを花嫁と勘違いしてみたり。
オレリアが望まれていないことなど、一目瞭然だった。だけど、この結婚をないものにはできない。
「メーラ。そういえば、閣下のお年は、いくつだったかしら?」
「……そうですね。確か、今年で二十八歳になられたかと……」
オレリアとは二十歳も年の差がある。誰が見てもふざけた結婚だ。そしてこのふざけた結婚を考えたのは、トラゴス国王に間違いないだろう。ずっとそんな思いはしていたのだが、アーネストとのやりとりで、それは確信にかわった。
そこで、扉が叩かれた。返事をすれば、嫁入りの荷物が次から次へとやってくる。それでも、一国の王女の嫁入りのわりには荷物は少ないかもしれない。普段着る用のドレスが数着とナイトドレス、そして純白のウェディングドレス。
あの父王のことだから、ウェディングドレスの準備さえ渋るかと思ったが、こうして与えてくれたことには感謝しかない。
『ふん。古くさいこのドレスでも持っていくがいい』
だけどメーラは気がついたようだ。父王がオレリアに渡したドレスは、オレリアの母親が着たもの。
もちろん、今のオレリアにサイズが合うわけがない。メーラがせっせと直してくれたから、なんとか着られるようになった。
そしてオレリアの結婚式には、トラゴス国側の人間は誰も出席しない。
この結婚が何を意味するのか、そこにいる者は悟るだろう。
「オレリア様、お顔にしわができておりますよ?」
荷物の片づけを終えたメーラが、いつの間にか戻ってきていた。そして、オレリアにお茶を淹れる。
「この茶葉もこの茶葉も……一級品ばかりですよ……。思っていたよりも、ハバリー国はすごいのかもしれませんね」
メーラが何を思ってそう言ったのか、オレリアにはさっぱりわからない。
ただ、メーラが淹れてくれた紅茶が渋くなく、ミルクを入れなくても飲めた。
「古い城だが、その分、造りはしっかりとしているし、中も快適で過ごしやすいはずだ」
オレリアが案内されたのは、王城の本館と回廊でつながっている離れの館であった。
「ここが、陛下が俺たちのために整えてくれた部屋だ。だが、俺はまだ向こうで寝泊まりをする。やることが多くてな」
「……はい」
アーネストの顔を見上げて、すぐに視線を逸らす。
彼は、花嫁がオレリアでがっかりしているのだ。誰だって、がっかりする。何よりもオレリアはまだ子ども。
彼のような立派な男の花嫁が、たった八歳の子どもなのだ。
誰がどうみたって、おかしな話である。
「わたしのような者で、申し訳ありません……」
くしゃりと、頭を大きな手がなでた。
「俺もお前には聞きたいことがたくさんある。だが今は、それを問いただすつもりはない。とにかく、ゆっくり休んでくれ……メーラ殿……」
「は、はい……」
「俺の花嫁を、よろしく頼む。俺は、本館のほうにいる。用があるなら遠慮なく来てもらってかまわない。夕食はダスティン……陛下たちと一緒にとることになるが、それは問題ないか?」
「はい……閣下のお言葉に従います」
また、アーネストは怪訝そうに眉根を寄せてから、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まるのを見届けてから、オレリアは肩を大きく上下させた。
「……はぁ。緊張したわ……」
「立派でしたよ、オレリア様」
メーラの言葉で、オレリアの気持ちもふと緩む。
「閣下はお優しい方でしたね」
それはアーネストが大人だからだ。きっと彼は姉のミレイアが来ると思っていたのだろう。だから、花嫁の年を十八歳と言ってみたり、メーラを花嫁と勘違いしてみたり。
オレリアが望まれていないことなど、一目瞭然だった。だけど、この結婚をないものにはできない。
「メーラ。そういえば、閣下のお年は、いくつだったかしら?」
「……そうですね。確か、今年で二十八歳になられたかと……」
オレリアとは二十歳も年の差がある。誰が見てもふざけた結婚だ。そしてこのふざけた結婚を考えたのは、トラゴス国王に間違いないだろう。ずっとそんな思いはしていたのだが、アーネストとのやりとりで、それは確信にかわった。
そこで、扉が叩かれた。返事をすれば、嫁入りの荷物が次から次へとやってくる。それでも、一国の王女の嫁入りのわりには荷物は少ないかもしれない。普段着る用のドレスが数着とナイトドレス、そして純白のウェディングドレス。
あの父王のことだから、ウェディングドレスの準備さえ渋るかと思ったが、こうして与えてくれたことには感謝しかない。
『ふん。古くさいこのドレスでも持っていくがいい』
だけどメーラは気がついたようだ。父王がオレリアに渡したドレスは、オレリアの母親が着たもの。
もちろん、今のオレリアにサイズが合うわけがない。メーラがせっせと直してくれたから、なんとか着られるようになった。
そしてオレリアの結婚式には、トラゴス国側の人間は誰も出席しない。
この結婚が何を意味するのか、そこにいる者は悟るだろう。
「オレリア様、お顔にしわができておりますよ?」
荷物の片づけを終えたメーラが、いつの間にか戻ってきていた。そして、オレリアにお茶を淹れる。
「この茶葉もこの茶葉も……一級品ばかりですよ……。思っていたよりも、ハバリー国はすごいのかもしれませんね」
メーラが何を思ってそう言ったのか、オレリアにはさっぱりわからない。
ただ、メーラが淹れてくれた紅茶が渋くなく、ミルクを入れなくても飲めた。
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