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9.夫との再会(1)
(どうしましょう……)
オレリアの心臓は高鳴っていた。他の人にも聞こえてしまうのではないかと思えるくらい、ドクドクとうるさい。
(アーネストさまだ……)
目の前の二人組。一人はジョアンという男性で、オレリアよりも五歳くらい年上の男性。というのは、彼は食堂によく食べに来てくれるからだ。
彼もミルコ族というのは知っていたし、軍で仕事をしているのも知っていた。そんな彼が連れてきたのがアーネストであった。
「やった。今日はリリーさんだ」
オレリアが注文を聞こうとしたら、ジョアンがオレリアの偽名を口にした。
リリー。それは、オレリアが食堂で働くときの名前。
「あ、ジョアンさん。こんにちは」
いつもと同じように挨拶をして、注文を待つ。
「こんにちは、リリーさん。僕はおすすめランチ。閣下はどうされます?」
「俺は、なんでもいい」
「うわ、出た。めんどくさい男の典型。なんでもいい。てことで、おすすめランチを二つで」
「はい、おすすめランチ。二つですね。少々お待ちください」
にっこりと微笑んでその場を立ち去るが、上手に笑えただろうかと不安にもなる。
アーネストの姿を見たのは十二年ぶり。だけど、すぐにわかった。髪は長くなっていたが、少し痩せただろうか。
(どうしましょう、どうしましょう……)
自然と顔がにやけてくる。嬉しくて、涙までこぼれそうになる。
「エミさん、エミさん、どうしましょう。あ、注文です。おすすめ二つです」
「はい、おすすめ二つね。って、どうしたの? リリー」
「アーネストさまが、いらしてくれました」
「あらあら……」
エミは食堂で働く女性をとりまとめている中心的人物で、オレリアの事情も知っている。ダスティンが協力を頼んだのが彼女なのだ。
「よかったわね、リリー。さ、さ。泣くんじゃないよ。まずは、料理をしっかりと食べてもらおうね。この日のために、あんたもせっせと料理をしていたんだろ?」
「……はい」
オレリアは食堂で主に給仕を担当していたが、それ以外にも料理を担当することもあった。
トレイの上に用意された料理を並べていく。パンにスープ、それからメインの肉料理。
訓練などでお腹を空かせた兵士たちのために、お昼はお腹にたまるものを準備している。それから付け合わせの小皿の料理。
今日の付け合わせは、ミルコ族に伝わる野菜料理。これは、オレリアがシャトランから教えてもらった料理でもある。
――アーネストはね、昔からこれが好きだったのよ。お肉ばかり食べる子だったんだけど、この料理であれば野菜も食べられるって。
シャトランには感謝しかない。
トレイに料理を並べ終えたオレリアは、それをワゴンの上にのせた。ワゴンを押して、先ほどの席に向かう。
「お待たせしました。おすすめランチ二つになります」
アーネストの前に料理を並べるが、緊張のあまり手がぷるぷると震えた。
「ごゆっくりどうぞ」
もしかしたら、声も震えていたかもしれない。急いで厨房のほうに戻る。
「エミさん、エミさん。どうしましょう、どうしましょう」
「よかったね。最近、閣下がこちらに来てくれなくてね。心配していたところだったんだよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。ここ、一か月くらいかね。ぱたっと食堂に来なくなって、何を食べているんだろうという話になったのさ。まぁ、あの人なら霞でも食べて生きていそうだけど」
一か月前。それはオレリアがアーネストから手紙を受け取った時期と一致するのではないだろうか。
「でも、お顔を見られただけで嬉しいです」
「本当に健気だねぇ。閣下も、なんでこんないい子と別れようとだなんて、思ったんだろうねぇ」
それはオレリアが聞きたい。
十二年間、放っておかれていたのは事実。だけど、いじめられたわけではないし、鞭で叩かれたわけでもない。手紙は届いたか届かないかわからないけれども、突っ返されたわけでもない。
オレリアの心臓は高鳴っていた。他の人にも聞こえてしまうのではないかと思えるくらい、ドクドクとうるさい。
(アーネストさまだ……)
目の前の二人組。一人はジョアンという男性で、オレリアよりも五歳くらい年上の男性。というのは、彼は食堂によく食べに来てくれるからだ。
彼もミルコ族というのは知っていたし、軍で仕事をしているのも知っていた。そんな彼が連れてきたのがアーネストであった。
「やった。今日はリリーさんだ」
オレリアが注文を聞こうとしたら、ジョアンがオレリアの偽名を口にした。
リリー。それは、オレリアが食堂で働くときの名前。
「あ、ジョアンさん。こんにちは」
いつもと同じように挨拶をして、注文を待つ。
「こんにちは、リリーさん。僕はおすすめランチ。閣下はどうされます?」
「俺は、なんでもいい」
「うわ、出た。めんどくさい男の典型。なんでもいい。てことで、おすすめランチを二つで」
「はい、おすすめランチ。二つですね。少々お待ちください」
にっこりと微笑んでその場を立ち去るが、上手に笑えただろうかと不安にもなる。
アーネストの姿を見たのは十二年ぶり。だけど、すぐにわかった。髪は長くなっていたが、少し痩せただろうか。
(どうしましょう、どうしましょう……)
自然と顔がにやけてくる。嬉しくて、涙までこぼれそうになる。
「エミさん、エミさん、どうしましょう。あ、注文です。おすすめ二つです」
「はい、おすすめ二つね。って、どうしたの? リリー」
「アーネストさまが、いらしてくれました」
「あらあら……」
エミは食堂で働く女性をとりまとめている中心的人物で、オレリアの事情も知っている。ダスティンが協力を頼んだのが彼女なのだ。
「よかったわね、リリー。さ、さ。泣くんじゃないよ。まずは、料理をしっかりと食べてもらおうね。この日のために、あんたもせっせと料理をしていたんだろ?」
「……はい」
オレリアは食堂で主に給仕を担当していたが、それ以外にも料理を担当することもあった。
トレイの上に用意された料理を並べていく。パンにスープ、それからメインの肉料理。
訓練などでお腹を空かせた兵士たちのために、お昼はお腹にたまるものを準備している。それから付け合わせの小皿の料理。
今日の付け合わせは、ミルコ族に伝わる野菜料理。これは、オレリアがシャトランから教えてもらった料理でもある。
――アーネストはね、昔からこれが好きだったのよ。お肉ばかり食べる子だったんだけど、この料理であれば野菜も食べられるって。
シャトランには感謝しかない。
トレイに料理を並べ終えたオレリアは、それをワゴンの上にのせた。ワゴンを押して、先ほどの席に向かう。
「お待たせしました。おすすめランチ二つになります」
アーネストの前に料理を並べるが、緊張のあまり手がぷるぷると震えた。
「ごゆっくりどうぞ」
もしかしたら、声も震えていたかもしれない。急いで厨房のほうに戻る。
「エミさん、エミさん。どうしましょう、どうしましょう」
「よかったね。最近、閣下がこちらに来てくれなくてね。心配していたところだったんだよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。ここ、一か月くらいかね。ぱたっと食堂に来なくなって、何を食べているんだろうという話になったのさ。まぁ、あの人なら霞でも食べて生きていそうだけど」
一か月前。それはオレリアがアーネストから手紙を受け取った時期と一致するのではないだろうか。
「でも、お顔を見られただけで嬉しいです」
「本当に健気だねぇ。閣下も、なんでこんないい子と別れようとだなんて、思ったんだろうねぇ」
それはオレリアが聞きたい。
十二年間、放っておかれていたのは事実。だけど、いじめられたわけではないし、鞭で叩かれたわけでもない。手紙は届いたか届かないかわからないけれども、突っ返されたわけでもない。
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