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10.気になる女性(4)
ジョアンが夜間警備の計画書の資料を集め、まとめてきたため、アーネストはそれを確認した。すぐに行動に移す者がいるなら、こちらもそれに応える。というのが、アーネストの持論である。
ジョアンはああ見えて、やるときはやるし、やらないときはやらない。ムラッ気を持ち合わせているが、やるときの彼は大いに期待ができる。
その資料から出される利点と欠点を洗い出し、実行まで持っていくのがアーネストの仕事である。しかしこれには追加予算が必要であるため、ダスティンの決済も必要だろう。その前に、会議にもかけなければならない。
そうやっていろいろと対応をしていたら、今日の夕食も遅くなってしまった。ジョアンはとっくに帰っている。
遅めの夕食のため一人で食堂に向かうと、またリリーの姿が目に入る。
またこんな遅くまでと心の中で叱責するが、無視を決め込んだ。一度は注意したのだ。これ以上、彼女に深入りしたら、特別な感情を持ち合わせていると思われてしまうだろう。
以前もジョアンがそのようなことを口にして、非常に焦った。
今日は男性の給仕が注文を聞きにきた。気もそぞろになりながらも、いつもと同じものを頼む。
いつもと同じ料理が出され、口へと運ぶ。だけど今日は、味気なかった。いつもと同じであるはずなのに。
気がつくと、リリーの姿が見えない。もう、帰ったのだろう。
食事を終え、支払いを済ませて外に出る。
夜風が少し長くなった髪を弄びつつ、頬をなでていく。それが、食事によって火照った身体に心地よい。
(彼女は、無事、帰れただろうか)
右側に顔を向けると、広場を照らすガス灯がぼんやりと見えた。
「……きゃっ」
女性特有の甲高い悲鳴がかすかに聞こえた。
その悲鳴を聞いて、一人の女性の顔が思い浮かぶ。いやな予感がした。
いつもであれば左側の回廊に向かって歩くところを、反対方向に向かって走り出した。広場から居住区の三区に向かう。
一度、彼女を送り届けたことがあってよかった。
「……やっ……んっ」
悲鳴はくぐもった声になり、誰かが口を封じようとしている様子が伝わってきた。
「何をしている」
三区へ向かう道の路地裏。建物の壁に人を追いやって、自由を奪おうとしている男が二人。
「な、こんな時間に。軍人か? なんでこんなところに?」
話し方から察するに、スワン族の男のようだ。
「た、たすけてっ!」
口が自由になった隙に彼女が助けを求めたため、アーネストは剣を抜く。
「黙れ」
「んっ」
「彼女を離しなさい」
逆上させないように、だけど威嚇するように。落ち着きを払いつつ低く響く声で、静かに声をかけた。
一対二。さらにリリーが捕まっている。明らかにアーネストのほうが、分が悪い。
「ちっ。ずらかるぞ」
だけど彼らはアーネストには敵わないと思ったのだろう。リリーを押しのけて、走り去っていく。
「きゃっ」
倒れそうになった彼女を思わず抱きとめ、気がついたときには男たちの姿はどこにも見えなかった。
「すまない。取り逃がした」
「いえ……ありがとうございます……」
腕の中の小さな身体は震えていた。
「知っている男か?」
「は、はい。何度か、食堂で見かけたことは……」
「そうか」
ジョアンから聞いた話とつながるものがある。これは詳しく話を聞いておいたほうがいいだろう。だが、今日は無理だ。
「家まで送ろう」
「い、いえ。大丈夫です」
彼女はなんとか一人で立とうとしたが、力が入らないのか一歩を踏み出すことができない。
「不快かもしれないが、俺がお前を抱いて家まで連れていく。いいな?」
「は、はい……」
抱き上げた彼女は、思っていたよりも軽かった。
こうやって誰かを抱き上げたのは、あのとき以来だ。結婚式の食事会のあと、オレリアを部屋まで連れていったとき。
ジョアンはああ見えて、やるときはやるし、やらないときはやらない。ムラッ気を持ち合わせているが、やるときの彼は大いに期待ができる。
その資料から出される利点と欠点を洗い出し、実行まで持っていくのがアーネストの仕事である。しかしこれには追加予算が必要であるため、ダスティンの決済も必要だろう。その前に、会議にもかけなければならない。
そうやっていろいろと対応をしていたら、今日の夕食も遅くなってしまった。ジョアンはとっくに帰っている。
遅めの夕食のため一人で食堂に向かうと、またリリーの姿が目に入る。
またこんな遅くまでと心の中で叱責するが、無視を決め込んだ。一度は注意したのだ。これ以上、彼女に深入りしたら、特別な感情を持ち合わせていると思われてしまうだろう。
以前もジョアンがそのようなことを口にして、非常に焦った。
今日は男性の給仕が注文を聞きにきた。気もそぞろになりながらも、いつもと同じものを頼む。
いつもと同じ料理が出され、口へと運ぶ。だけど今日は、味気なかった。いつもと同じであるはずなのに。
気がつくと、リリーの姿が見えない。もう、帰ったのだろう。
食事を終え、支払いを済ませて外に出る。
夜風が少し長くなった髪を弄びつつ、頬をなでていく。それが、食事によって火照った身体に心地よい。
(彼女は、無事、帰れただろうか)
右側に顔を向けると、広場を照らすガス灯がぼんやりと見えた。
「……きゃっ」
女性特有の甲高い悲鳴がかすかに聞こえた。
その悲鳴を聞いて、一人の女性の顔が思い浮かぶ。いやな予感がした。
いつもであれば左側の回廊に向かって歩くところを、反対方向に向かって走り出した。広場から居住区の三区に向かう。
一度、彼女を送り届けたことがあってよかった。
「……やっ……んっ」
悲鳴はくぐもった声になり、誰かが口を封じようとしている様子が伝わってきた。
「何をしている」
三区へ向かう道の路地裏。建物の壁に人を追いやって、自由を奪おうとしている男が二人。
「な、こんな時間に。軍人か? なんでこんなところに?」
話し方から察するに、スワン族の男のようだ。
「た、たすけてっ!」
口が自由になった隙に彼女が助けを求めたため、アーネストは剣を抜く。
「黙れ」
「んっ」
「彼女を離しなさい」
逆上させないように、だけど威嚇するように。落ち着きを払いつつ低く響く声で、静かに声をかけた。
一対二。さらにリリーが捕まっている。明らかにアーネストのほうが、分が悪い。
「ちっ。ずらかるぞ」
だけど彼らはアーネストには敵わないと思ったのだろう。リリーを押しのけて、走り去っていく。
「きゃっ」
倒れそうになった彼女を思わず抱きとめ、気がついたときには男たちの姿はどこにも見えなかった。
「すまない。取り逃がした」
「いえ……ありがとうございます……」
腕の中の小さな身体は震えていた。
「知っている男か?」
「は、はい。何度か、食堂で見かけたことは……」
「そうか」
ジョアンから聞いた話とつながるものがある。これは詳しく話を聞いておいたほうがいいだろう。だが、今日は無理だ。
「家まで送ろう」
「い、いえ。大丈夫です」
彼女はなんとか一人で立とうとしたが、力が入らないのか一歩を踏み出すことができない。
「不快かもしれないが、俺がお前を抱いて家まで連れていく。いいな?」
「は、はい……」
抱き上げた彼女は、思っていたよりも軽かった。
こうやって誰かを抱き上げたのは、あのとき以来だ。結婚式の食事会のあと、オレリアを部屋まで連れていったとき。
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