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16.邪魔をする者(1)
ジョアンから聞いていた菓子店に向かおうとしたが、アーネストは行き先を変更することにした。
「オレリア、悪いが付き合ってくれないか?」
どこに? とでも言いたげに、彼女は首をこてんと横に倒す。
「ほら。ガイロの警備を強化する話は前にもしただろ? それで少し、一区と二区を実際に見て回りたいんだ。お前と一緒に歩いたほうが、自然だからな」
せっかっくのお出かけであるのに、このようなことを言い出したアーネストに対して不機嫌になるかと思われたオレリアだが「帰りに、お菓子を買ってくださいね」という一言で快諾する。
「悪いな、俺につきあわせて」
「いいえ。アーネストと一緒でしたら、どこでもいいんです。一緒にこうやって歩いているだけで、楽しいので」
そのようなことを言われれば、アーネストだって悪い気はしない。だから、胸にチクリと針が刺さるような痛みを感じた。
しっかりとオレリアの手を握りしめ、一区を歩く。ここは、独身であるが収入の低い者たちが住んでいる地区で、納める税金が一番安い。そのため、住宅も集合住宅が多くなっている。
それも通りに面したところだけで、奥に行けば建物はなくなり、寂しい場所になる。ずんずんと進むと、目の前には白壁が広がる。
このような場所に用がある者などいない。いるとしたら、この白壁を乗り越えて不法入国なり出国する者たち。ここに見張りの兵はいないが、壁の向こう側には見張りを配置している。この裏側は、ちょうど関所の監視所がある場所になっている。それでも壁を乗り越えようとする者は、年に数人はいるのだ。
「オレリア。俺の後ろに隠れていなさい」
白壁を背にし、さらにオレリアをかばうようにしてアーネストは振り向いた。彼女は小さく頷いて、アーネストの背中側にまわる。
ここ最近、誰かにつけられるような感じがしていた。オレリアを狙っている変な男かと思ったときもあったが、どうやらそうではないらしい。
オレリアを狙っていたのは食堂の客だった。
しかしアーネストを尾行していたのは、そんな素人ではない。ある程度、訓練を積んだ者だ。それでもアーネストに気づかれたのだから、たかが知れている。はずなのだが。
「朝から俺たちをつけまわして、いったい、なんの用だ」
腹から響く低い声で、姿を見せない者に向かって問いかける。
アーネストが急に目的地を変更したのは、その者たちをおびき寄せるためでもあった。さすがに人通りの多い場所で暴れては、関係のない者たちまで巻き込んでしまう。
オレリアを連れていることだけが心配であったが、彼女と離れたら離れたで、彼女を狙ってくるかもしれない。
ひゅぅっとぬるい風が吹いて、アーネストの前髪を揺らす。背後からはオレリアの息づかいが感じられたが、彼女が騒いだり泣いたりしていないことに安堵する。怖い思いをさせている。
オレリアを一人にはできないと思いつつも、近くにいすぎても彼女を巻き込んでしまう。
アーネストはぎりっと奥歯を噛みしめた。
相手に隙を見せぬよう、睨みをきかせる。
建物の影から、みすぼらしいローブを羽織った三人の人物が姿を現す。フードも深くかぶり、顔はわからない。男か女かもわからない。だけど、体格からなんとなく男性だろうと察する。
彼らは腰から何かを引き抜いた。太陽の光をきらりと反射させるそれは、刃。三人とも、ご丁寧にアーネストに剣先を向けていた。
「オレリア……」
視線を彼女には向けず、静かに幾言かだけ告げる。彼女が声をあげずに頷いたのを感じ取った。
彼女は出会ったときから、聡い子だった。度胸もある。そして何よりも、粘り強い。
「ハバリーの闘神さんよ」
相手は剣を向けたまま、間合いを詰めてくる。一対三であれば、やはりアーネストのほうが不利である。
アーネストも腰ベルトにかけていた短剣を手にする。それはちょうど上着で隠れていて、誰もアーネストが短剣を忍ばせていただなんて思わないだろう。
「オレリア、悪いが付き合ってくれないか?」
どこに? とでも言いたげに、彼女は首をこてんと横に倒す。
「ほら。ガイロの警備を強化する話は前にもしただろ? それで少し、一区と二区を実際に見て回りたいんだ。お前と一緒に歩いたほうが、自然だからな」
せっかっくのお出かけであるのに、このようなことを言い出したアーネストに対して不機嫌になるかと思われたオレリアだが「帰りに、お菓子を買ってくださいね」という一言で快諾する。
「悪いな、俺につきあわせて」
「いいえ。アーネストと一緒でしたら、どこでもいいんです。一緒にこうやって歩いているだけで、楽しいので」
そのようなことを言われれば、アーネストだって悪い気はしない。だから、胸にチクリと針が刺さるような痛みを感じた。
しっかりとオレリアの手を握りしめ、一区を歩く。ここは、独身であるが収入の低い者たちが住んでいる地区で、納める税金が一番安い。そのため、住宅も集合住宅が多くなっている。
それも通りに面したところだけで、奥に行けば建物はなくなり、寂しい場所になる。ずんずんと進むと、目の前には白壁が広がる。
このような場所に用がある者などいない。いるとしたら、この白壁を乗り越えて不法入国なり出国する者たち。ここに見張りの兵はいないが、壁の向こう側には見張りを配置している。この裏側は、ちょうど関所の監視所がある場所になっている。それでも壁を乗り越えようとする者は、年に数人はいるのだ。
「オレリア。俺の後ろに隠れていなさい」
白壁を背にし、さらにオレリアをかばうようにしてアーネストは振り向いた。彼女は小さく頷いて、アーネストの背中側にまわる。
ここ最近、誰かにつけられるような感じがしていた。オレリアを狙っている変な男かと思ったときもあったが、どうやらそうではないらしい。
オレリアを狙っていたのは食堂の客だった。
しかしアーネストを尾行していたのは、そんな素人ではない。ある程度、訓練を積んだ者だ。それでもアーネストに気づかれたのだから、たかが知れている。はずなのだが。
「朝から俺たちをつけまわして、いったい、なんの用だ」
腹から響く低い声で、姿を見せない者に向かって問いかける。
アーネストが急に目的地を変更したのは、その者たちをおびき寄せるためでもあった。さすがに人通りの多い場所で暴れては、関係のない者たちまで巻き込んでしまう。
オレリアを連れていることだけが心配であったが、彼女と離れたら離れたで、彼女を狙ってくるかもしれない。
ひゅぅっとぬるい風が吹いて、アーネストの前髪を揺らす。背後からはオレリアの息づかいが感じられたが、彼女が騒いだり泣いたりしていないことに安堵する。怖い思いをさせている。
オレリアを一人にはできないと思いつつも、近くにいすぎても彼女を巻き込んでしまう。
アーネストはぎりっと奥歯を噛みしめた。
相手に隙を見せぬよう、睨みをきかせる。
建物の影から、みすぼらしいローブを羽織った三人の人物が姿を現す。フードも深くかぶり、顔はわからない。男か女かもわからない。だけど、体格からなんとなく男性だろうと察する。
彼らは腰から何かを引き抜いた。太陽の光をきらりと反射させるそれは、刃。三人とも、ご丁寧にアーネストに剣先を向けていた。
「オレリア……」
視線を彼女には向けず、静かに幾言かだけ告げる。彼女が声をあげずに頷いたのを感じ取った。
彼女は出会ったときから、聡い子だった。度胸もある。そして何よりも、粘り強い。
「ハバリーの闘神さんよ」
相手は剣を向けたまま、間合いを詰めてくる。一対三であれば、やはりアーネストのほうが不利である。
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