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第二章
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そんな中、リューディアは十八回目の誕生日を迎える。本来であれば、たくさんの関係者を呼んで盛大に催したいところではあったのだが、当の主役がそれを拒んだ。元々人前に出るのが苦手な娘、さらに今回の婚約解消。娘の気持ちを汲んだ両親は、身内だけでこっそりと彼女の誕生日を祝った。リューディアは大好きな両親と兄や義姉に祝ってもらい、それだけで満足だった。
だが、その十八回目の誕生日に、家族以外から一つの贈り物が届く。送り主はもちろんエメレンス。嬉しそうに顔を綻ばせながら、プレゼントの包みを解いていくリューディア。
このとき、リューディアをエメレンスと婚約させておけばよかったのではないか、とその贈り物を見た誰もがそう思ったらしいのだが、それを口にすることはしなかった。
リューディアが開けた箱の中から出てきたのは、少しレンズが大き目の眼鏡。
『十八回目のお誕生日おめでとう』
添えられたカードに書かれていた文章はそれだけ。それでもリューディアはこの眼鏡が意味するところをなんとなく感じ取った。レンズが大きくなり、顔を隠す部分が増えているのが何よりの証拠。自ら積極的に外に出るのはまだ怖いけれど、家族やエメレンスから誘われた時には、この眼鏡をかけて外に出ていこうと、そう前向きに思えるような効果をもたらしたのがこの眼鏡であったのだ。
エメレンスが贈ってくれる眼鏡には、いつも不思議な力が宿っているようにも感じる――。
その効果があったのか、この誕生日以降、レンズが大きな眼鏡をかけたリューディアの行動範囲が少しずつ広がっていくことに、コンラット公爵は喜んでいた。もちろん、彼女が一人で出かけるようなことはしない。たいていは、母親であるサフィーナが一緒。二人で観劇に行く、という話を聞いた公爵は、感激して目を潤ませてしまったくらいだった。
無理に娘を結婚させるのはやめようかな、とコンラット公爵が思い始めた矢先、長男のヘイデンがこんなことを言い出した。
「父上、ディアを魔導士団の方で働かせるつもりはないですか」
その日。空はどんよりとした鼠色に覆われていた。今にも大粒な雨が落ちてきそうな、そんな空。コンラット公爵が執務室で家令から渡された領地に関する書類を確認していたとき。
長男のヘイデンが少し乱暴に扉を叩いてきた。このノックの仕方は、この長男が非常に焦っているとき。家督を継ぐ者、どのようなときでも冷静さを保て、と口を酸っぱくして言っているのだが。
「どうかしたのか?」
息子のうちの誰が来たのかというのを即座に理解したコンラット公爵は、書類から顔をあげずにそう尋ねた。尋ねた結果、帰ってきた答えが先のそれだったのだ。
「魔導士団で何かあったのか?」
コンラット公爵はやっと顔をあげ、眉根を寄せて尋ねた。執務用の机を挟んだ向かい側に長兄のヘイデンが立っていた。
ヘイデンは今、魔導士団採掘部隊の部隊長を務めている。採掘するのはもちろん魔宝石の原石。
「実は……」
とヘイデンは口を開く。公にしないようにと上から圧力をかけられている案件ではあるが、魔法公爵家の当主である父には早かれ遅かれ耳に入ってくる話題であろう。
黙って息子の話を聞く公爵は、次第にその顔を曇らせていく。そして、全ての話を聞き終えた頃には。
「ううむ……」
と唸っていた。
「こちらの不手際といえば不手際ですが。だが、怪我をした団員たちもいるので、今は採掘よりも先に、その怪我を治して欲しいと思っています」
「そうだな……。それで、人手が足りない、と?」
「はい。まあ、怪我をしていない団員の中に、やはりあの場で採掘を続けるのが恐ろしい、と。そう口にする者もいまして」
目に見える傷は、その傷の深さや大きさが見える分、回復の具合も見える。だが、目に見えない傷は、その傷の深さや大きさがわからないから、回復したかどうかもわからない。知らぬ間に身体全体を蝕んでいくことだってある。
だが、その十八回目の誕生日に、家族以外から一つの贈り物が届く。送り主はもちろんエメレンス。嬉しそうに顔を綻ばせながら、プレゼントの包みを解いていくリューディア。
このとき、リューディアをエメレンスと婚約させておけばよかったのではないか、とその贈り物を見た誰もがそう思ったらしいのだが、それを口にすることはしなかった。
リューディアが開けた箱の中から出てきたのは、少しレンズが大き目の眼鏡。
『十八回目のお誕生日おめでとう』
添えられたカードに書かれていた文章はそれだけ。それでもリューディアはこの眼鏡が意味するところをなんとなく感じ取った。レンズが大きくなり、顔を隠す部分が増えているのが何よりの証拠。自ら積極的に外に出るのはまだ怖いけれど、家族やエメレンスから誘われた時には、この眼鏡をかけて外に出ていこうと、そう前向きに思えるような効果をもたらしたのがこの眼鏡であったのだ。
エメレンスが贈ってくれる眼鏡には、いつも不思議な力が宿っているようにも感じる――。
その効果があったのか、この誕生日以降、レンズが大きな眼鏡をかけたリューディアの行動範囲が少しずつ広がっていくことに、コンラット公爵は喜んでいた。もちろん、彼女が一人で出かけるようなことはしない。たいていは、母親であるサフィーナが一緒。二人で観劇に行く、という話を聞いた公爵は、感激して目を潤ませてしまったくらいだった。
無理に娘を結婚させるのはやめようかな、とコンラット公爵が思い始めた矢先、長男のヘイデンがこんなことを言い出した。
「父上、ディアを魔導士団の方で働かせるつもりはないですか」
その日。空はどんよりとした鼠色に覆われていた。今にも大粒な雨が落ちてきそうな、そんな空。コンラット公爵が執務室で家令から渡された領地に関する書類を確認していたとき。
長男のヘイデンが少し乱暴に扉を叩いてきた。このノックの仕方は、この長男が非常に焦っているとき。家督を継ぐ者、どのようなときでも冷静さを保て、と口を酸っぱくして言っているのだが。
「どうかしたのか?」
息子のうちの誰が来たのかというのを即座に理解したコンラット公爵は、書類から顔をあげずにそう尋ねた。尋ねた結果、帰ってきた答えが先のそれだったのだ。
「魔導士団で何かあったのか?」
コンラット公爵はやっと顔をあげ、眉根を寄せて尋ねた。執務用の机を挟んだ向かい側に長兄のヘイデンが立っていた。
ヘイデンは今、魔導士団採掘部隊の部隊長を務めている。採掘するのはもちろん魔宝石の原石。
「実は……」
とヘイデンは口を開く。公にしないようにと上から圧力をかけられている案件ではあるが、魔法公爵家の当主である父には早かれ遅かれ耳に入ってくる話題であろう。
黙って息子の話を聞く公爵は、次第にその顔を曇らせていく。そして、全ての話を聞き終えた頃には。
「ううむ……」
と唸っていた。
「こちらの不手際といえば不手際ですが。だが、怪我をした団員たちもいるので、今は採掘よりも先に、その怪我を治して欲しいと思っています」
「そうだな……。それで、人手が足りない、と?」
「はい。まあ、怪我をしていない団員の中に、やはりあの場で採掘を続けるのが恐ろしい、と。そう口にする者もいまして」
目に見える傷は、その傷の深さや大きさが見える分、回復の具合も見える。だが、目に見えない傷は、その傷の深さや大きさがわからないから、回復したかどうかもわからない。知らぬ間に身体全体を蝕んでいくことだってある。
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