【R18】苦手な王太子殿下に脅されて(偽装)婚約しただけなのに

澤谷弥(さわたに わたる)

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第三章(9)

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 イライアスが普段から使っているだろうベッドからは、彼の匂いがする。それが、官能の熾火を呼び起こす。

「……シェリル」
「お願い……ひとりに、して……ください……」

 次第に熱が高まってくる。下腹部が特にじくりじくりと疼き、精を受けたいと騒いでいるのだ。

「シェリルはそうやって、何日も耐えるのか?」

 次第に押し寄せてくる情欲によって、シェリルの目尻には涙が浮かんできた。
 ぎしりとベッドを軋ませて、イライアスが膝をついた。

「なぁ? 耐えられるのか?」

 耐えられるかどうかではなく、耐えるしかない。だらしなく口を開けたまま、シェリルはゆっくりと頷く。

「それとも、自分で慰めるのか? イチゴのお酒を飲んで欲情してるんだろ? だったら、その欲を発散させれば、楽になるんじゃないのか?」

 イライアスの言っていることは間違いではない。ルークが何日もかけて調べてくれた結果、欲を発散させることで疼きが治まるのはわかっていた。

 だけど、それを実践したことがない。

 気づかぬうちにイチゴを使った料理を口にしたときも、静かに耐えた。気づかぬ量であるから、症状も軽いものが多かった。今までで一番酷かったのは、イチゴをバクバクと食べて、最初に症状が出たあの日だろう。わけがわからず、ベッドの上でうずくまっていたあの日。

「ほうって、おいて……」

 ぎゅっとシーツを握りしめる。

「シェリルの、そんな辛そうな姿、見ていられない……」
「だ……ら、ひとりに……して……」

 見ていられないなら、見なければいい。

「なぁ、シェリル……俺はおまえを助けたいんだ……」

 イライアスの手が、やさしくシェリルの頬をなで上げた。この状態で触れられたら、感じてしまう。

「いや……や、やめ……」
「何も、恥ずかしいことじゃない……」

 頬をすべらせた手はそのまま頭をやさしくなで、からまった髪をゆっくりとすき始める。

「シェリルが嫌がることはしたくない。だが俺はおまえを助けたい……俺を受け入れてくれないか?」

 心地よい声でそのように言われたら、お腹の奥がぐずぐずととろけ出す。それでもまだ、理性が残っているのか「ダメだ」と頭が訴えていた。

 ほとんど力の入らぬ身体で、頭を横に振る。

「……シェリル……そんなに俺が嫌いなのか?」

 少し間を置いてから、もう一度頭を横に振る。

「はぁ……あぁ……っ」

 鼓動は痛いほど強く打ち付け、どくどくと熱い血流を送り続けている。とろりと足の隙間から、欲の証がこぼれ始めた。

「おねが、い……ひとりに……して……」

 イライアスは困ったように目尻を下げた。

「俺では、力になれないのか?」

 彼の言葉が、大きな痛みとなってズキリと胸を貫いた。
 このようなみっともない姿を、誰にも見られたくないというのに。
 だけどこんなに胸が痛むのはイライアスに原因がある。彼が、そんな表情をするから。

「……わかった。俺は、隣の部屋にいるから……何かあったら、呼んでくれ……」

  一人にしてと言ったのに、本当に一人にされるかと思うと、不思議と恐怖が込み上げてきた。
 まして自分で自分を慰めるだなんて、怖くてできっこない。

「……かないで」

 なぜかぽろぽろと涙がこぼれてきた。一人になるのが怖い。

 あれほどイライアスに見せたくないと思っていた姿であるのに、彼であるならこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、微かな期待を寄せてしまう。

 思い返しても、このような欲望の波が一週間も続くとなれば、耐えられない。あのときはまだ何も知らなかったし、病気だと思っていたからなんとか耐えられた。それ以降は、静かに耐えしのげば一日で疼きは治まった。

 だけど耐えしのぐ苦しみを知ってしまった今だからこそ、あんな状態になるのは二度とごめんだと思えてしまう。だからといって、自慰などしたことがない。症状が出たときは、ひたすら耐えていたのだから。

 だが、この疼きは今までのどの症状よりも酷い。美味しいからといって、イチゴの酒を多く飲んでしまったのが原因だ。

 どうしたらいいのかがさっぱりとわからない。

 怖い――。

「シェリル……?」
「たすけて……ください……」

 それが本音だった。この苦しみから今すぐ解放してくれるなら、イライアスにすらすがってしまう。いや、相手がイライアスだから。

 無意識のうちに彼の腕を掴み、助けを乞うていた。
 他人と距離をとってしまうシェリルが、ここ一か月、身近に過ごしたのがイライアスだった。

 彼だったらと思えてしまうほど、心が弱っているのだろうか。
 自分で耐え抜くという気持ちと、助けてほしいという気持ちが複雑に絡み合っている。

「……シェリル?」
「イライアスさま……たすけて……」

 先ほどよりも大きなもどかしさが襲ってくる。彼ならばこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、どこか期待していた。

「うっ……ん、ん……」

 身体をよじり腰を突き出すような姿勢になってから、胎児のように丸くなる。それでも、切なさは次から次へと込み上げてくる。

「シェリル……本当にいいんだな?」

 その言葉に胸が熱くなる。早く、助けてほしい。

「すぐに楽にしてあげるから、少しだけ我慢して……」
「はぁっ……うぅ……」

 コクコクと頷いた瞬間、イライアスが首筋に唇を這わせてきた。
 ほとんどはだけていたガウンの合わせ目から、彼の大きな手がゆっくりと忍び込んできて、乳房をやさしく包み込む。

 ただでさえ敏感になっている身体だというのに、そのような場所を触れられたら、気持ちよくて声がこぼれてしまう。

「ふぅ……ン……」
「もう、すでにここは硬くなってる……」

 先端を親指でぐりぐりと刺激されると、背中に痺れが走る。その痺れは下腹部を刺激して、どろりと新たな蜜を生み出した。

 イライアスの唇は、首筋から肩、鎖骨と下りてきて、胸元をきつく吸い上げる。チリリとした痛みすら、心地よい。

「ぷっくりとして、美味しそうだ……」

 イライアスがそうささやくたびに、羞恥心が生まれる。だけども彼の声は心地よくて、酔ってしまいそう。

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