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第三章(9)
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イライアスが普段から使っているだろうベッドからは、彼の匂いがする。それが、官能の熾火を呼び起こす。
「……シェリル」
「お願い……ひとりに、して……ください……」
次第に熱が高まってくる。下腹部が特にじくりじくりと疼き、精を受けたいと騒いでいるのだ。
「シェリルはそうやって、何日も耐えるのか?」
次第に押し寄せてくる情欲によって、シェリルの目尻には涙が浮かんできた。
ぎしりとベッドを軋ませて、イライアスが膝をついた。
「なぁ? 耐えられるのか?」
耐えられるかどうかではなく、耐えるしかない。だらしなく口を開けたまま、シェリルはゆっくりと頷く。
「それとも、自分で慰めるのか? イチゴのお酒を飲んで欲情してるんだろ? だったら、その欲を発散させれば、楽になるんじゃないのか?」
イライアスの言っていることは間違いではない。ルークが何日もかけて調べてくれた結果、欲を発散させることで疼きが治まるのはわかっていた。
だけど、それを実践したことがない。
気づかぬうちにイチゴを使った料理を口にしたときも、静かに耐えた。気づかぬ量であるから、症状も軽いものが多かった。今までで一番酷かったのは、イチゴをバクバクと食べて、最初に症状が出たあの日だろう。わけがわからず、ベッドの上でうずくまっていたあの日。
「ほうって、おいて……」
ぎゅっとシーツを握りしめる。
「シェリルの、そんな辛そうな姿、見ていられない……」
「だ……ら、ひとりに……して……」
見ていられないなら、見なければいい。
「なぁ、シェリル……俺はおまえを助けたいんだ……」
イライアスの手が、やさしくシェリルの頬をなで上げた。この状態で触れられたら、感じてしまう。
「いや……や、やめ……」
「何も、恥ずかしいことじゃない……」
頬をすべらせた手はそのまま頭をやさしくなで、からまった髪をゆっくりとすき始める。
「シェリルが嫌がることはしたくない。だが俺はおまえを助けたい……俺を受け入れてくれないか?」
心地よい声でそのように言われたら、お腹の奥がぐずぐずととろけ出す。それでもまだ、理性が残っているのか「ダメだ」と頭が訴えていた。
ほとんど力の入らぬ身体で、頭を横に振る。
「……シェリル……そんなに俺が嫌いなのか?」
少し間を置いてから、もう一度頭を横に振る。
「はぁ……あぁ……っ」
鼓動は痛いほど強く打ち付け、どくどくと熱い血流を送り続けている。とろりと足の隙間から、欲の証がこぼれ始めた。
「おねが、い……ひとりに……して……」
イライアスは困ったように目尻を下げた。
「俺では、力になれないのか?」
彼の言葉が、大きな痛みとなってズキリと胸を貫いた。
このようなみっともない姿を、誰にも見られたくないというのに。
だけどこんなに胸が痛むのはイライアスに原因がある。彼が、そんな表情をするから。
「……わかった。俺は、隣の部屋にいるから……何かあったら、呼んでくれ……」
一人にしてと言ったのに、本当に一人にされるかと思うと、不思議と恐怖が込み上げてきた。
まして自分で自分を慰めるだなんて、怖くてできっこない。
「……かないで」
なぜかぽろぽろと涙がこぼれてきた。一人になるのが怖い。
あれほどイライアスに見せたくないと思っていた姿であるのに、彼であるならこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、微かな期待を寄せてしまう。
思い返しても、このような欲望の波が一週間も続くとなれば、耐えられない。あのときはまだ何も知らなかったし、病気だと思っていたからなんとか耐えられた。それ以降は、静かに耐えしのげば一日で疼きは治まった。
だけど耐えしのぐ苦しみを知ってしまった今だからこそ、あんな状態になるのは二度とごめんだと思えてしまう。だからといって、自慰などしたことがない。症状が出たときは、ひたすら耐えていたのだから。
だが、この疼きは今までのどの症状よりも酷い。美味しいからといって、イチゴの酒を多く飲んでしまったのが原因だ。
どうしたらいいのかがさっぱりとわからない。
怖い――。
「シェリル……?」
「たすけて……ください……」
それが本音だった。この苦しみから今すぐ解放してくれるなら、イライアスにすらすがってしまう。いや、相手がイライアスだから。
無意識のうちに彼の腕を掴み、助けを乞うていた。
他人と距離をとってしまうシェリルが、ここ一か月、身近に過ごしたのがイライアスだった。
彼だったらと思えてしまうほど、心が弱っているのだろうか。
自分で耐え抜くという気持ちと、助けてほしいという気持ちが複雑に絡み合っている。
「……シェリル?」
「イライアスさま……たすけて……」
先ほどよりも大きなもどかしさが襲ってくる。彼ならばこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、どこか期待していた。
「うっ……ん、ん……」
身体をよじり腰を突き出すような姿勢になってから、胎児のように丸くなる。それでも、切なさは次から次へと込み上げてくる。
「シェリル……本当にいいんだな?」
その言葉に胸が熱くなる。早く、助けてほしい。
「すぐに楽にしてあげるから、少しだけ我慢して……」
「はぁっ……うぅ……」
コクコクと頷いた瞬間、イライアスが首筋に唇を這わせてきた。
ほとんどはだけていたガウンの合わせ目から、彼の大きな手がゆっくりと忍び込んできて、乳房をやさしく包み込む。
ただでさえ敏感になっている身体だというのに、そのような場所を触れられたら、気持ちよくて声がこぼれてしまう。
「ふぅ……ン……」
「もう、すでにここは硬くなってる……」
先端を親指でぐりぐりと刺激されると、背中に痺れが走る。その痺れは下腹部を刺激して、どろりと新たな蜜を生み出した。
イライアスの唇は、首筋から肩、鎖骨と下りてきて、胸元をきつく吸い上げる。チリリとした痛みすら、心地よい。
「ぷっくりとして、美味しそうだ……」
イライアスがそうささやくたびに、羞恥心が生まれる。だけども彼の声は心地よくて、酔ってしまいそう。
「……シェリル」
「お願い……ひとりに、して……ください……」
次第に熱が高まってくる。下腹部が特にじくりじくりと疼き、精を受けたいと騒いでいるのだ。
「シェリルはそうやって、何日も耐えるのか?」
次第に押し寄せてくる情欲によって、シェリルの目尻には涙が浮かんできた。
ぎしりとベッドを軋ませて、イライアスが膝をついた。
「なぁ? 耐えられるのか?」
耐えられるかどうかではなく、耐えるしかない。だらしなく口を開けたまま、シェリルはゆっくりと頷く。
「それとも、自分で慰めるのか? イチゴのお酒を飲んで欲情してるんだろ? だったら、その欲を発散させれば、楽になるんじゃないのか?」
イライアスの言っていることは間違いではない。ルークが何日もかけて調べてくれた結果、欲を発散させることで疼きが治まるのはわかっていた。
だけど、それを実践したことがない。
気づかぬうちにイチゴを使った料理を口にしたときも、静かに耐えた。気づかぬ量であるから、症状も軽いものが多かった。今までで一番酷かったのは、イチゴをバクバクと食べて、最初に症状が出たあの日だろう。わけがわからず、ベッドの上でうずくまっていたあの日。
「ほうって、おいて……」
ぎゅっとシーツを握りしめる。
「シェリルの、そんな辛そうな姿、見ていられない……」
「だ……ら、ひとりに……して……」
見ていられないなら、見なければいい。
「なぁ、シェリル……俺はおまえを助けたいんだ……」
イライアスの手が、やさしくシェリルの頬をなで上げた。この状態で触れられたら、感じてしまう。
「いや……や、やめ……」
「何も、恥ずかしいことじゃない……」
頬をすべらせた手はそのまま頭をやさしくなで、からまった髪をゆっくりとすき始める。
「シェリルが嫌がることはしたくない。だが俺はおまえを助けたい……俺を受け入れてくれないか?」
心地よい声でそのように言われたら、お腹の奥がぐずぐずととろけ出す。それでもまだ、理性が残っているのか「ダメだ」と頭が訴えていた。
ほとんど力の入らぬ身体で、頭を横に振る。
「……シェリル……そんなに俺が嫌いなのか?」
少し間を置いてから、もう一度頭を横に振る。
「はぁ……あぁ……っ」
鼓動は痛いほど強く打ち付け、どくどくと熱い血流を送り続けている。とろりと足の隙間から、欲の証がこぼれ始めた。
「おねが、い……ひとりに……して……」
イライアスは困ったように目尻を下げた。
「俺では、力になれないのか?」
彼の言葉が、大きな痛みとなってズキリと胸を貫いた。
このようなみっともない姿を、誰にも見られたくないというのに。
だけどこんなに胸が痛むのはイライアスに原因がある。彼が、そんな表情をするから。
「……わかった。俺は、隣の部屋にいるから……何かあったら、呼んでくれ……」
一人にしてと言ったのに、本当に一人にされるかと思うと、不思議と恐怖が込み上げてきた。
まして自分で自分を慰めるだなんて、怖くてできっこない。
「……かないで」
なぜかぽろぽろと涙がこぼれてきた。一人になるのが怖い。
あれほどイライアスに見せたくないと思っていた姿であるのに、彼であるならこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、微かな期待を寄せてしまう。
思い返しても、このような欲望の波が一週間も続くとなれば、耐えられない。あのときはまだ何も知らなかったし、病気だと思っていたからなんとか耐えられた。それ以降は、静かに耐えしのげば一日で疼きは治まった。
だけど耐えしのぐ苦しみを知ってしまった今だからこそ、あんな状態になるのは二度とごめんだと思えてしまう。だからといって、自慰などしたことがない。症状が出たときは、ひたすら耐えていたのだから。
だが、この疼きは今までのどの症状よりも酷い。美味しいからといって、イチゴの酒を多く飲んでしまったのが原因だ。
どうしたらいいのかがさっぱりとわからない。
怖い――。
「シェリル……?」
「たすけて……ください……」
それが本音だった。この苦しみから今すぐ解放してくれるなら、イライアスにすらすがってしまう。いや、相手がイライアスだから。
無意識のうちに彼の腕を掴み、助けを乞うていた。
他人と距離をとってしまうシェリルが、ここ一か月、身近に過ごしたのがイライアスだった。
彼だったらと思えてしまうほど、心が弱っているのだろうか。
自分で耐え抜くという気持ちと、助けてほしいという気持ちが複雑に絡み合っている。
「……シェリル?」
「イライアスさま……たすけて……」
先ほどよりも大きなもどかしさが襲ってくる。彼ならばこの苦しみを取り除いてくれるのではないかと、どこか期待していた。
「うっ……ん、ん……」
身体をよじり腰を突き出すような姿勢になってから、胎児のように丸くなる。それでも、切なさは次から次へと込み上げてくる。
「シェリル……本当にいいんだな?」
その言葉に胸が熱くなる。早く、助けてほしい。
「すぐに楽にしてあげるから、少しだけ我慢して……」
「はぁっ……うぅ……」
コクコクと頷いた瞬間、イライアスが首筋に唇を這わせてきた。
ほとんどはだけていたガウンの合わせ目から、彼の大きな手がゆっくりと忍び込んできて、乳房をやさしく包み込む。
ただでさえ敏感になっている身体だというのに、そのような場所を触れられたら、気持ちよくて声がこぼれてしまう。
「ふぅ……ン……」
「もう、すでにここは硬くなってる……」
先端を親指でぐりぐりと刺激されると、背中に痺れが走る。その痺れは下腹部を刺激して、どろりと新たな蜜を生み出した。
イライアスの唇は、首筋から肩、鎖骨と下りてきて、胸元をきつく吸い上げる。チリリとした痛みすら、心地よい。
「ぷっくりとして、美味しそうだ……」
イライアスがそうささやくたびに、羞恥心が生まれる。だけども彼の声は心地よくて、酔ってしまいそう。
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