15 / 66
第二章(7)
しおりを挟む
「では、今日はカリノさんからは何も話を聞き出せていないと?」
「そうだ。凶器が見つかっていない。だから何がなんでもそれを聞き出せというのが第一の奴らからの指示なんだがな」
何も証言を得られていないから、今日の会議で報告することは何もない。そうとでも言いたげなタミオスの顔だ。
「自分たちは巫女から話を聞き出せないくせに、こういうときばかり俺らをやり玉にあげるのがあいつらでは?」
ナシオンの言葉に、タミオスは肯定も否定もしなかった。彼の立場を考えれば、ある種、これが正しい反応なのかもしれない。
「こちら。今日、巫女たちから聞いた証言をまとめたものになります」
微妙な空気を打ち消すかのように、フィアナは報告書を手渡した。
「なかなか興味深い話が聞けたかと思います」
「わかった。今日の報告も頼む」
報告書はタミオスに渡すものの、全体会議で報告をするのはフィアナかナシオンの役目だ。どちらがするか決まりはないので、その場の気分次第で決める。
だが、巫女から直接話を聞いているのはフィアナなので、この案件に関してはフィアナが報告する。
報告書に目を通したタミオスは、特別、何も言わなかった。この流れにそって報告すればいいだろうと、それくらいだった。
夕方の会議にナシオンと共に出席したフィアナだが、第一騎士団からは信じられないような報告があがる。
「容疑者カリノの兄、キアロですが、派遣されている東のドランの聖堂にはおりませんでした」
王都から東にあるドランの街。馬車で半日かかる場所にあるが、騎士団が所有する早馬であれば、その半分の時間で行き来が可能だ。
「いない? いないというのはどういうことだ?」
そんな声が捜査本部長からあがった。そう聞きたくなる気持ちもよくわかる。
隣に座っているナシオンに視線だけ向けると、彼の口の端もひくひくと動いていた。何かしら文句を言いたいようだ。それを堪えている。
「はい。大聖堂の聖騎士から、キアロは東のドランの聖堂に派遣されていると聞き、そこへ向かったわけですが。ドランの聖堂にいる聖騎士からはキアロは来ていないと……」
消え入るような語尾は、この次に聞こえてくる言葉がわかっているからなのだろう。もしくは、はっきりと言いたくないのか。
身体の大きな男性騎士が、背中を丸めている様子を目にすると、ほんの少しは同情していまう。
「来ていない? もう少し、わかりやすく説明しろ」
「は、はい。聖騎士キアロですが、大聖堂から東のドランの聖堂に派遣される予定でした。大聖堂を出た姿は仲間の聖騎士に目撃されており、挨拶も交わしていることから間違いはないかと思います。ドランの聖堂にいる他の聖騎士に確認したところ、キアロが派遣される話は聞いていないと……」
また語尾が小さくなっていく。
「引き続き、キアロの行方を追うこと。それから大聖堂とドランの聖堂の関係者から話を聞くように」
「は、はい……」
つまり、キアロは行方不明。
その事実をカリノに伝えていいものかどうかと一瞬悩んだものの、むしろ彼女はキアロの行方を知っているのではないかと、そう思えてきた。
フィアナの番がやってきて、メッサたちから聞いた話を端的に伝えた。やはり突っ込まれたのは、夜中にカリノが大聖堂からどうやって出ていったのかという点である。
「その件に関しましては、本人から直接話を聞きます」
どちらにしろ、明日はカリノから話を聞かねばならない。
それ以上の追求はなく、フィアナの報告は終わった。
「そうだ。凶器が見つかっていない。だから何がなんでもそれを聞き出せというのが第一の奴らからの指示なんだがな」
何も証言を得られていないから、今日の会議で報告することは何もない。そうとでも言いたげなタミオスの顔だ。
「自分たちは巫女から話を聞き出せないくせに、こういうときばかり俺らをやり玉にあげるのがあいつらでは?」
ナシオンの言葉に、タミオスは肯定も否定もしなかった。彼の立場を考えれば、ある種、これが正しい反応なのかもしれない。
「こちら。今日、巫女たちから聞いた証言をまとめたものになります」
微妙な空気を打ち消すかのように、フィアナは報告書を手渡した。
「なかなか興味深い話が聞けたかと思います」
「わかった。今日の報告も頼む」
報告書はタミオスに渡すものの、全体会議で報告をするのはフィアナかナシオンの役目だ。どちらがするか決まりはないので、その場の気分次第で決める。
だが、巫女から直接話を聞いているのはフィアナなので、この案件に関してはフィアナが報告する。
報告書に目を通したタミオスは、特別、何も言わなかった。この流れにそって報告すればいいだろうと、それくらいだった。
夕方の会議にナシオンと共に出席したフィアナだが、第一騎士団からは信じられないような報告があがる。
「容疑者カリノの兄、キアロですが、派遣されている東のドランの聖堂にはおりませんでした」
王都から東にあるドランの街。馬車で半日かかる場所にあるが、騎士団が所有する早馬であれば、その半分の時間で行き来が可能だ。
「いない? いないというのはどういうことだ?」
そんな声が捜査本部長からあがった。そう聞きたくなる気持ちもよくわかる。
隣に座っているナシオンに視線だけ向けると、彼の口の端もひくひくと動いていた。何かしら文句を言いたいようだ。それを堪えている。
「はい。大聖堂の聖騎士から、キアロは東のドランの聖堂に派遣されていると聞き、そこへ向かったわけですが。ドランの聖堂にいる聖騎士からはキアロは来ていないと……」
消え入るような語尾は、この次に聞こえてくる言葉がわかっているからなのだろう。もしくは、はっきりと言いたくないのか。
身体の大きな男性騎士が、背中を丸めている様子を目にすると、ほんの少しは同情していまう。
「来ていない? もう少し、わかりやすく説明しろ」
「は、はい。聖騎士キアロですが、大聖堂から東のドランの聖堂に派遣される予定でした。大聖堂を出た姿は仲間の聖騎士に目撃されており、挨拶も交わしていることから間違いはないかと思います。ドランの聖堂にいる他の聖騎士に確認したところ、キアロが派遣される話は聞いていないと……」
また語尾が小さくなっていく。
「引き続き、キアロの行方を追うこと。それから大聖堂とドランの聖堂の関係者から話を聞くように」
「は、はい……」
つまり、キアロは行方不明。
その事実をカリノに伝えていいものかどうかと一瞬悩んだものの、むしろ彼女はキアロの行方を知っているのではないかと、そう思えてきた。
フィアナの番がやってきて、メッサたちから聞いた話を端的に伝えた。やはり突っ込まれたのは、夜中にカリノが大聖堂からどうやって出ていったのかという点である。
「その件に関しましては、本人から直接話を聞きます」
どちらにしろ、明日はカリノから話を聞かねばならない。
それ以上の追求はなく、フィアナの報告は終わった。
69
あなたにおすすめの小説
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】金で買われた婚約者と壊れた魔力の器
miniko
恋愛
子爵家の令嬢であるメリッサは、公爵家嫡男のサミュエルと婚約している。
2人はお互いに一目惚れし、その仲を公爵家が認めて婚約が成立。
本当にあったシンデレラストーリーと噂されていた。
ところが、結婚を目前に控えたある日、サミュエルが隣国の聖女と恋に落ち、メリッサは捨てられてしまう。
社交界で嘲笑の対象となるメリッサだが、実はこの婚約には裏があって・・・
※全体的に設定に緩い部分が有りますが「仕方ないな」と広い心で許して頂けると有り難いです。
※恋が動き始めるまで、少々時間がかかります。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
偽物聖女、承りました
イセヤ レキ
恋愛
五十年前、この国に訪れた危機を救ったと言われる、憧れの聖女様。
聖女様については伝承が語り継がれているものの、誰もその正体を知らない。
私、リュミナ・セレスフォードはその聖女様との初対面時に、まさかの六十年前へ召喚されてしまう。
私を召喚した犯人は、当時の第一王子、ルーウェン。
私のほかにも、私の曽祖父であるエルディアや、内乱時代に生きた剣の達人であるアルフェインもその場に召喚されていた。
なのに一番肝心の聖女様が、召喚されていない!
聖女様は謎多き人物だけど、噂は色々出回っている。
聖女様は恐らく治癒能力持ち、そして平民。
さらに言えば、いずれ聖女様はアルフェインと結ばれるはずなのだ。
「仕方がない。聖女様が見つかるまで、私が代役を務めます」
こうして、私たちの聖女様探しの旅が今、始まった。
全五話、完結済。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる