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【1】追放
9・異変
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「行ってきます」
扉を開け、外に出れば、久しぶりの直射日光が目にまぶしかった。
精霊が近づいて来て存在を確かめて来る。彼らとは話さなくても感情が伝わる。すでにレティウスと命を繋いでいることは知らされており、主人の伴侶として認識されているのだと聞いた。
それを彼らが喜んでいるのだと、窓辺に飾られた花や、玄関前に運ばれた果物などで確認している。
決して屋敷に入ろうとしない精霊たちであるが、ユーリが外へ出れば違うらしく、好奇心旺盛な態度でユーリのまわりを飛んではどこかへ行き、また新しい子がまわりに来た。
森を歩くと、数分もしないうちに開けた場所に出た。空間の範囲が違うと思う。外から見た森はさほど広くない。なにせ王城の周りを囲む貴族が住む場所の中にあるのだ。第一区とする貴族区は全体としてもさほど広くはなく、そこに森があることに、初めて訪れた客は首を傾げるのだ。
開けた場所は広く、草も生えていない土の土地だ。しかも整備済みといった感じで均されている。
これがレティウスが言っていた、森がレティウスに馴染んでいるという状況かと思い、考えることを放棄した。
体をほぐす為の準備運動をし、軽く走り始めると、周りを飛んでいた精霊が上空へと舞った。
何が始まったのかと好奇心旺盛な視線を受けながら、ひたすら走った。
汗をかけば、精霊からタオルが落とされ、涼しい霧が掛けられた。
至れり尽くせりな状況は、屋敷の中だけでなく、森の中でも同様らしい。
「ありがとう」
と笑えば、精霊から喜びが感じられた。
温かな世界だと思う。
これはレティウスが育てた環境だと思えば、主人の気持ちが反映されているのだと思う。
レティウスの温かさは広く深い。
ずっとそばにいたいと思う理由のひとつになっている。
「おまえがレティウスの伴侶か」
木陰で休んでいると、上部から声をかけられた。
見上げれば、木の枝に座っている男がいる。ザッと風が吹き、精霊が流され、消えた。
雰囲気に禍々しさが混じる。暗くどんよりとした空気と、温度が下がったことが肌に伝わる。
ユーリが身構えるよりも先に、レティウスがユーリをかばうように現れた。
レティウスの魔力に満ちた森内であるのだ。魔術による移動など造作もないことらしい。
「結界を荒らすなと何度言ったらわかる」
レティウスにかばわれたユーリは、突然現れたものが、レティウスの知り合いなのだとわかり、少しだけ警戒の意志を解いた。
ユーリは弱い。
王族としての潜在能力は高いのだが、日常をフランに使い果たしていたのだ。勉学も鍛錬も全て後回しにして来た。そのくせ王位継承権第一位という称号を笠に着せ、フランを手に入れることばかりを考えていたのだ。これでは城を追われても仕方がない。今のユーリはそう思い、自身の全てを変えようと訓練を始めたところだ。
「そんな奴がお前の伴侶とはな、かばわれて縋りつくとは、恥ずかしい」
「ユーリ行こうか。お茶の時間だ」
男の言葉を無視したレティウスは、ユーリの腰を抱くようにして屋敷へと誘った。
「あれは誰?」
「ユーリには関係のない奴だ。関わらない方が良い」
「俺は闇の精霊、ディーノだ」
「聞かなくて良い」
レティウスはユーリの耳を塞ぎ、急ごうと魔法陣を潜った。
一気に室内である。
一階のリビングにはすでにお茶とお菓子の用意がされている。さっきまで誰かが給仕していたような気配はあるのだか、ユーリは一度もレティウス以外の人を見たことがなかった。
「先に湯に浸かるかい?」
「そうだね。そうするよ」
湯と言えばもう着替えやタオルが用意されている。とても不思議に満ちた屋敷だと思う。
妖精の住む森だからだろうか。不思議には思うものの、嫌な気はしないので、あえて触れる事はなかった。
扉を開け、外に出れば、久しぶりの直射日光が目にまぶしかった。
精霊が近づいて来て存在を確かめて来る。彼らとは話さなくても感情が伝わる。すでにレティウスと命を繋いでいることは知らされており、主人の伴侶として認識されているのだと聞いた。
それを彼らが喜んでいるのだと、窓辺に飾られた花や、玄関前に運ばれた果物などで確認している。
決して屋敷に入ろうとしない精霊たちであるが、ユーリが外へ出れば違うらしく、好奇心旺盛な態度でユーリのまわりを飛んではどこかへ行き、また新しい子がまわりに来た。
森を歩くと、数分もしないうちに開けた場所に出た。空間の範囲が違うと思う。外から見た森はさほど広くない。なにせ王城の周りを囲む貴族が住む場所の中にあるのだ。第一区とする貴族区は全体としてもさほど広くはなく、そこに森があることに、初めて訪れた客は首を傾げるのだ。
開けた場所は広く、草も生えていない土の土地だ。しかも整備済みといった感じで均されている。
これがレティウスが言っていた、森がレティウスに馴染んでいるという状況かと思い、考えることを放棄した。
体をほぐす為の準備運動をし、軽く走り始めると、周りを飛んでいた精霊が上空へと舞った。
何が始まったのかと好奇心旺盛な視線を受けながら、ひたすら走った。
汗をかけば、精霊からタオルが落とされ、涼しい霧が掛けられた。
至れり尽くせりな状況は、屋敷の中だけでなく、森の中でも同様らしい。
「ありがとう」
と笑えば、精霊から喜びが感じられた。
温かな世界だと思う。
これはレティウスが育てた環境だと思えば、主人の気持ちが反映されているのだと思う。
レティウスの温かさは広く深い。
ずっとそばにいたいと思う理由のひとつになっている。
「おまえがレティウスの伴侶か」
木陰で休んでいると、上部から声をかけられた。
見上げれば、木の枝に座っている男がいる。ザッと風が吹き、精霊が流され、消えた。
雰囲気に禍々しさが混じる。暗くどんよりとした空気と、温度が下がったことが肌に伝わる。
ユーリが身構えるよりも先に、レティウスがユーリをかばうように現れた。
レティウスの魔力に満ちた森内であるのだ。魔術による移動など造作もないことらしい。
「結界を荒らすなと何度言ったらわかる」
レティウスにかばわれたユーリは、突然現れたものが、レティウスの知り合いなのだとわかり、少しだけ警戒の意志を解いた。
ユーリは弱い。
王族としての潜在能力は高いのだが、日常をフランに使い果たしていたのだ。勉学も鍛錬も全て後回しにして来た。そのくせ王位継承権第一位という称号を笠に着せ、フランを手に入れることばかりを考えていたのだ。これでは城を追われても仕方がない。今のユーリはそう思い、自身の全てを変えようと訓練を始めたところだ。
「そんな奴がお前の伴侶とはな、かばわれて縋りつくとは、恥ずかしい」
「ユーリ行こうか。お茶の時間だ」
男の言葉を無視したレティウスは、ユーリの腰を抱くようにして屋敷へと誘った。
「あれは誰?」
「ユーリには関係のない奴だ。関わらない方が良い」
「俺は闇の精霊、ディーノだ」
「聞かなくて良い」
レティウスはユーリの耳を塞ぎ、急ごうと魔法陣を潜った。
一気に室内である。
一階のリビングにはすでにお茶とお菓子の用意がされている。さっきまで誰かが給仕していたような気配はあるのだか、ユーリは一度もレティウス以外の人を見たことがなかった。
「先に湯に浸かるかい?」
「そうだね。そうするよ」
湯と言えばもう着替えやタオルが用意されている。とても不思議に満ちた屋敷だと思う。
妖精の住む森だからだろうか。不思議には思うものの、嫌な気はしないので、あえて触れる事はなかった。
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