獣人カフェで捕まりました

サクラギ

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 隣の部屋の物音や話し声が聞こえて来る壁の薄い宿屋の一室で、怒涛の1日を過ごした紘伊は、やっと力を抜いて休む事ができた。

 ハーツとは熊の領で別れてから会っていない。オーギュとデュオンとの獣人語での会話で何らかの情報交換をしていると思う。でもオーギュは王都の状況に関する話をしては来ない。聞けば答えてくれるのだろうけど、聞いて通常に戻っていると聞かされて、また落ち込むのも嫌だった。

「さすがに馬ぐらいは乗れるだろ?」

 オーギュと約束の時間に宿を出れば、二頭の馬を連れたオーギュがいた。

「おはよう」

 と言いながら不安を表情に乗せる。

「嘘だろ? ……まさか俺に二人乗りしろって言うんじゃねえだろうな」

「あーだよね、乗れるよ、うん、乗れる乗れる」

 そういえばハーツと普通に何も考えずに二人乗りして貰っていた。そりゃあ追手もあったし、ハーツの側が一番安全だし。……そうか、普通は男同士馬に二人乗りはしないか。なんだか恥ずかしくなった。

「おまえ、あれか? ハーツとは二人乗りしてたのか? ……ありえねえ、あのハーツが?」

 あのハーツが? ってどういう意味なのか。

「すみませんねえ、俺は一般人で現代っ子なもので、馬に乗る機会なんてないんですよ」

「ごちゃごちゃ言い訳うるせえ! 早く乗れ!」

 鎧に足を掛けて乗ろうとする尻を支えて押し上げられる。馬に一人で乗る心許なさに鼓動が逸る。

「俺の馬に着いて来る様に訓練がされている優秀な馬だ。お前は落ちねえようにしがみついていろ、いいな! 勝手な動きをするんじゃねえぞ」

「わ、わかりました」

 馬の高さにビビっている。オーギュは紘伊の態度に舌打ちをして、もう一頭の背に身軽に乗って歩かせると、紘伊の馬が習う様に足を進めた。

「お利口なんだね。よろしくね」

 馬の動きで揺れる馬具に尻を落とされない様に気遣いながら、どうしたら良いのか迷う気持ちのまま、ただ馬上にある。

「門を出たら速度を上げる。疲れたら呼べ、良いな?」

「はい」

 助けを求める様に返事をすれば、オーギュが紘伊の不格好さを笑う。恥ずかしいけど仕方がない。なにせ初心者だ。落ちないようにするだけで精一杯。もうすでにお尻と太ももの間が痛い。揺すられて腹筋や脇腹、背中の使っていない筋肉や筋が使われる様で、後から激しい筋肉痛が来ると予想出来る。王都まで何時間? 何日乗れば良いのだろうか。ふと見れば馬車が通っている。馬車で良いのでは? と思い、オーギュの背を見る。

 すれ違う車型の馬車の中には上品な姿の獣人が乗っている。牧場にある様な簡易な馬車には、作物や荷物が積んであり、その空きスペースに農夫のような獣人が乗っている。若い獣人は騎馬が多い。思えば獣人には女性がいない。ドレスっていうものが無いから、乗馬が出来るのだなとなんとなく思う。
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