獣人カフェで捕まりました

サクラギ

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98 雑談

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 紘伊が思っていたよりも気軽な雰囲気の会議場で、なごやかな雰囲気の場に、なぜハーツは紘伊を呼んでくれなかったのかと思う。しかもエルまでいる。今までにも参加していたのだったら、疎外感が顔をのぞかせる。それにマサキもいる。竜族長デュオンの付き添いなのだろうから、紘伊がどうこう思うべきではないのだが……人が参加できるのなら、なぜ自分は呼ばれないのか——そう思い、自分を過大評価している事に気づいて恥ずかしくなる。

「どうした、ヒロイ」

 ハーツが後ろから覗き込んで来て、顎に触れて顔を上げさせられた。至近距離でハーツと視線を交わすと吸い込まれそうな気分になるけど、そこは集中する外野の視線により削がれる。ハーツの手に触れて拒んだタイミングで、熊族長の笑い声が聞こえる。見れば周りもニヤニヤして見て来ていて、カーッと頬が熱を持つ。

「ヒロイ!」

 それを病気か何かと勘違いしただろうエルが紘伊の頬を撫でる。

「甘やかすにも程があるだろう」

 未だに笑い声を上げているのは熊族長で、呆れた顔の面々が続く。紘伊はいたたまれない気分になっていたが、心配して来たエルを拒む事は出来なくて抱きしめた。

「ヒロイ、だいじょうぶ? 痛くない?」

 エルを可愛がる事でハーツの機嫌が悪くなる。でもエルを拒む事は出来ない。どうする事もできない双方の間で気持ちを揺らしながら、いつハーツが切れるのかと緊張するしかない。

「ハーツェリンドは不安なんだよ、ヒロイ」

 言い出したのは、ハーツと長い付き合いであるデュオンだ。隣にいるマサキが生温かい視線を送って来る。デュオンの意見に周囲の視線も同意の様子だ。

「契約の儀を結んでも外部からの介入はある。現に俺たちは周りの策略に振り回されて、真実に辿り着くまで時間を要してしまった」

 デュオンとマサキが見つめ合って笑っている。肩を抱かれたマサキはとても幸せそうだ。

「エルは将来有望だからな、契約の儀を結ぶのさえ許してもらえねえハーツェリンド様は嫉妬でイラついてるってよ」

 オーギュの軽口にはハーツが睨みを効かせて黙らせていたけど、紘伊はエルに対する嫉妬が本気のものだとは思っていなかった。エルは見目は大きくともまだ子どもだ。伴侶としての嫉妬というよりは、距離の近さによる嫉妬だと思っていた。静かな争いの攻防が紘伊の膝の上と背後で行われている。

「それはさすがにないです」

 紘伊はありえないと否定した。エルはますます引っ付いて来るし、ハーツは冷たい空気を纏っている。

 いやいや~と獣人に通じるかも分からないゼスチャーをした紘伊だが、それは何となく伝わったようで、周囲は否定的な、それでいて諦めろというような視線を向けて来る。でも、だってエルは子どもだろ? 真面目にハーツとエルを天秤にかけると思う? 紘伊は納得が出来なかった。
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